ここでは、DSM-5の「食行動障害および摂食障害群」についてまとめます。
「神経性やせ症」、「神経性過食症」のほか、「過食性障害」、「異食症」、「反芻症」、「回避・制限性食物摂取症」が含まれています。
用語: 神経性やせ症(無食欲症)/ 神経性過食症(大食症) / 発症の要因 / 援助の方法
摂食障害群は、「体重に対する過度なこだわり」や「自己評価への体重・体系への過剰は影響がある」などといった心理的要因に関連した食行動の障害です。
抑うつ気分、強迫症状、パーソナリティ障害との併発も多いとされています。
「神経性やせ症」は10代、「神経性過食症」は20代が多く、患者の多くが”女性”です(神経性やせ症の90%以上が女性)。
「神経性やせ症(無食欲症)」(AN:Anorexia Nervosa)は、以下の3つを診断基準とします。
神経性やせ症(無食欲症)は、「摂食制限型(過食と排出行為の繰り返しが無く、断食やダイエットによる体重減少)」と、「過食・排出型(過食と不適切な排出行為の繰り返しがあること)」の2つに分かれます。
過食・排出型の排出行為としては、自己誘発性嘔吐や下剤・利尿薬の濫用などがあります。過食・排出型の患者は衝動性が高いとされます。
病的に痩せていることは「るい痩(るいそう)」と呼ばれ、低栄養によって「無月経、月経不順、低血糖、徐脈、肝障害」などの症状が現れます。また、排出代償行為により「電解質異常(低K血症)、虫歯、エナメル質の溶解などがあります。
過度の体重減少は、身体に深刻なダメージを与え、時には死に至る場合があり、回復しても後遺症を残す場合があります。早期に医師の治療を受け、体重の回復をすることが優先されます。
「神経性過食症(神経性大食症)」(BN:Bulimia Nervosa)は、以下の4つを診断基準とします。
「過食性障害」は、排出行動などの代償行動を伴わずに過食を繰り返し、「早く・苦しいくらい満腹になるまで・恥ずかしさから1人で食べる」ことや「後で自己嫌悪・抑うつ・罪責感を感じる」といった特徴があるのがとなります。
摂食障害の発症の要因としては、「文化的社会的要因」、「心理的要因」、「生物学的要因」が関連しており、それらの相互作用によって生じているとされています。
摂食障害による体重減少が激しい場合は入院治療による「身体管理」を行い、栄養の改善を図ることが最優先となります。
援助は、食行動のみならず社会的な行動全般における「自己統制強化」を目標とし、それに伴う心理的な葛藤への介入を行います。
心理的な援助の方法としては、認知行動療法、対人関係療法、家族療法が心理療法として標準的とされます。
患者自身は体重低下に困っていないため、すぐに治療関係を築くことが困難という事があります。
また、体重増加への恐怖や不安に対して、抗うつ薬や抗精神病薬の利用もされることがあるとされています。
リフィーディング症候群とは、栄養不良患者の再栄養時に発生する代謝の異常であり、浮腫、心不全や呼吸不全、著しい筋力低下、せん妄などが現れ、場合によっては生命にかかわる危険性があります。
摂食障害患者に対する栄養用投与時には、重症度、過量飲酒歴などのリスク因子を考慮して治療を行う必要があるとされます。