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心理学用語集: 多世代家族療法・ナラティブセラピー

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 ここでは、家族療法の「多世代家族療法(Bowen:ボーエン)」と、家族療法から始まった「ナラティブセラピー(無知の姿勢)」をまとめます。
また、代表的な「家族療法の技法」についてもまとめます。


多世代家族療法

 多世代家族療法は、Bowen,M(ボーエン)が体系化した家族システム論です。
治療目標を構成員の個別化と自立性の促進に置き、個人の「自己分化(知性機能と情緒性機能の分化)」が十分達成されているかを重視します。
 
多世代家族療法は、「ジェノグラム(家族の関係図)」などによって、家族代々の歴史や経験、当該家庭の発達の様態や家族間の関係性についての着目するアプローチです。家族の関係性は、世代から世代と伝承されていくと考え、その伝承は多世代伝達過程と呼ばれます。

  1. ジェノグラムを活用し、多世代(3世代以上)の歴史的枠組みの中で家族を理解する。家族ライフサイクルの視点を重視する。
  2. 過去の体験や歴史について触れるが、原因探しはしない。
  3. 家族をシステム的に理解する視点と、個人を理解する視点を持つ。
  4. 個人の自己分化を目指す。個々人が個を確立することで問題や症状は解決されると考える。

 介入では、家族の成員が家族の問題を意識化するように自覚を促します。カウンセラーは家族の問題に巻き込まれないように中立的・客観的な態度であることが必要とされます。
また、カウンセラーが高度に自己分化した「モデル」となることで、家族の自己分化を促します。

自己分化:

 自己分化とは、個人の「知性の機能」と「感情の機能」のバランスがとれて、調和していることを呼びます。
 自己分化度が高いと、個人の個別性が確立され、他者との関係性もバランスが取れたものになるとされます。
一方、自己分化度が低いと、過度に感情的か、過度に知性的になります。過度に感情的の場合は、他者との関係性を偏重し、融合的な関係になり、過度に知性的の場合は、個別性を偏重し、疎遠な関係となるとされます。



ナラティブセラピー

 ナラティブセラピーは、家族療法家であるWhite,M(ホワイト)らにより創始された心理療法です。社会構成主義の発想を理論的基盤とした新しいアプローチであり、現在は家族療法の一つというよりも、独立した一つの療法と言えます。

ナラティブセラピーでは、事実と虚構が交錯したリアルな経験をその個人が意義付けするために「物語(ナラティブ)」にしたものに対して、働きかけます。
 治療目標としては、心理療法の場におけるクライアントの語りの改訂や産出であり、語りの背景(仮説的な構成概念)は必ずしも必要とされません。

ナラティブセラピーの代表的な3つの方法をまとめます。

  1. ナラティブセラピー(ホワイト・エプストン):

    クライエントによって語られる物語の中で現れる「問題のある支配的なストーリー(ドミナント・ストーリー)」に対して、”ユニークな結果”に焦点をあて、積極的な問題解決に繋がる「代替的ストーリー(オルタナティブ・ストーリー)を作り上げることで介入します。

  2. コラボレイティブアプローチ(アンダーソン・グリーシャン):

    物語は、聞き手の姿勢によって方向づけられると考え、「無知の姿勢」を重視します。対話を続け、”共同検索”していくことで、未だに語られていない物語を開花させます。

  3. リフレクティングチーム(アンデルセン):

    セラピストは客観的な観察者という立場を放棄し、治療スタッフ間の会話を家族に観察者として聞かせることで、別の見方を知る機会を与える。

無知の姿勢:

 「無知の姿勢」とは、「中立的な専門家としてでなく、専門知識に固執しない学習者」としてクライエントに関わっているカウンセラーの姿勢のことです。カウンセラーは、専門知識に基づいてクライエントの経験を解釈するのではなく、クライエントに対しては無知であり、学ぶ立場としてクライエントを理解していく姿勢が求められます。

社会構成主義:

 社会構成主義とは、「社会に存在する現実とは、個人から独立して存在するのではなく、会話を通じて現実と個人とが相互に影響を与え合う循環的な関係である」とする立場です。現実というものは、現実は社会的かつ言語的に構成され、絶え間なく変化していく動的な過程であり、人々が解釈し、認識するにつれて、現実そのものが再生産されると考えます。
 自明と考えられている事柄の実在性や、暗黙的な本質主義を疑う立場として展開されてきました。
  科学性や客観的事実を重視する「エビデンス・ベースド・アプローチ」の反対にあるのが、「ナラティブ・アプローチ」とされることもあります。

  

家族療法の技法

 家族療法の代表的な技法をまとめます。

技法 説明
逆説的介入
(治療的ダブルバインド・症状処方)
症状の治療とは矛盾するような介入を行うことで、いづれにしても「クライエントの自己統制ができたことになる」または「症状の軽減になる」の結果を得られることで治療につながる方法。戦略学派による代表的な技法。
例)不眠のクライエントに「眠ってはいけない」という。起きていたならば、自己統制ができたことになり、眠ってしまったら、不眠が解消されたことになる。 
ジョイニング(Joining)セラピストが家族に加わり交流する方法。構造学派の用いる技法であり、そのほか「エナクトメント」「メシメス」「トラッキング」という技法がある(構造学派参照)。
リフレーミング 物事に対する視点のフレーム(枠組み)を変えることで、意味づけを変える方法(肯定的意味づけ)。
例)妻の「夫の帰宅が毎日遅い」という(否定的な)発言に対して、「帰宅が遅い旦那さんの事を心配されているんですね」と応答する。
メタファ 家族が陥っている状況を、童話や逸話などを題材にして家族の理解を促す方法。メタファという間接的な表現によって、家族自身が主体的に気づきを得ることにつながる。
ワンウェイ・ミラー 家族療法では、チームによって治療にあたるが、その時に「ワンウェイ・ミラー」、「インターフォン」、「VTR」を用いる。
ワンウェイミラー越しに面接を見ていたスーパーバイザーが、面接中にカウンセラーにインターフォンで指示を出すこともある。また、治療法として家族に治療スタッフ間の会話を聞かせたりする方法もある。



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