本文へスキップ

公認心理師・臨床心理士・心理職(心理系公務員)を目指す方々のための「心理学用語」を説明したサイトです

心理学用語集: 精神症状

3 - 精神病理精神症状と診断 > 11- 精神症状

 精神障害とは、「精神や行動における特定の症状を呈することによって、著しい苦痛や社会的な機能の低下(機能的な障害)を伴っている状態」とされます。
 ここでは、精神障害を理解するために「代表的な精神症状」についてまとめます。

用語: 抑うつ不安強迫せん妄記憶障害幻覚妄想思考障害



抑うつ

 「抑うつ」とは、気分の落ち込み、精神運動活動が抑制している状態です。気分の落ち込み自体は、健康な一過性の感情です。

  1. 抑うつ障害群に代表される症状。
  2. 抑うつ障害においては、抑うつ気分の持続以外にも、「興味の喪失、疲労感・無気力感、罪責感、希死念慮、睡眠や性欲に対する影響」など、様々な症状が出現し、社会的職業的な機能が著しく障害される。


 「躁」とは、気分が高揚し、精神運動活動が亢進している状態です。自尊心は、肥大し、自信にあふれ、活力が亢進します。

  1. 双極性障害に代表される症状。
  2. 目的志向の活動も増加するが、注意は散漫となり、外部刺激により転導する(移り替わる)。
  3. 思考は活発で、多数の考えが頭の中で競い合い、極端な場合は「観念奔逸」が生じる。
  4. 軽躁状態でのお金の浪費・濫費、社交活動の拡大などや、不眠を自覚しない、爽快な気分、不快による易怒性、易刺激性などの症状もある。


不安

 「不安」とは、漠然とした対象のない恐れの不快感情のことまたは、不快感を伴った安らかではない状態です。
 一方、「恐怖」とは、特定の対象に対する恐れの感情であり、対象によって、高所恐怖、閉所恐怖、対人恐怖、不潔恐怖、などがあります。

  1. 不安症群に代表される症状。
  2. 不安は、心的体験としてだけではなく、自律神経症状(頻脈、発汗、口喝など)や、行動(視線移動、足のゆすりなど)にも表現される。
  3. 不安は健康な心理反応だが、現実の問題に対する「現実不安」と、心的事象として予期したことに対する「予期不安」(学習による形成)及び、個人の内的衝動に基づく「神経症的不安」がある。


強迫

 「強迫」は、感情に裏付けられたこだわり・とらわれ(優格観念)があり、それが繰り返し生じる思考である「強迫観念」と、それを打ち消すために繰り返す「強迫行動」のことをさします。
 優格観念自体は、健康な心理反応ですが、強迫となると不安が引き起り、思考や行動に悪循環が生じます。

  1. 強迫性障害に代表される症状。
  2. 強い不安や苦痛を伴い、長時間を費やすことによって日常生活に支障を生じる。
  3. 強迫行為としては、繰り返しの手洗い、確認行為、過剰な験担ぎ、数字へのこだわり、ごみのため込、性的宗教的なのめりこみなどがある。


せん妄

「せん妄」とは、「注意と意識」の障害であり、悪性の寝ぼけと言えます。
 「急性の発症」、「日内・日間変動が激しい事」を特徴とし、ほとんどが一過性です。
 意識レベルは変動し、「見当識の障害」がみられ、通常は睡眠や食事のパターンがひどく乱れます。

  1. 健忘、思考の解体や発語の乱れ、幻覚・妄想・パラノイア(妄想性パーソナリティ障害)を有することがある。
  2. 「易怒的・興奮・多動・過覚醒」または、「静かで内向的」という人格および感情の変化もよくみられる。
  3. 不穏の目立つ「過活動型」、無関心、不活発の目立つ「低活動型」、「混合型」がある。
せん妄の原因:

 せん妄の原因には、直接因子と誘発因子があります。直接・誘発因子の影響は「高齢」を背景としている場合が多くあります。

  1. 直接因子:
    「治療、治療薬剤」、「感染」、「電解質異常」、「低酸素」など
  2. 誘発因子:
    「身体的要因(疼痛・脱水・尿路感染症等)」、「精神的要因(不安・抑うつ)」、「感覚刺激の過小/過剰」、「環境変化(入院や入所等)」、「睡眠障害」など。


記憶障害

 「記憶障害」は、体験した出来事の記憶(記銘、保持、想起)ができない状態です。下記のような区別がなされます。

  1. 前向性健忘(新しいものに対する障害)と逆行性健忘(過去の保持していたものに対する障害)[ 参照:健忘 ]
  2. 記銘障害(覚えておくことができない)と想起障害(思いだすことができない)
  3. 顕在記憶の障害(エピソード記憶)と潜在記憶の障害(手続き記憶)


幻覚

 「幻覚」とは、外的な刺激が存在しないにもかかわらず、真の知覚と区別できない知覚体験をすることです。
 幻視、幻聴、幻味、幻臭、幻触、幻肢痛や、身体感覚で表現しにくい体感幻覚があります。

  1. 幻聴は、統合失調症の症状に代表される。自分の考えが聞こえる「考想化声」などもある。
  2. 幻視は、「せん妄レビー小体型認知症、薬物の影響」などでみられる。
  3. 事故などで四肢を切断した場合、ないはずの手足の存在や痛み(幻肢痛)などがみられる。


妄想

 「妄想」とは、不十分な根拠に基づく強固な確信性があり、説明や反証による「訂正不能」な不合理な信念のことです。

  1. 教育的・文化的背景の観点から考えると不合理であるものをさす。
  2. 統合失調症の症状に代表されるが、一次妄想や二次妄想などの種類に分類される。
妄想の種類:

 妄想には、大きく「一次妄想」と「二次妄想」がありますが、明確な分類は難しいとされています。
 一次妄想は「妄想気分、妄想知覚、妄想着想、妄想表像、妄想覚性」の5種類に分類されます。

 ( 詳細: ▼ 一次妄想


 二次妄想とは、「主観的体感に関する、本人なりの意味づけ(発生的了解)として生じる信念」をさします。
 内容的な妄想による分類は下記のものが挙げられます。

妄想の種類と内容
被害妄想・関係妄想:
  1. 迫害妄想(迫害されている)
  2. 追跡妄想(つけねらえわれている)
  3. 注察妄想(みられている)など
  4. 統合失調症の症状に見られる
誇大妄想
  1. 血統妄想(高貴な出生である)
  2. 発明妄想(大発明を行った)
  3. 宗教妄想(救世主である)など
微小妄想・虚無妄想:
  1. 心気妄想(身体的異常がある)
  2. 罪業妄想(罪深いと確信している)
  3. 貧困妄想(財産がない)など
  4. うつ病の症状として現れる
被影響妄想(自我障害):
  1. 作為体験(何かさせられている)
  2. 考想吹入(頭に考えをいれられる)
  3. 考想奪取(考えを奪われる)
  4. 考想伝播(考えが周囲に伝わる)など
  5. 自他境界感の喪失(自我障害)であり、統合失調症の症状に見られる
その他:
  1. 嫉妬妄想、夫婦妄想(異様なほどの嫉妬感情に支配されている)
     アルコール乱用や統合失調症の症状に見られる

カプグラ症候群:

 カプグラ症候群とは、友人や配偶者、両親その他近親者などが、「瓜二つの外見の別人に入れ替わってしまった」と誤認する妄想です。
 配偶者、両親など自分が愛着を持つ人物が偽物であることが妄想の主題であり、入れ替わった対象(偽物)に対して猜疑的、被害的であることが多いとされます。認知症の周辺症状として現れます。

 カプグラ症候群のほか、「フレゴリ症候群」、「相互変身妄想」、「自己分身症候群」が妄想性人物誤認症候群としてまとめられています。



3 - 精神病理 > 精神症状と診断 >