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心理学用語集: 生得説と経験説・刻印づけ

1 - 基礎心理学心理学の歴史 > 82- 生得説と経験説・刻印づけ

 心理学の歴史の中で、多く議論がなされてきた「生得説と経験説」について説明します。
また、これまで説明されていない「刻印づけ」の用語を説明します。



生得説(nativism)と経験説(empiricism):氏か育ちかの議論

 生得説とは、「人の能力や特徴が産まれながらのものであると考え、遺伝を始めとする生得的要因が個体の発達に強く影響を与える」という説です。子供は、大人のミニチュア(未成熟なもの)と考えます。
古くは、Descartes, Rene (デカルト)によって提唱されました。
 経験説とは、「人は白紙の状態で生まれ、経験によって発達し、環境(人間的環境や社会的環境)が個体の発達に影響を与える」という説です。個体の発達を「学習の所産」と考えます。
 Locke, Jhon (ロック)によって提唱されました。

 生得説・経験説に関連する用語として「タブラ・ラサ」、「成熟優位説」、「レディネス」を説明します。

タブラ・ラサ:

 ロックの経験説においては、人は白紙の状態で生まれとされていますが、その人の白紙の状態は「タブラ・ラサ」と呼ばれます。

成熟優位説・レディネス:

 成熟優位説とは、Gesell,A.Lゲゼル)が提唱した説であり、「人は適切な成熟を待たなければ、教育や訓練の効果はない」という考えです。ゲゼルは、「一卵性双生児」の実験を行い、双生児に対して、1人には階段のぼりの訓練をさせて経験の比較実験を行いました。その結果、訓練をさせた子は一時的に良い成績を残しましたが、一定期間を過ぎると双子の差が無くなくなった事から、学習には必要条件があり、ある程度の内的な成熟段階に達していることが必要であることを提唱しました。
 ゲゼルの成熟優位説では、その成熟段階に達していることを「レディネス(学習準備性)」と呼びます。


双生児研究から行動遺伝学へ

 生得説と経験説に関する研究として、「野生児」「家系(親子・兄弟間)」「双生児、養子」などの研究が行われました。その結果、個体の発達には「生得的要因と経験・環境要因の両方が影響している」という下記の説が考えられています。

輻輳説
(フクソウ)
Stern,W (シェテルン)が提唱し、生得的要因と環境要因が、別々に寄り集まって発達に影響を与えるという説。(生得的要因と環境要因の加算)
環境閾値説 Jensen,A.R(ジェンセン)が提唱し、人間が持つ特性によって、環境から影響を受ける程度が異なるという説。環境の閾値(作用する量)が、低い特性ほど、遺伝的可能性が発達に現れる。
相互作用説 生得的要因と環境要因が、ダイナミックに相互に作用し、発達に影響を与えるという説。

 その後、研究は遺伝要因が"行動"に与える影響を調べる「行動遺伝学」へと発展してゆきます。遺伝要因や環境要因の交互作用や、メタ分析などの統計的な検討がなされて、下記のような知見が得られています。
 行動遺伝学には下記の3原則があります。(参考文献:安藤,2017

  1. 遺伝の普遍性:人の行動特性はすべて遺伝的である。
  2. 共有環境の希少性(家庭環境):同じ家族で育てられた環境は、遺伝子の影響より小さい。
  3. 非共有環境の優越性(独自環境):複雑なヒトの行動特性のばらつきのかなりの部分が遺伝子や家族では説明できない。

 具体的には、「一卵性双生児の方が、二卵性よりも心理的にも身体的にも遺伝的影響が大きい事」、「共有環境(家庭環境)の影響はわずかである事」、「環境要因の大部分が非共有環境(独自の環境)である事」、「20代は共有環境の影響が大きいが、30代以降は遺伝の影響が大きい事、次いで非共有環境が大きい事」などがわかっています。



刻印づけ: ローレンツ

 「刻印づけ(imprinting)」とは、Lorenz, K.Z.(ローレンツ)が示した初期経験の特殊な学習によって固定的な行動をとる現象を指します。刷り込みとも呼ばれます。
 刻印づけの代表例としては、「アヒル、かもなどの雛が孵化して最初に見た動く対象に対して、愛着行動ないし追尾行動を示す事」が挙げられます。

刻印づけが可能なのは、一定の期間に限定されており、その期間は「臨界期」と呼ばれます。また、一旦刻印づけが生じると取り消しがきかなくなるとされました。
 その後の多くの研究によって、臨界期は特定の刺激作用の影響を受けやすい期間という事に過ぎず、「敏感期」と呼んだ方が適切であること、刻印づけの後でも多少の修正がきく事などが指摘されています。



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