ここでは、統合失調症の概念形成や発症要因の理論や歴史についてまとめます。
用語:統合失調症の概念 / 統合失調症の発生要因
統合失調症の概念の形成は、「Kraepelin,E.(クレペリン・エミール)」が1899年にモレルが名付けた「早発性痴呆」をまとめたものが最初と言われています。
1911年に「Bleuler,E.(ブロイラー・オイゲン)」が、スキゾフレニア(schizophrenia)の名称を提唱しました。日本では精神分裂病と呼ばれ、2002年に統合失調症に改められました。
ブロイラーは、「連合弛緩・感情鈍磨 ・自閉性・両価性」を基本症状としてとらえ、統合失調症の本質は陰性症状であって、陽性症状は副次的な症状と考えていました。
1950年に「Schneider,K(シュナイダー・クルト)」は、臨床的な判別をするために特徴的な症状のリストを作成し、後に「第一級症状」と知られるようになりました。これには幻聴が3項目も含まれていますが、DSMに記述されている陽性症状に近いものです。
以後、多くの人がそれぞれの観点から、統合失調症の本質を述べており代表的なものをまとめます。
Jaspers,K (ヤスパース) |
実存主義哲学者であるヤスパースは、「了解不能性」(その人の心の動きを追うことができない)を重視しました。心理学的に了解できない妄想(真性妄想)を統合失調症特有のものとしました。 |
Binswanger,L (ビンスワンガー) |
現象学を精神病理に導入したビンスワンガーは、自然の連続関係のような経験に対して、統合失調症は「経験の首尾一貫性の喪失」と考えました。 |
Minkowski,E (ミンコフスキー) |
ビンスワンガーとともに現象学を精神病理に導入したミンコフスキーは、「現実との生ける接触の喪失」を統合失調症の基本障害としてとらえました。 |
Blankenburg,W. (ブランケンブルグ) |
自明性とは当たり前(常識)であり、意味の関連を見出すうえで背景にある事柄であるが、統合失調症の本質は、「自明性の喪失」であると考えた。 |
Rumke,H. (リュムケ) |
統合失調症患者のもつ特有の不可解さ、相対したときに生じる奇妙なためらいやよそよそしさの感じを「プレコックス感(プレコックス・ゲヒュール)と呼びました。 |
Sullivan,H. (サリバン) |
統合失調症の初期における妄想的な言動は、「パラタクシックな歪み」の産物である考えました。ある意味で患者を対人交流から遮断することでさらなる悪化を防ぐために役立つと論じた。 |
DSM-5では無くなっていますが、DSM-IVやICD-10では統合失調症の病型は「妄想型」、「解体型」、「緊張型」、「残遺型」とその他の5つに分類されていました。
統合失調症の緊張型(DSM-IV/ICD-10)は、DSM-5では「緊張病(カタトニア)」として記載されています。
( 詳細: ▼ 緊張病 )
以前は、統合失調症の発症は家族の育成環境要因が問題と考えられ、「二重拘束説(ダブルバインド)」や「highEE説」が提唱されていました。
現在では、遺伝的な影響が大きいと考えられており、ドーパミンの放出異常によって生じるとされる「ドーパミン仮説」が支持されていますが、不明な点は少なくありません。
なお、家族の要因については、今でも、「症状の悪化や再発の要因になりうる」と考えられています。