ここでは、Gendlin,E.T.(ジェンドリン)が創始した「フォーカシング」と、Perls,F.(パールズ)が創始した「ゲシュタルト療法」についてまとめます。
用語:
「フォーカシング」とは、ロジャースの共同研究者であるジェンドリン(Gendlin,E.T.)が創始した心理療法です。
クライエントが何を話すかよりも、どのように話すか、いかなる方法でその発言が生じているのかに注目した心理療法で、体験内容でなく、体験過程を重視しています。
人間の「体験過程とその象徴化の過程」、またそれらを体系化した技法(体験過程に注意を向け、象徴化を促進する技法)です。
「体験過程理論」とは、ジェンドリンが提唱した「人の心の中に感じられ、刻一刻と変化し流動していく体験過程 (Experiencing) に関する理論」です。
体験過程は、意識と無意識の境界に注意を向けることで直接、身体的に感じられるものであるとされます。そして、体験過程の流れは、言葉などによって表現されること(=「象徴化される」)によって、人が成長する方向へ向かって流れていくとされます。しかし、人の意識が体験過程に向けられず、象徴化の機会が奪われると、体験過程は滞り、様々な心理的困難が生じてくると考えます。
フォーカシングにおいて「フェルトセンス」、「フェルトシフト」と呼ばれる感覚があります。
「フェルトセンス」とは、身体の中心部分にぼんやりと注意を向け、何かの気がかりにまつわる身体感覚の事をさします。
フェルトセンスがどこに向かっているか気づいたときに感情体験が変化するとされています。
「フェルトシフト」とは、感情体験の変化をつかまえた瞬間の感覚の事をさします。
ゲシュタルト療法とは「パールズ(Perls,F.S.)」が提唱した心理療法であり、統合を志向する人格への変容を目的としているといえます。
ゲシュタルトとは「形・全体・統合」を意味しており、ゲシュタルト療法は、意識に上っていない自分の部分に気づき、それを自分に統合していくことが柔軟にできるようになることを目指します。精神分析的ではなく、実存的、人間主義的なアプローチをとります。
意識の前面にあるものを「図」(関心事)、背景となっているものを「地」(背景)と呼び、精神的に健康であれば、図と地の反転がスムーズに行われていて、こころの柔軟性が保たれていと考えます。しかし、精神的に不健康な状態では、何らかの理由でそれがうまく行かなくなっていると考えます。
例えば、葛藤や心残りがあり、それに囚われている状態などでは、図と地の反転がスムーズに行われておらず、自分の関心事(図)が何なのかがわからなくなると考えます。
「気づき」とは「今・ここ(Here and Now)」で、「地」にあるものが「図」にのぼってくる意識の過程といえます。
ゲシュタルト療法では、不快感や怒りなどを精神的バランスを保つためのサインと考え、ワークを通してそれらを取り上げることで、「気づき」の体験を経て統合していくことを目指します。「気づきに始まり、気づきに終わる」とされます。
ゲシュタルト療法では、過去になにをしたか、それはなぜなのかを問うことはしません。
「今・ここ」で、いかに、なにを話しているかを問題にし、それを気づき体験します。
ゲシュタルト療法は、グループで行われる事が中心です。グループは、ファシリテーターと10名程度の参加者で構成されますが、他の集団による心理療法とは異なり、主にファシリテーターと特定の参加者が「1:1」でワークを行うことです。その他の参加者は、車座になってそのワークを見守り、必要に応じてワークに参加します。
技法としては、「今・ここ」で「誰の目にも明らかなもの」にアプローチします。