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心理学用語集: マッチング原理、ハロー効果、ステレオタイプ・偏見

1 - 基礎心理学社会心理学 >61- マッチング原理、ハロー効果、ステレオタイプ・偏見

 社会的な環境の中で、自分や他者、対人関係および社会的環境そのものなどの特徴や構造をどのように認知するかということが、社会的認知です。
 ここでは、対人魅力・マッチング原理、ハロー効果やステレオタイプ・偏見といった対人認知について説明します。

用語: 単純接触仮説・マッチング原理スキーマ寛大効果(寛大化傾向)・ハロー効果ステレオタイプ・偏見(錯誤相関) / スティグマ


対人認知:単純接触仮説、マッチング原理

 対人認知は、他者や対人関係に関する認知をいいますが、対象が人であるため、その性格や欲求、感情などに対する推論が重要となります。
 Asch,S.E(アッシュ)は印象形成に関する実験を行い、人物の印象は、特定の重要な性格特性(中心特性)が核となって形成され、その他の性格特性(周辺特性)は核とはならないことを示しました。

 「対人魅力」とは、他者に対して抱く好意や嫌悪感を含む総称です。人が他者に魅力を感じる要因は次のようなものだと言われています。

個人的属性 外見(身体的特徴)、性格、能力。
自分との関係 近接性や類似性。
 単純接触効果(単純接触仮説):何度も見たり聞いたりして、接触が多い事で好感度が増します。
 マッチング原理:類似性に注目し、似ている点・共通点が多いと親近感を抱きます。近くに住んでいると親近感を抱く、「ボッサードの法則」があります。
他者からの働きかけ 親切や援助など。
感情状態 会う時の環境の良否が、そのまま相手の魅力に反映します。
誤帰属 体験の興奮を相手に対するものと勘違いして、相手に対する魅力が上がることをいいます(参照:自己知覚理論)。
初頭効果/新近効果 初めて会った時の印象と、最後の印象がその人の全体の印象を強くします。

また、対人関係を進展させる要因には以下のようなものがあります。

態度の類似性 自分の意見に賛意を示すという報酬を与えてくれますし、認知的一貫性の充足も得られます。
他者からの好意的評価(返報性の原理) お返しとしての好意的評価が関係を進展させますが、最初否定的な評価をしていて、そこから好意的な評価に変わるのが、最も効果的です。
自己開示 社会的浸透理論によると、親密な対人関係の進展には自己開示が重要だといわれます。自己開示は言語を介して様々な情報を伝える行為であり、自己呈示とは意図的・選択的にコントロールして伝える行為の事です。



スキーマ:ハロー効果・ステレオタイプ・偏見・スティグマ

 スキーマは、下記に列挙するような、特定の事象に対する定型的な認知の仕方であり、固定的なものの見方を生じやすい欠点がありますが、一方では、膨大な情報をすばやく処理するのに役立つ認知の方法です。

  1. 人スキーマ:他者や自分に対する定型的な見方のことを指します。「寛大効果」と「ハロー効果(光背効果)」に代表されます。
  2. 役割スキーマ:職業や民族集団に対する見方です。「ステレオタイプ」と「偏見」に代表されます。
  3. 自己スキーマ:「自分とはどういう人間であるか」という自己の諸属性に関する見方です。
  4. 事象スキーマ:ある状況における出来事や行動の連鎖(一連の定型的行動)についての見方です。
寛大効果と光背(ハロー)効果:

 「寛大効果(寛大化傾向)」とは、他者の望ましい側面は強調され、望ましくない側面は無視されることです。これは、文化的規範の影響を受けます。
 「ハロー効果(光背効果)」とは、他者の持つ顕著に望ましい特徴や嫌いな特徴を、その人の全ての特徴に対する評価へ広げてしまう現象です。


ステレオタイプと偏見・錯誤相関:

 「ステレオタイプ」とは、集団やその構成メンバに対する過度に一般化された肯定的、及び、否定的認知のことを指します。男性が仕事、女性が家庭などといった男性と女性に対するステレオタイプは、「ジェンダー・ステレオタイプ」と呼ばれます。
 「偏見」とは、ステレオタイプにおける、”否定的な認知”の事を指します。
 ステレオタイプを形成される一因に「錯誤相関」があります。錯誤相関とは、相関がないデータに相関があると思い込んでしまう現象で、めったに見られない(一般にネガティブな)行動と、ある少数グループを間違って関連付ける、関連を過大評価するといった形で見られます。

 ステレオタイプ・偏見が変わってゆく「変容過程」には下記の3つのモデルあるとされます。3つのどのモデルが妥当であるかは、個人に提示される刺激集団の成員数と、その中に生じる不一致のパターンの2つの要因によって規定されることが示されています(参照文献 )。

  1. book keeping model (簿記モデル):
    反ステレオタイプ情報によって少しずつステレオタイプが変容していく。
  2. conversionmodel (転向モデル/回心モデル):
    特定の反ステレオタイプ情報が劇的にステレオタイプを解消させる。
  3. subtypingmodel (サブタイプ形成モデル):
    既存のステレオタイプに一致しない情報を例外(サブタイプ)として、他のものと区別する過程を重視する。

スティグマ:

 スティグマとは、烙印に由来し、特定の属性を持っている人に対してネガティブなレッテルを貼り付けることをさします。スティグマは「ラベリング、ストレオタイプ・偏見、差別、分離等」を包括する概念とされています(認知面・感情面・行動面を含んでいる)。
スティグマには、下記の3つがあるとされます。

  1. 社会的スティグマ : 他者に対して持っているスティグマ(例:男性が持っている女性へのスティグマ)。
  2. セルフスティグマ : 自分自身、自分達に対して持っているスティグマ。自尊感情を下げ、援助希求行動を減らす影響もある(例:障害者が障害者に対して持ってしまうスティグマ)。
  3. 構造的スティグマ : 規範やルールや法律や価値観など、社会に埋め込まれている様々な構造的な要素にあるスティグマ(例:障害者の雇用における制度的な障壁)。

 スティグマは、言動によって感染し潜伏し(潜伏的なスティグマ)、ラベリングがされていきます。そして、その属性を持つ人に対する認知がステレオタイプや偏見という形に変化していきます。差別とは、潜伏していたスティグマが言動として現れたものです。
 差別は法律的な介入でも可能ですが、潜伏的なスティグマには、前述の「ステレオタイプの変容過程」が必要となり、教育が重要となります。



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