箱庭療法(sandplay therapy)は、気箱に入った砂の上にミニチュアを並べることでイメージ表現を行う心理療法です。言語を必要としない療法であるため、自分の内的な感情を言語化することが困難なクライエントに対して効果的とされます。
箱庭療法の原型は、Lowenfeld,M(ローエンフェルド)が子供の心理療法として創始した「世界技法」と言われています。
その後、ローエンフェルドに世界技法を学んだ「Kalff,D.M(カルフ)」は、ユング(Jung,C.G.)の理論にもとづき、適応範囲を成人にまで拡大し、世界技法を箱庭療法(sand play therapy)として発展させました。
ユング派の「河合隼雄」によって箱庭療法は日本で紹介され、日本で急速に普及しました。
箱庭療法の用具としては砂箱とミニチュアが用いられます。砂箱は全体が視野の中に入ることを考慮して、「57cm×72cm×7cm」と決められています。ミニチュアには規定がなく、場合によっては、クライエントが持参したり、製作したりすることもあります。
箱庭の製作において、セラピストは製作に干渉せず、鑑賞に徹するのが原則です。そこでは、セラピストとクライエントの関係の中で、「自由にして保護された空間」が形成され、クライエントが「母子一体性」を感じられる状況が再現されます。
自由に保護された空間とは、箱庭の枠を意味します。その枠が、攻撃的、破壊的な表現からクライエントの自我を守りつつ、自由なファンタジーの表現を促進すると考えます。
カルフは、Neumann,E(ノイマン)の考えにしたがって、一般的には箱庭の表現は下記の段階を経て発展していくと考えました。
箱庭療法の特徴は、以下のようなことが挙げられています。
箱庭療法の適応において、年齢や病態についての制限は特にありませんが、「統合失調症の急性期」の場合は、特別の場合を除いて禁忌となります。
これは、箱庭の製作が、無意識のイメージの流出を促すため、自我の弱さから破壊的な表現が出てきた場合は、症状が増悪する危険性があるからです。また、境界例や統合失調症の病圏のクライエントの場合は、慎重であるべきとされます。
無意識のイメージの表出が、クライエントの自我の統合力を超えると判断した場合にはセラピストは製作を中止させます。