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心理学用語集: 家族療法(概要)

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 家族療法(Family therapy)とは、家族を家族システムとみなし、その中で繰り返される成員間(家族のメンバ間)の相互作用のパターンに対して介入を行う心理療法であるといえます。
家族療法には、非常に多様な学派・理論がありますが、ここでは家族療法の基本的な考え方をまとめます。


家族療法の考え方

 家族療法では、家族全体をひとつの有機体としてとらえる「システム論」に基づいています。
 したがって、クライエントの問題を、家族というシステム内の成員間の円環的な関係(=「円環的因果律」としてとらえます。
 家族療法では、症状や問題をかかえている人を「IP(Identified Patient)」と呼びます。そして、IPの抱える問題は、個人の問題ではなく、その家族の問題がIPに現れたと考えます。

直線的因果律・円環的因果律:

 「直線的因果律」とは、クライエントの問題は、特定の原因によってもたらされた結果であるという関係のことです。
直線的因果律の観点からは「こどもが学校をさぼる」という問題の原因は、「成績が落ちたたこと」と考えます。

 「円環的因果律」とは、相互が原因でも結果でもあるという関係であり、卵と鶏の関係にあたります。卵が原因で鶏の結果であるとは言えず、お互いにぐるぐると繰り返していく円環的な関係です。家族療法では、クライエントの問題を、家族の成員間、もしくは家族システム内の円環的因果律の観点でとらえます。
 円環的因果律では「こどもが学校をさぼる」を「成績が落ちた→親が叱る→親への反発→学校をさぼる→成績が落ちる→親が叱る→・・・」などという観点で捉えます。



家族療法の学派
 

家族療法には、非常に多様な学派・理論があります。下表に代表的なものをまとめます。
各学派の内容は別途記載しています。

学派 内容
コミュニケーション学派
(MRI派)
Bateson,Gベイトソン)らの二重拘束理論(ダブルバインド)の流れを汲み、家族が訴える苦痛そのものと同時に、背後に潜む相互関係の機能不全にも気づくように援助します。 Jackson,D.D.(ジャクソン)が創立したMRI(Mental Research Insititute)派と同じです。
戦略学派 コミュニケーション学派の延長線上にあってHaley,J(ヘイリー)が中心となって築いた理論体系で、家族が現在悩んでいる問題を速やかに、かつ効果的に解決することを目的としています。
Erickson,M.Hに端を発する「逆説的介入法」を活用するなど、独創的な戦略的技法を開発しています。 
ミラノ学派
(システミック派)
Bateson,Gのシステム論的認知論を臨床に持ち込んだ、Selvini-Palazzoli,M(セルヴィニー パラツォーリ)らの学派です。問題の症状を要として家族関係の平衡が維持されているという症状の肯定的役割を認め、家族に対して現状維持を薦めるメッセージ(逆説的メッセージ)を与えます。それがきっかけとなり生じる家族の困惑や動揺によって家族交流の悪循環を壊し、新たな家族システムの再編を促します。
構造学派  Minuchin,Sミニューチン)の学派です。家族システムに療法家が溶け込む「ジョイニング(joining)」の過程を重視し、サブシステムの境界に働きかけて構造変革を促します。
多世代家族療法  Bowen,M(ボーエン)が体系化した家族システム論で、治療目標を構成員の個別化と自立性の促進に置き、個人の知性機能と情緒性機能の調和が十分達成されているか(=自己分化)を重視します。多世代家族療法は、「ジェノグラム」などによって、家族代々の歴史や経験、当該家庭の発達の様態や家族間の関係性についての着目するアプローチです。
精神力動的家族療法  Ackerman,N.(アッカーマン)に代表される、精神分析的概念を用いた家族療法です。家族関係における役割意識がパーソナリティに与える影響などについて注目します。
ナラティブセラピー  White,M(ホワイト)らにより創始された「クライエントの語る物語」に注目した新しいアプローチです。社会構成主義の発想を理論的基盤とし、家族を支配している問題のあるストーリーを積極的な問題解決に繋がる代替的ストーリーに書き換えることを援助します。
ナラティブセラピーは、家族療法家であるホワイトによって家族療法として始まりましたが、現在は独立した一つの療法と言えます。


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