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心理学用語集: 行動変容/統合的アプローチ

2 - 心理療法心理療法の選択 > B2- 行動変容/統合的アプローチ

 ここでは、心理療法を選択する際のクライエントの「行動変容ステージ」と「変化レベル」、及び「統合的アプローチ」についてまとめます。

用語: 行動変容ステージ(変化のステージ) / 変化のレベル心理療法の選択統合的アプローチ



行動変容ステージ(クライエントの変化のステージ)

 クライエントの変化には「ステージ」と「レベル」があるとされます。
ここでは、クライアントの「行動変容のステージ」について説明します。

行動変容ステージ(クライエントの変化のステージ):

 行動変容ステージは、ProchaskaとClementeによって考案された「多理論統合モデル(Transtheortical Model:TTM)」の中核概念の一つです。
 保健指導や、依存症などの援助においては、「行動変容ステージ(行動変容の段階)」に応じて介入を行います。

 行動変容ステージモデルとは、人が行動を変える場合は「1.無関心期、2.関心期、3.準備期、4.実行期、5.維持期」の5つのステージを通ると考えます(引用)。
 
 すべてのステージで、その時期に応じた心理教育や心理的な働きかけを行うことで支援します。

 1. 無関心期(前熟考期)
  1. 「6か月以内に行動を変えるつもりがない」
     行動を変えようという意志をもっていない。自分の問題に気づいていない時期。
  2. 支援目標: 身体活動のメリットを知る、このままだとまずいと思う、周囲への影響を考える
 2. 関心期(熟考期)
  1. 「6か月以内に行動を変えるつもり」
     問題があることに気づいており、問題を克服しようと考えているが、行動に移す決意はない時期。
  2. 支援目標: 身体活動が不足した自己をネガティブ、充足した自己をポジティブにイメージする
 3. 準備期
  1. 「1か月以内に行動を変えるつもり」
     変化したいという意志があり、変化の先駆けとなる小さな行動にすぐにでも取り組み準備ができている時期。
  2. 支援目標: 身体活動を統制できる自信を持つ、周囲へ行動変容を宣言、行動変容の計画を立て始める
 4. 実行期:
  1. 「行動を変えて6か月未満である」 
     実際に明確に行動の変化が生じている時期。
  2. 支援目標: 不健康から健康への行動置換、周囲の支援の活用、行動継続へのご褒美、継続しやすい環境づくり
 5. 維持期
  1. 「行動を変えて6か月以上である」
     行動変化がはじまってから6カ月以降の行動の変化を維持する時期。
  2. 支援目標: 実行期の活動を維持、継続する

 維持期の後に、終結期(問題行動に戻る誘惑を経験しなくなり、逆戻りを予防する努力をしなくてもよくなる時期)を定義している場合もあります。




クライエントの変化のレベル:

 クライエントの変化のレベルには下記の5段階があります。
 クライエントの変化の低いレベル(1〜)は、「外的(現れている事象など)」であり、高いレベルは「内的(無意識的なものなど)」です。
 治療は低いレベルから進めることが推奨されています。

クライエントの変化のレベル(5段階)
Level 1 - 症状・状況的な問題
Level 2 - 不適切な認知
Level 3 - 現在の対人間葛藤
Level 4 - 家族、システム内の葛藤
Level 5 - 個人内葛藤




心理療法の選択と統合的アプローチ

 クライエントの「変化のステージ」と「変化のレベル」に応じて、支援方法を選択していくことが重要とされます。
 変化のステージとレベルに応じて選択される心理療法の一例として下図に記載します。


統合的アプローチ:

 心理療法には多くの学派がありますが、多くの研究において学派間の治療効果の違いは大きくないことを示している一方で、クライエントの動機づけが治療効果に多くの影響を及ぼすことが示されています。
 そのため、クライエントニーズを尊重し、それに適合した心理療法を工夫して総合的により効果的な提供するという立場をとるのが「統合的アプローチ」とされます。

 統合的アプローチの中にも、下記のような立場があります。

  1. 異なる学派の基礎にある観察や理論を検討し、それぞれの学派の要素を持ちながらも新しい一環した理論の構築を目指す理論的統合
  2. 学派を超えて、個々のクライエントの特徴に適合する治療技法を選択し、活用することを目指す技法的折衷主義
  3. 学派を超えて共通する治療要因を明らかにすることを目指す共通要因アプローチ
  4. 1つの学派に依拠しながら徐々に学派の知見を取り入れていくことを目指す同化的統合



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