ここでは、臨床心理士の業務についてまとめます。
臨床心理学の歴史は、「Witmer,L(ウィットマー)」が、ライプチヒ大学のヴントの下で学んだ後、1986年にペンシルバニア大学に心理クリニックを開いたことが始まりとされています。
その後、時代を経て臨床心理学の専門性・アイデンティティが確立されていきました。
そして日本では現在、臨床心理学の専門的な実践業務を行う高度専門職業人として「臨床心理士」という名称が与えられています。
用語: 臨床心理士の業務 / 科学者-実践者モデル / エンパワーメント
臨床心理士は人に関わり人に影響を与える心の専門家ですが、その独自性とは「クライエントのかけがえのない存在固有性、主観的・個別的価値観を尊重しつつ、その人の自己実現を援助する専門家である」ということとされます。
臨床心理士の業務は、日本臨床心理士資格認定協会の定める「臨床心理士資格審査規定」の第四章に記載されており、下記の4つとなります。
臨床心理査定の業務は、「ユーザへの心理査定を十分に行い、その個別性を深く描き出して、臨床心理面接等の関連に活かしていく臨床実践」とされます。
心理査定には「できるだけ多様な心理査定法を習得する」、「職業倫理に基づき行うこと」など以外にも、下記のような基礎的な臨床実践技能が求められます。
臨床心理面接の業務は、「言語的かかわりを中心に、遊戯、描画、動作、催眠、集団等、さまざまな“こころ”の表出現象を通じての変化(改善)効果をもたらす専門行為」とされます。
臨床心理士は「人との人間関係」が専門性の基本となります。それゆえに、あらゆる人間社会の問題にコミットする「汎用性」が求められます。
臨床心理地域援助の業務は、「地域住民や学校、職場の人々の心の健康に関わる活動や被災者支援活動」といえます。予防医学・公衆衛生的な活動でもあり、面接室の外での活動や積極的な介入も含めておこなう臨床実践です。
「臨床実践技能を用いるための条件整備」や、「他の専門家をはじめとするチーム連携能力」が求められます。また、技法として「集団への援助技法」、「被災者支援」、「自殺や暴力事件に対する危機介入」などの専門性も問われます。
臨床心理研究調査の業務は、「事例研究とその成果の活用に資する行為」とされます。リサーチを通してユーザーに関する認識を深め、経験や知見を相互に検討しあうことで、個人の臨床実践技能と認識に公共性と社会的現実性をあたえていくものです。
この業務は、臨床心理士の専門家としてモデルである「科学者-実践者モデル」を実現する重要な要素となります。
「科学者-実践者モデル」とは、臨床心理士は「科学者の側面」と「実践者の側面」の両立した専門家であることを示す理念です。
科学者としては、「数量化するだけでなく事例研究もふくめて、事実を検証し合理的に考えていく思考や手続きを行う」ということだとといえます。
実践者としては、「対人関係技能、査定技能、連携技能等を身に付け、質の高い心理的援助の実践する」ということだといえます。
臨床心理士が援助を行う方法に関連した用語に「エンパワーメント」があります。
「エンパワーメント」とは、無力な状態にある人が、自分の中にある力の存在に気づき、それを自分から引き出していく「プロセス」とそれによる「結果」を意味します。
人々や組織、コミュニティが自分たちの生活への統制を獲得する過程であるともされます。
「専門家が援助中心となっている伝統的な援助」に対する批判として生まれた概念です。