ここでは、DSM-5の「睡眠-覚醒障害群」と「物質関連障害および嗜癖性障害群」(嗜癖:しへき)についてまとめます。
用語:
睡眠-覚醒障害群には、「不眠障害」、「過眠障害」、「ナルコレプシー」に加え、「概日リズム睡眠-覚醒障害群」、「呼吸関連睡眠障害群」、「睡眠時随伴症群」が含まれます。
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠では、骨格筋の緊張を抑制し運動器を休めますが、脳は活動しており、急速眼球運動(REM:rapid eye movement)が生じます。
睡眠の時間には個人差がありますが、加齢により睡眠時間は短くなり、睡眠効率は低下します(関連:「脳波と睡眠」)。
不眠障害の診断基準としては、
「入眠困難」、「中途覚醒・睡眠持続困難」、「早朝覚醒」の1つ以上が、1週間で3夜以上、3ヶ月間持続することです。
日本の成人の20%が何らかの不眠の訴えを持っており、不眠障害の診断は6%程度とされます。不眠の原因は、下記の5つ(5P分類)の複合因とされています。
(補足: ▼ レストレスレッグス症候群/むずむず脚症候群 )
不眠障害の援助方法としては、「睡眠衛生指導」が基本となります。
治療法としては、不眠に対する「認知行動療法(CBT-I:Insomnia)」や「リラクセーション法(漸進的筋弛緩法)」が推奨されます。
また、「薬物療法(抗不安薬・睡眠薬)」も併用します。
下記に、睡眠衛生指導の内容をまとめます(参照:厚生労働省;NCNP)。
ナルコレプシーは、抑えがたい睡眠欲求、うたた寝する時間(数十分程度)の反復が起こる障害であり、「カタプレキシー」(情動脱力発作:笑いなどによる筋緊張の消失)を特徴とします。睡眠麻痺(金縛り)、入眠時幻覚などもあります。
日本では600人に1人、10歳代で好発するとされています。患者は、脳脊髄液中のオレキシン濃度が低く、それが原因に関連していると考えられています。
ナルコレプシーの援助の方法としては、「睡眠衛生指導」や、計画的な昼寝やカフェインの摂取の工夫を行います。また、過眠症状に対する精神刺激薬、カタプレキシーに対する抗うつ薬を使用した薬物療法を行います。
生体内の睡眠-覚醒リズム(概日リズム)と外部環境の明暗サイクルとの同期がずれることによって生じる不眠や過剰な眠気を症状とした障害です。
代表的な種類に下記のようなものの他、移動の時差によるもの(時差型)や、シフト勤務によるもの(交代勤務型)があります。
薬物やアルコールに対する依存症は、DSM-5において「物質関連障害および嗜癖性障害群」に分類されます。アルコール、大麻、タバコ等の10個の対象による障害、ギャンブル障害などが含まれています。
大きく、物質使用障害群と物質誘発性障害群に分類されます。
「物質使用障害群」:
物質を大量に長期間使用することなどによる不適応な状態。行動的・認知的な障害。
(診断名:アルコール使用障害、大麻使用障害など)
「物質誘発性障害群」:
物質の摂取や中止による気分不安定、協調運動障害、手指振戦、一過性錯覚、不眠などの特異的な症状。
「中毒:摂取によって生じる症状」と「離脱:摂取中止による病的な症状」がある。
(診断名: アルコール中毒、アルコール離脱、カフェイン中毒など)
依存症に関するそれぞれの用語の意味は下記の通りです。下記に「薬物依存」、「アルコール依存」および、「ギャンブル依存」についてまとめます。
薬物依存においては、「半減期(薬成分の血中濃度が半減するまでの時間)」が短いものほど、乱用しやすいとされます。抗不安薬・睡眠薬の副作用にも依存症状があります。
薬物の種類によって、身体依存及び、精神依存の強さに特徴があります。
( 詳細: ▼ 薬物の種類と依存の特徴 )
「再燃現象(フラッシュバック)」とは、薬物の乱用をやめた後に何かの刺激によって再び幻覚・妄想などの精神異常が再燃することです。「逆耐性」、「増感現象」とも呼ばれ、その薬物に対する感受性が増大しているために生じます。
アルコール依存症には下記の特徴があります。
アルコール依存は、飲酒を容認することで家族や上司など周囲の者がイネーブラー(依存の支え手)となる事があるため、明確に問題行動を伝え、医療機関へ受診させることが必要となります。
例)たびたび酒気帯びで出社してくる社員が「次から飲まない」と言う事に対して、上司が注意・指導で様子を見る事もイネーブラーとなり得ます。そのため、治療しなければ降格や失職の可能性もある事を社員に明確につたえます(参照)。
アルコール関連障害のスクリーニングは症状の有無のほか、検査によっても行われます。
ギャンブル障害は、臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る持続的かつ反復性の問題賭博行動です。
下記のような特徴があるとされます。
依存症等に対する援助の方法としては、下記が挙げられ、これらを組み合わせて行います。
クライエントの「行動変容ステージ(行動変容の段階)」を理解し、ステージに応じた支援を行います。
お酒、薬物、ギャンブル等をやめている最中に、極一時的に、再びそれらを使用したりすることを「スリップ」と呼びます。
回復過程においてスリップが起こることも留意が必要であり、直ちにそれらの使用をやめて治療を再開することが重要となります。