「芸術療法」とは、絵画、工作、音楽、演劇、ダンスなどといった芸術作品を創造する活動によって、心の健康回復を目指す心理療法です。クライエントが何らかの表現方法を見つけ出すということを意味して、「芸術表現療法」という呼び名もあります。
用語:
芸術療法は、年齢や症状を問わず幅広く適用可能であり、特に十分に言語表現することが難しいこどもや、対人的接触が苦手な成人に対して有効であるとされます。
芸術療法の特徴として下記のような点が挙げられます。
絵画による代表的な芸術療法としては、中井久夫による「色彩分割法」や「風景構成法」が挙げられます。
1枚の画用紙を鉛筆などでクライエントが自由に分割し、各分割領域に好きな色を塗っていく方法です。セラピストがあらかじめ分割する方法もあります。
心理検査の描画法の1つとしても有名です。箱庭療法をヒントに考案し、「統合失調症患者」への描画を介した治療的接近法とされます。
セラピストが枠付けした画用紙に対して、クライエントがセラピストから教示された順番で「川・山・田・道」(大景群)、「家・木・人」(中景群)、「花・動物・石」(小景群)を描いた後、彩色します。
「枠付け法」とは、画用紙にセラピスト自らが枠を描き入れることで、クライエントに安全感と保護を与える方法であり、中井久夫が考案しました。枠付けをしないと、より防衛的、虚栄的で、現実に引きずられた表現が出現するとされています。枠付けは、クライエントに保護を与える一方で、「表出を強いる」という両価性をもっています。
なぐり描き法としては、ナウムバーグ(Naumburg,M)による「スクリブル法」やウィニコット(Winnicott,D.W.)による「スクイッグル法」、山中康裕による「交互なぐり描き物語統合法(MSSM)」が挙げられます。
ナウムバーグ(Naumburg,M)が開発した方法で、クライエントが自由に画用紙になぐり描きを行います。
ウィニコット(Winnicott,D.W.)が開発した方法で、セラピストとクライエントが相互になぐり描きをして見えたものを絵にします。一人が描いた一筆書きの線を利用して、もう一人が絵を完成させます。
山中康裕は、スクイッグル法を発展させ、「交互なぐり描き物語統合法(MSSM)」を考案しました。
1枚の紙をコマ割りし、セラピストとクライエントが交互になぐり描きしあい、彩色して絵を完成し、すべての絵を用いてクライエントが物語を作ります。
コラージュ療法は、雑誌やパンフレットなどの既成のイメージを切り抜いたものを台紙に糊付けし、再構成して作品をつくります。コラージュとは「糊づけ」を意味します。完成後に、作品をもとに連想を広げ、作品や制作中の感じなどを話し合います。
コラージュ療法には、「コラージュボックス法」と「マガジン・ピクチャー・コラージュ法」の2種類があります。