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心理学用語集: クライエント中心療法

2 - 心理療法人間性心理学の療法 > 31- クライエント中心療法

 人間性心理学とは、ひとりひとりを異なったとみなし、人には全能力を発展させようとする内在する「自己実現化傾向」をもつと考えた心理学です。精神分析や行動主義との間に1960年代に生まれた第3の心理学とされます。
 人間性心理学に分類される理論や療法には、クライエント中心療法、フォーカシング、ゲシュタルト療法、交流分析、ロゴセラピーなどが含まれるとされています。

 ここでは、Rogers,C.(ロジャース)によって創始された心理療法である、「クライエント中心療法」(来談者中心療法)をまとめます。

用語:自己理論(自己概念・経験)変容の必要十分条件カウンセラーの態度(3条件)主な技法エンカウンターグループ(パーソン・センタード・アプローチ)



自己理論

 「自己理論」とは、ロジャースが提唱した理論であり、人の持つ心理的な問題を「自己概念」、「経験」、「自己一致」から説明したものです。

自己概念:

 「自己概念」とは、自分が自分自身について考えているイメージや感じている感覚のことであり、自己の全体像を意味します。「理想的自己」ともいうことができ、自身で価値づけしたり、他者の評価によって価値づけられることによって構成されます。

経験:

 「経験」とは、意識により捉えられているものではなく、もっと感覚的で人が直接経験しているものを意味します。「現実的自己」ともいうことができます。

自己一致:

 「自己一致」とは、自己概念(理想的自己)と経験(現実的自己)が一致している領域(重なっている範囲)が多い状態のことを意味します。
逆に一致している領域が少ない状態を「不一致」と呼びます。不一致は、「理想化しすぎて歪曲された自己概念の領域」や、「自己概念と矛盾・対立するため意識化することを否認されている経験の領域」によって生じます。

 人の自己実現傾向とは、自己概念に象徴される部分を実現化する形で現れてきますが、「不一致」が生じていると心理的な問題や不適応をもたらすと考えます。
 クライエント中心療法では、歪められたり否認されている経験に気づき、不一致から一致に向かうことを目指します。


     
カウンセラーの態度・技法

 ロジャースは、クライエントのパーソナリティが変容するためには(=「治療的パーソナリティ変化」)、6つの必要十分条件があるとしました。

  1. クライエントとセラピストがが心理的接触を持っている
  2. クライエントは不一致の状態にある(傷つきやすさ、不安の状態)
  3. セラピストのクライエントとの関係における一致(自己一致
  4. セラピストがクライエントに対して無条件の肯定的配慮を経験している
  5. セラピストがクライエントの内部的照合枠を共感的に理解する経験をしていて、この経験をクライエントに伝達するよう努めている
  6. クライエントがセラピストの無条件の肯定的配慮や共感的理解を最小限度は知覚している

 「セラピストが守るべき態度」は、上記のNo3,4,5に記載されている、「自己一致(純粋性)」、「無条件の肯定的配慮」、「共感的理解」となります。


自己一致(純粋性):

 自己一致とは、「純粋性」とも呼ばれ、「自分自身のありのままの感情を体験し、受容していること」といえます。
セラピストは、面談においては、ありのままの自己であり、現実に経験していることが自分自身の気づきとして正確に表現されていなければならないとされます。

  1. 全生活において、自己一致しており統合性を示すような模範である必要はありません。面談において自己一致していれば十分とされます。
  2. クライエントに自己の感情をすべて話すということではなく、自分自身に関して欺かないということとされます。話さないことで、無条件の肯定的配慮や共感的理解の条件が妨げられる場合は、ある程度打ち明けるが必要があるとされています。
無条件の肯定的配慮:

 無条件の肯定的配慮とは、セラピストが条件をつけることなくクライエントを受け入れることです。
カウンセラーの価値観や好みを押し付けることなく、自分とは別の一人の人間としてのクライエントに対して肯定的な配慮や積極的な関心を向けることとされています。

 完全な無条件の肯定的配慮とは理論的な概念であり、臨床的にはときどきは条件つきの肯定的配慮となることもあり程度の問題として存在しているといわれています。


共感的理解:

 共感的理解とは、クライエントの内的な世界を、あたかもその人自身であるかのように感じ取っていることです。そして、その感じ取ったことをクライエントに伝達するように努めます。
「あたかも」の性質を忘れずにクライエントを理解する過程であり、方法論でもあるとされています。


クライエント中心療法の技法:

 クライエント中心療法の技法としては、下記のようなものが挙げられますが形式的にならず、あくまでセラピストの3条件(自己一致・無条件の肯定的配慮・共感的理解)に基づくものとなります。

  1. 感情の反映:クライエントの表明した感情をセラピストが映し出して伝える
  2. 繰り返し:クライエントのそのまま言葉で繰り返す
  3. 感情の明確化:クライエントの漠然とした感情表現を明確化する。
  4. 承認−再保証:情緒的な支援、承認、強化を与える
  5. 自己開示:セラピストの感情や考えを適切に伝える
       
エンカウンターグループ

 エンカウンターグループとは、集団療法の一つであり、自己開示による深い交流や他者とのつながりの経験を通して、自己理解や生き方の再検討を目標とします。
 ロジャースらによって、カウンセラーの養成をおこなうために始められ、人間的成長と対人関係コミュニケーションの改善に焦点を当てています。

エンカウンターグループには、自由な交流を行う「ベーシック・エンカウンターグループ」(非構成的エンカウンター・グループ)や、目標・目的をもって行う「構成的グループエンカウンター」などがあります。
 通常は、1、2名の「ファシリテーター」と10〜15名のメンバーで構成されます。ファシリテーターに特別な条件はなく、促進者でありながら、メンバーの1人でもあるとされます。


パーソン・センタード・アプローチ:

 後年のロジャースは、個人療法よりも、エンカウンターグループの活動に熱心に取り組むようになりました。そして、教育、産業、紛争解決、国際平和などに関心を広げました。  
 クライエントという呼び名が通用しない領域で彼独自の人間観を当てはめることになったため、「パーソン・センタード・アプローチPCA)」(人間中心のアプローチ)と呼びました。



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