ここでは、「認知症」に特化した検査についてまとめます。
認知症の「スクリーニング検査」と「重症度を判定する検査」に分類して記載します。そのほか、WMS-Rなどの神経心理学的検査も認知症のアセスメントに使用します。
検査一覧:
認知症のスクリーニング検査としては、「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」、「MMSE」、「国立精研式認知症スクリーニングテスト」、「時計描画テスト(CDT)」などがあります。
「長谷川式認知症スケール」は、認知症のスクリーニングを目的とした検査です。重症度を判定することはできません。
長谷川式認知症スケールは、1974年に作成された「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)」の改訂版(1991年)です。
「日時と場所の見当識」、「計算」、「3つの言葉の記銘と遅延再生」などといった「全9項目」の質問から構成され、検査者は口頭でそれぞれの質問をします。
「MMSE」は、認知症のスクリーニングを目的とした検査です。認知障害の簡易的な重症度も評価可能です。
10分程度で簡便に「18歳〜85歳」の認知機能を測定します。
( 補足: ▼ MMSEの11個の検査項目 )
「国立精研式認知症スクリーニングテスト」は、認知症のスクリーニングを目的とした検査です。重症度を判定することはできません。
「見当識」や「一般知識の問題」など全16問から構成されます。
「20点」満点で「10点以下」で問題ありとみなされます。
「時計描画テスト」は認知症のスクリーニングを目的とし、“時計の絵を描画する”検査です。
年齢や教育歴の影響を受けにくい、検査に対する抵抗が比較的少ないとされます。
認知症の重症度を判定する検査としては、「MSQ」、「N式精神機能検査」、「N式老年用精神状態尺度(NMスケール)」、「ADAS-cog」などがあります。
「MSQ」は、認知症の重症度を判定する検査であり、「全10問」から構成されます。
前半5問が「急性」の認知症の程度を見る見当識に関する問題で、後半5問が「慢性」の認知症の程度をみる一般的知識問題です。
失敗した問題数に応じて、「異常なし(2問以下)」、「中程度の認知症(3問以上8問以下)」、「重度の認知症(9問以上)」と判定されます。
「N式精神機能検査」は、認知症の重症度を判定する検査で、「全12項目」から構成されます。
見当識や計算だけでなく、空間認知や運動構成など幅広い知的機能をみることができます。
100点満点であり、点数に応じて重症度が5段階で判定されます。
「正常(95点以上)」「境界(94〜80点)」「軽度(79〜60点)」「中等度(59〜30点)」「重度(29点以下)」
「N式老年用精神状態尺度(NMスケール)」は、認知症の重症度を判定する検査であり、意思疎通を必要とせず、被検者の日常生活における行動観察を通して評価を行います。
「家事・身辺整理」「関心・意欲・交流」「会話」「記銘・記憶」「見当識」の5項目に対して行動を7段階で評価し、得点化します。
50点満点であり、点数に応じて重症度が5段階で判定されます。3項目を用いた方法(30点満点)での評価も可能です。
「正常(48点以上)」「境界(47〜43点)」「軽度(42〜31点)」「中等度(30〜17点)」「重度(16点以下)」
「ADAS」はアルツハイマー病評価尺度であり、認知機能下位尺度(ADAS-cog)と精神状態等を評価する非認知機能下位尺度(ADAS-non cog)から構成されます(参照)。
ADAS-cogが独立して使用される事が多く、認知機能下位尺度は原版では、記憶、言語、行為の3領域の評価に重点がおかれた11種類の課題ですが、日本語版では異なっています。
ADAS-cogは認知機能障害の重症度の評定もされますが、原則としてアルツハイマー型認知症を対象としたコリン作動薬による認知機能の変化を評価することを目的としているため、「治療効果を評価するため」に用いることが適切な使用方法とされています。
CDR(Clinical Dementia Rating)は認知症の重症度を評定するための検査です。
専門家が問診または、家族や介護者の情報をもとに、「記憶(M)」、「見当識(O)」、「判断力と問題解決(JPS)」、「地域社会活動(CA)」、「家族生活と趣味・関心(HH)」、「介護状況(PC)」の6項目について、5段階で重症度を評価します。
それらを総合して、「健康(CDR:0)、認知症の疑い(CDR:0.5)、軽度認知症(CDR:1)、中等度認知症(CDR:2)、高度認知症(CDR:3)」のいずれかに評定されます。健常と認知症の境界は0.5点(認知症の疑い)です。