ここでは、脳波と睡眠に関連した事項について説明します。
用語:脳波(α,β,θ,δ波) / レム・ノンレム睡眠(逆説睡眠・徐波睡眠) / 徐波 / 棘波
脳波とは、ヒト・動物の脳から生じる電気活動を、頭皮上、蝶形骨底、鼓膜、脳深部などに置いた電極で記録したものであり、Berger,H(ベルガー)によって始めて記録されました。
脳波の測定法としては、耳朶(じだ)を不関電極(基準電位)として各部位との電位差を測定する「単極導出」や、頭皮上電極どうしの電位差の変動を測定する「双極導出」があります。
脳波は多くのニューロンの活動が干渉しあった集合電位の一つの側面を反映しています。
下表に脳波の種類を「周波数Hzが高い順番(波長が短い順番)」にまとめます(文献)。
脳波の種別 [周波数(Hz)] |
内容・特徴 |
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β波(ベータ波) 【14Hz〜30Hz】 |
β波は警戒、集中している時に出現しており、アドレナリンが分泌されています。覚醒状態で、脳波の記録が開始されて間もない頃に出現しやすいです。 最も波長が短い脳波です。 |
α波(アルファ波) 【8Hz〜13Hz】 |
α波は、リラックスしている時や「安静覚醒閉眼時」に出現しやすい脳波です(開眼により抑制)。 α波は、頭頂部・後頭部において出現頻度が高いですが、前頭・側頭部などにも持続的に出現する場合があるとされます。 |
θ波(シータ波) 【4Hz〜7Hz】 |
θ波は深い瞑想状態やまどろみの状態に出現する脳波です。 軽睡眠の段階に入り、睡眠の深度が深まれば、乳幼児発達の途上で認められる徐波に似たシータ波が出現してきます。 |
δ波(デルタ波) 【0.5Hz〜3Hz】 |
δ波は、最も深い睡眠の段階で出現します。 徐波睡眠(ノンレム睡眠)の時に出現します。 |
脳波のδ波とθ波を併せて周波数Hzの低い脳波(波長が長い)を「徐波」と言います。
徐波は、睡眠時に生じる脳波ですが「脳腫瘍や脳炎、認知症などの意識障害時」においては、日常でも出現します。
徐波は意識レベルの低下と理解され、成人のα波の周波数が8Hz前後まで低下すると何らかの脳機能低下が疑われます。
てんかん患者の脳波は、「棘波(きょくは)」と呼ばれる「20ー70ms続く突発波で波形が尖鋭の脳波」があらわれます。また「棘・徐波(きょくじょは)」(棘波に続いて高振幅の徐波が現れる)と呼ばれる脳波も生じ、特徴的な脳波がみられます。
脳波は脳の活動に対して連続的に出ていますが、特定の事象の認知過程に対して一過性で生じる電位を「事象関連電位(ERP)」といいます。
代表的な指標は「P300」と呼ばれ、事象から約300msec後に出現する「+の電位」です。この電位はアルツハイマー病では出現しにくく、初期診断に有用と言われています。
* 脳波は、縦軸は上がマイナスとなります。これは、細胞内がマイナス、細胞外がプラスのイオンを持ち、電位が発生する時は、細胞内がプラス・細胞外がマイナスとなり、脳波は細胞外のマイナスを測定するためです。
睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という質的に異なる睡眠に分かれます。
レム睡眠は、急速眼球運動(REM:rapid eye movement)を伴う睡眠であり、脳は活動しており、筋肉は休んでいます。
ノンレム睡眠は、急速眼球運動を伴わず、脳は休んでおり、筋肉の緊張は保たれています。
レム睡眠とノンレム睡眠の特徴は下記のようになります(引用)。
入眠後1時間以内にノンレム睡眠に達した後に、レム睡眠になります。その後は「ノンレム睡眠・レム睡眠のセット」が約90分周期で繰り返されます。
レム睡眠は全体の睡眠時間の約20%を占めますが、新生児では50%にも達しており、成長するに従って減少していきます。
睡眠の時間には個人差がありますが、加齢により睡眠時間は短くなります(10年ごとに10分ずつ短縮し、起床時間は早くなり、睡眠効率は低下)。