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心理学用語集: 睡眠障害・依存症

3 - 精神病理摂食障害・睡眠障害・依存症 > 62- 睡眠障害・依存症

 ここでは、DSM-5の「睡眠-覚醒障害群」と「物質関連障害および嗜癖性障害群」(嗜癖:しへき)についてまとめます。
用語:

  1. 睡眠-覚醒障害群 :
    不眠障害(関連:むずむず脚症候群) / ナルコレプシー概日リズム睡眠-覚醒障害群睡眠衛生指導・援助法
  2. 物質関連障害および嗜癖性障害群
    薬物依存アルコール依存スクリーニング法) / ギャンブル依存依存症等の援助方法

睡眠-覚醒障害群

 睡眠-覚醒障害群には、「不眠障害」、「過眠障害」、「ナルコレプシー」に加え、「概日リズム睡眠-覚醒障害群」、「呼吸関連睡眠障害群」、「睡眠時随伴症群」が含まれます。

 睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠では、骨格筋の緊張を抑制し運動器を休めますが、脳は活動しており、急速眼球運動(REM:rapid eye movement)が生じます。
 睡眠の時間には個人差がありますが、加齢により睡眠時間は短くなり、睡眠効率は低下します(関連:「脳波と睡眠」)。


不眠障害:

 不眠障害の診断基準としては、
「入眠困難」、「中途覚醒・睡眠持続困難」、「早朝覚醒」の1つ以上が、1週間で3夜以上、3ヶ月間持続することです。

 日本の成人の20%が何らかの不眠の訴えを持っており、不眠障害の診断は6%程度とされます。不眠の原因は、下記の5つ(5P分類)の複合因とされています。

  1. 身体的(Physical: 疼痛、かゆみ、せき、頻尿、レストレスレッグス症候群など)
  2. 生理的(Physiological: 環境や生活時間帯)
  3. 心理学的(Phycological: ストレス、気がかり、緊張など)
  4. 精神医学的(Phychiatric: うつ病などの精神疾患)
  5. 薬理学的(Pharmacological: 薬物の副作用や離脱、カフェインやニコチン摂取)

 不眠障害の援助方法としては、「睡眠衛生指導」が基本となります。
 治療法としては、不眠に対する「認知行動療法(CBT-I:Insomnia)」や「リラクセーション法(漸進的筋弛緩法)」が推奨されます。
 また、「薬物療法(抗不安薬・睡眠薬)」も併用します。

 下記に、睡眠衛生指導の内容をまとめます(参照:厚生労働省NCNP)。

  1. 適度な運動・定期的な運動。過剰な運動は睡眠を妨げる。
  2. しっかり朝食をとる、規則正しい食生活、空腹で寝ない。
  3. 睡眠の環境づくりをする(寝室を快適に、光や音を防ぐ、温度を保つ、ぬるめの入浴等によるリラックス)。
  4. カフェインの摂取を減らす。
  5. 夜の「アルコール」、「喫煙」、「水分の取りすぎ」を避ける。
  6. 昼間の悩みを寝床にもちこまない(寝床は寝るだけ)。
  7. 睡眠スケジュール法(寝床=眠る場所として再学習させる技法):
    眠くなってから寝床に入り、起きる時刻を遅らせない。昼寝はできるだけ抑える。

ナルコレプシー:

 ナルコレプシーは、抑えがたい睡眠欲求、うたた寝する時間(数十分程度)の反復が起こる障害であり、「カタプレキシー」(情動脱力発作:笑いなどによる筋緊張の消失)を特徴とします。睡眠麻痺(金縛り)、入眠時幻覚などもあります。
 日本では600人に1人、10歳代で好発するとされています。患者は、脳脊髄液中のオレキシン濃度が低く、それが原因に関連していると考えられています。

 ナルコレプシーの援助の方法としては、「睡眠衛生指導」や、計画的な昼寝やカフェインの摂取の工夫を行います。また、過眠症状に対する精神刺激薬、カタプレキシーに対する抗うつ薬を使用した薬物療法を行います。


概日リズム睡眠-覚醒障害:

 生体内の睡眠-覚醒リズム(概日リズム)と外部環境の明暗サイクルとの同期がずれることによって生じる不眠や過剰な眠気を症状とした障害です。
 代表的な種類に下記のようなものの他、移動の時差によるもの(時差型)や、シフト勤務によるもの(交代勤務型)があります。

  1. 睡眠相後退型(症候群): 就寝・起床時間が遅くなる様式(日中が眠気が強く、夜は眠れない)。
  2. 睡眠相前進型(症候群): 就寝・起床時間が早くなる様式(高齢者に多くみられる)。
  3. 非24時間睡眠覚醒型(症候群): 睡眠-覚醒リズムが24時間より長いため,1日につき1〜2時間ずつ就寝および起床時刻が遅くなる。


物質関連障害および嗜癖性障害群

 薬物やアルコールに対する依存症は、DSM-5において「物質関連障害および嗜癖性障害群」に分類されます。アルコール、大麻、タバコ等の10個の対象による障害、ギャンブル障害などが含まれています。
 大きく、物質使用障害群と物質誘発性障害群に分類されます。

「物質使用障害群」:
 物質を大量に長期間使用することなどによる不適応な状態。行動的・認知的な障害。
 (診断名:アルコール使用障害、大麻使用障害など)

「物質誘発性障害群」:
 物質の摂取や中止による気分不安定、協調運動障害、手指振戦、一過性錯覚、不眠などの特異的な症状。
「中毒:摂取によって生じる症状」と「離脱:摂取中止による病的な症状」がある。
 (診断名: アルコール中毒、アルコール離脱、カフェイン中毒など)


乱用と依存/中毒と離脱:

 依存症に関するそれぞれの用語の意味は下記の通りです。下記に「薬物依存」、「アルコール依存」および、「ギャンブル依存」についてまとめます。

  1. 乱用とは「社会的な許容範囲を超えて自己使用する事」。
  2. 依存とは「乱用の繰り返しの結果、自己コントロールできずにやめられない状態」。
    依存には「身体依存」(身体の変化が生じて無いと離脱症状が出てしまう)と「精神依存」(自制が働かなくなった脳の障害。強い欲求と探索行動)がある。
  3. 中毒とは「薬物等の摂取によって生じる症状の事(昏迷など)」。
  4. 離脱とは「摂取中止による病的な症状の事(手指振戦、一過性幻覚など)」
薬物依存:

 薬物依存においては、「半減期(薬成分の血中濃度が半減するまでの時間)」が短いものほど、乱用しやすいとされます。抗不安薬・睡眠薬の副作用にも依存症状があります。
 薬物の種類によって、身体依存及び、精神依存の強さに特徴があります。


 「再燃現象(フラッシュバック)」とは、薬物の乱用をやめた後に何かの刺激によって再び幻覚・妄想などの精神異常が再燃することです。「逆耐性」、「増感現象」とも呼ばれ、その薬物に対する感受性が増大しているために生じます。


アルコール依存:

 アルコール依存症には下記の特徴があります。

  1. うつ病や不安障害との合併が多いことが報告されている(参考)。PTSDとの関連もあるとされる。
  2. 依存症ではない人と比較して自殺の危険性が約6倍高く、生涯の自殺リスクの推定は7%という報告がある。(文献)。
  3. ビタミンB1の欠乏によって、ウェルニッケ-コルサコフ症候群が生じる場合がある。予防にはビタミン B1の投与が有効。
  4. 依存症であることを本人が「否認」する特徴がある(自分が悪いのではないという主張も含まれる)。
  5. アルコール中毒症状には、ろれつが回らない会話、不安定歩行、眼振、注意・記憶の低下、昏迷・昏睡などがある。
  6. アルコール離脱症状には、早期離脱症状と後期離脱症状がある。飲酒中断後、数日以内にせん妄も生じる(振戦せん妄/離脱せん妄と呼ばれる)。

 アルコール依存は、飲酒を容認することで家族や上司など周囲の者がイネーブラー(依存の支え手)となる事があるため、明確に問題行動を伝え、医療機関へ受診させることが必要となります。
 例)たびたび酒気帯びで出社してくる社員が「次から飲まない」と言う事に対して、上司が注意・指導で様子を見る事もイネーブラーとなり得ます。そのため、治療しなければ降格や失職の可能性もある事を社員に明確につたえます(参照)。


 アルコール関連障害のスクリーニングは症状の有無のほか、検査によっても行われます。

  1. 「ほぼ毎日飲酒している」、「飲み方に異常がある」、「離脱症状が存在する」、「生活に支障がある」といった症状
  2. 血液検査による「γGTP高値」、「血清マグネシウム濃度(低下)」など
  3. スクリーニングテストとして「AUDIT」、「CAGE」、「新KAST」などが用いられる。

ギャンブル障害(ギャンブル依存等):

 ギャンブル障害は、臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る持続的かつ反復性の問題賭博行動です。
 下記のような特徴があるとされます。

  1. アルコール使用障害、パーソナリティ障害、気分障害(うつ病)、不安障害といった精神疾患の合併が多い。
  2. 虐待(被害・加害の経験)、自殺、犯罪などの問題と密接に関連している。

依存症等の援助方法:

 依存症等に対する援助の方法としては、下記が挙げられ、これらを組み合わせて行います。
 クライエントの「行動変容ステージ(行動変容の段階)」を理解し、ステージに応じた支援を行います。

  1. 動機づけ動機づけ面接法
  2. 個人・集団心理療法(認知行動療法など)
  3. 自助グループ(断酒会、AA※)によるピアサポート(同じような立場の人によるサポート)
    ※「AA」は匿名によるアルコール依存症者の自助グループ、「NA」は匿名による薬物依存症者の自助グループ、「DARC(ダルク)」は薬物依存症リハビリテーションセンターを表します。
  4. 薬物療法:「抗酒薬(シアナミド)」や飲酒渇望抑制薬など

 お酒、薬物、ギャンブル等をやめている最中に、極一時的に、再びそれらを使用したりすることを「スリップ」と呼びます。
 回復過程においてスリップが起こることも留意が必要であり、直ちにそれらの使用をやめて治療を再開することが重要となります。




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