「人間性心理学」に分類される理論や療法には、クライエント中心療法、フォーカシング、ゲシュタルト療法、交流分析などが含まれるとされています。
ここでは、Rogers,C.(ロジャース)によって創始された心理療法である、「クライエント中心療法」(来談者中心療法)をまとめます。
用語:自己理論(自己概念・経験) / 変容の必要十分条件 / カウンセラーの態度(3条件) / 主な技法 / エンカウンターグループ(パーソン・センタード・アプローチ)
クライエント中心療法(来談者中心療法)は、Rogers,C.(ロジャース)によって創始された心理療法です。
ロジャースは、実際的な治療場面の経験から実験心理学や精神分析に疑問を持ち、当時優勢であった指示的なカウンセリングに対し、クライエントに指示を与えない「非指示的療法」を提唱しました。
その後、人間の自由意志や主体性を重視する彼の考えは、後に非指示が強調されすぎるのを嫌い、「クライエント中心療法」へと変化していきました。
後年のロジャースは、クライエントという呼び名が通用しない領域で彼独自の人間観を当てはめることになったため、「パーソン・センタード・アプローチ(PCA)」と呼びました。
日本においては、佐治守夫がクライエント中心療法(来談者中心療法)の普及に大きな貢献をしています。
「自己理論」とは、ロジャースが提唱した理論であり、人の持つ心理的な問題を「自己概念」、「経験」、「自己一致」から説明したものです。
人の自己実現傾向とは、自己概念に象徴される部分を実現化する形で現れてきますが、「不一致」が生じていると心理的な問題や不適応をもたらすと考えます。
クライエント中心療法では、歪められたり否認されている経験に気づき、不一致から一致に向かうことを目指します。
ロジャースは、クライエントのパーソナリティが変容するためには(=「治療的パーソナリティ変化」)、6つの必要十分条件があるとしました。
「セラピストが守るべき態度」は、上記のNo3,4,5に記載されている、「自己一致(純粋性)」、「無条件の肯定的配慮」、「共感的理解」となります。
自己一致とは、「純粋性」とも呼ばれ、「自分自身のありのままの感情を体験し、受容していること」といえます。
セラピストは、面談においては、ありのままの自己であり、現実に経験していることが自分自身の気づきとして正確に表現されていなければならないとされます。
無条件の肯定的配慮とは、セラピストが条件をつけることなくクライエントを受け入れることです。
カウンセラーの価値観や好みを押し付けることなく、自分とは別の一人の人間としてのクライエントに対して肯定的な配慮や積極的な関心を向けることとされています。
完全な無条件の肯定的配慮とは理論的な概念であり、臨床的にはときどきは条件つきの肯定的配慮となることもあり程度の問題として存在しているといわれています。
共感的理解とは、クライエントの内的な世界を、あたかもその人自身であるかのように感じ取っていることです。そして、その感じ取ったことをクライエントに伝達するように努めます。
「あたかも」の性質を忘れずにクライエントを理解する過程であり、方法論でもあるとされています。
クライエント中心療法の技法としては、下記のようなものが挙げられますが形式的にならず、あくまでセラピストの3条件(自己一致・無条件の肯定的配慮・共感的理解)に基づくものとなります。
エンカウンターグループとは、集団療法の一つであり、自己開示による深い交流や他者とのつながりの経験を通して、自己理解や生き方の再検討を目標とします。
ロジャースらによって、カウンセラーの養成をおこなうために始められ、人間的成長と対人関係コミュニケーションの改善に焦点を当てています。
通常は、1、2名の「ファシリテーター」と10〜15名のメンバーで構成されます。ファシリテーターに特別な条件はなく、促進者でありながら、メンバーの1人でもあるとされます。
自由な交流を行うため「ベーシック・エンカウンターグループ」(非構成的エンカウンター・グループ)とも呼ばれます。
これとは異なる集団的アプローチとして、目標・目的をもって行う「構成的グループエンカウンター」があります。
後年のロジャースは、個人療法よりも、エンカウンターグループの活動に熱心に取り組むようになりました。そして、教育、産業、紛争解決、国際平和などに関心を広げました。
クライエントという呼び名が通用しない領域で彼独自の人間観を当てはめることになったため、「パーソン・センタード・アプローチ(PCA)」(人間中心のアプローチ)と呼びました。