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心理学用語集: 集団療法

2 - 心理療法集団療法・短期療法 > 71- 集団療法

 ここでは集団療法(グループセラピー)についてまとめます。
用語:

  1. 集団療法の効果(Yalom,IDの11因子) / ファシリテーター
  2. 代表的な集団療法エンカウンターグループ構成的グループエンカウンター心理劇(サイコドラマ) / Tグループセルフ・ヘルプ・グループ(自助グループ)

集団療法の概要

 集団療法(Group Therapy)とは、複数のクライエントが集まって行う心理療法のことです。
集団療法は、「参加者同士が相互作用よってお互いに影響を及ぼしあうこと」が特徴であり、過去よりもその場におこっている(今・ここ)を重視します。
 集団療法には、集団体験を通して下記にような効果が期待されます。

  1. 他者とのつながりや深い交流を体験する。
  2. 他者への共感を体験する。
  3. 自己理解や自己受容をもたらす。
  4. 対人交流パターンに変化が生じる。

 Yalom,ID(ヤーロム)は集団療法(グループアプローチ)で、効果をもたらす要因として11つを挙げています。


ファシリテーター:

 集団療法において、クライエント間の相互作用を活性化する役割を担う人を「ファシリテーター(促進者)」と呼びます。
 ファシリテーターの役割としては「1. 参加者の様子を見守る」、「2. フィードバック」、「3. メンバー間のかかわりの促進」、「4. 信頼感・安心感のある雰囲気形成」、「5. 強制・無理強いをしない」、「6. 正直・率直・素直な態度」といったものがあります(野島,2002)。



代表的な集団療法

代表的な集団療法を下表にまとめます。
これ以外に、「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」や家族療法も、広義には集団療法に含まれます。

 エンカウンターグループ
 Rogers,C.(ロジャース)がカウンセラーの養成を行うために始めた集団療法のことです。人間的成長と対人関係コミュニケーションの改善に焦点を当て、自由な交流を行います。ベーシック・エンカウンターグループ(非構成的エンカウンター・グループ)とも呼ばれます。
 (詳細:エンカウンターグループ
 構成的グループエンカウンター
 目的や目標を定め、時間的な枠組み、エクササイズを設けながら行う集団的な取組みです。参加者同士が率直に話し合い、感情を交流させて(エンカウンター)、行動変容や成長を図ります。
 (詳細:構成的グループエンカウンター
 心理劇(サイコドラマ)
 Moreno,J.L.(モレノ)が創始した、即興劇の方法を用いた集団療法です。台本のない劇の中で特定の役割を即興的・自発的に演じることで、他者への共感性や自分自身についての気づきを深めます。
 (詳細:心理劇/サイコドラマ
 Tグループ
 Lewin,K(レビン)によって考案された集団療法です。非日常的な場所で合宿形式で行われ、自己対峙を要求され、激しい情緒的体験を伴います。人間関係や集団内の役割の獲得が得られるとされます。
 セルフ・ヘルプ・グループ(自助グループ)
 セルフ・ヘルプ・グループとは、同じ問題や障害を抱えるメンバー同士が匿名のままお互いの悩みを聞いたり、助言し合うグループをさします。自己治癒力を高めていくことを目的とし、基本的には当事者のみが参加し、専門家が直接かかわることはありません。
 アルコール依存症のセルフ・ヘルプ・グループとしては、「断酒会」や「AA(Alcoholics Anonymous)」があります。


構成的グループエンカウンター:

 構成的グループエンカウンター(SGE:Structured Group Encounter)は、参加者同士が率直に話し合い、感情を交流させて(エンカウンター)、相互理解や信頼関係を醸成しながら他者理解・自己理解を進め、行動変容や成長を図る集団的な取り組みを指します。
 國分康孝らが命名し、下記のような特徴をもちます。

  1. 参加者の状態に応じた目標・目的を立てて行う。
    (例:学校では、学級では子どもの状態に応じた目標・目的を立てる)
  2. グループを運営するリーダーを決める。
  3. 一定の時間的な枠組みの中で行う。
    (例:学校では1コマで実施する)
  4. エクササイズを設ける。

心理劇(サイコドラマ):

 Moreno,J.L.(モレノ)が創始した、即興劇の方法を用いた集団療法です。
 モレノは、人生の価値は創造性にあると考え、心理劇は自発性を刺激し、創造性を引き出すものであり、それによって個人が癒され、社会がより高いレベルに向上していくと考えました。
心理劇では、「台本のない劇の中で特定の役割を即興的・自発的に演じること」によって、「カタルシス」を得たり、「他者への共感性」や「自分自身についての気づき(内面の洞察)」を深めます。

心理劇は、下記の5つの要素から構成されます。
・監督:劇の責任者。画面設定、配役、進行を行う。
・演者:劇の中で実際に演じる人。
・補助自我:劇に参加し演者の演技を助ける人。
・観客:劇を見る人々。
・舞台:演じる場所。


心理劇では、下記のような技法が用いられます。

  1. 役割交換:
    劇中で役割を交換すること。それによって他者の視点から自分を見つめることが可能となる。
  2. 二重自我:
     演者が演じきれていない部分を補助自我が補うことで、両者があたかも一体であるかのように演じること。
  3. 自我分割:
     演者の葛藤を表現するために、葛藤の一方を補助自我が演じる事により、お互いの気持ちを話し合うこと


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