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心理学用語集: 不安症群

3 - 精神病理神経症性障害・ストレス関連障害 > 51- 不安症群

 ここでは、「不安症群」についてまとめます。ICD-10では、「神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害」に分類されています。
 DSM-5の不安症群には「パニック症」「広場恐怖症」「社交不安症」のほか「分離不安症」「選択性緘黙」「限局性恐怖症」「全般不安症」が含まれています。

用語:パニック症・広場恐怖症社交不安症全般不安症・選択性緘黙など不安症群への支援

 

パニック症・広場恐怖症

 「パニック症(パニック障害)」とは、繰り返される予期しないパニック発作を特徴とします。そして、それに伴って持続的な心配があり(どうにかなってしまう)、発作に関連した行動が不適応的に変化する障害です(不慣れな状況を回避するなど)。

女性に多く、青年期に増加し成人期にピークを示します。大脳辺縁系(特に扁桃体)の機能異常があり、恐怖が火災報知機の誤報のように誤作動し易いと想定されています。

パニック発作:

「パニック発作」とは、「激しい恐怖や不快感が突然生じて、数分以内にピークに達し、動悸や息切れなどの症状がおこる」ことをさします。
 症状としては、「心拍数増加、発汗、身震い、窒息感、胸痛、嘔気、めまい、寒気、異常感覚、現実感消失、抑制力の喪失、死への恐怖」などがあります。

広場恐怖症:

「広場恐怖症」とは、パニック発作や、その他耐えられない、または当惑するような症状が起きるような状況を恐怖し、回避することを特徴とします。それら状況は脱出困難で、援助は得られないかもしれないと考え、「公共交通機関の利用、広い場所(駐車場等)、囲まれた場所(お店、映画館等)、群衆の中」などの状況に対して恐怖や不安をもちます。



社交不安症

 「社交不安症」とは、他者の注視を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する、著しい恐怖または不安などを特徴とした障害です。
 ある振る舞いや不安症状をみせることが恥をかくなどの否定的な評価をうけると恐れており、そのような状況を回避するか、強い不安や苦痛を感じながら耐え忍ぶます。

 要因としては、遺伝的要因が大きく、扁桃体の過敏反応がみられるなど生物学的要因が考えられています。
 評価尺度としては、「リーボヴィッツ社交不安尺度日本語版」(LSAS-J) があります。

 

全般不安症/選択性緘黙など

 DSM-5の不安症群には、下記のような障害も含まれています。

  1. 全般不安症(全般性不安障害):
     仕事や学業などの多数の出来事について過剰な不安と心配を症状とする障害です。
     「1. 落ち着きがない/緊張感」、「2. 疲労しやすい」、「3. 集中困難」、「4. 易怒性」、「5. 筋肉の緊張」、「6. 睡眠障害」といった症状を伴います。
     評価尺度としては「GAD-7」があります。
  2. 選択性緘黙(かんもく)/場面緘黙:
     特定の社会状況で一貫して1ヶ月以上話すことができない障害です。社交不安症や発達障害との併存があるとされます(文献 )。
  3. 分離不安症:
     家族や愛着を持っている人からの分離に対する発達的に不適切で過剰な不安を症状とする障害です。不安の持続期間は、子どもや青年が4週間以上、成人が6か月以上となっています。
  4. 限局性恐怖症:
     特定の対象や状況への顕著な恐怖と不安を症状とする障害です(高所恐怖や閉所恐怖など)。


援助の方法

 援助の方法は、「薬物療法」と「認知行動療法」の組みあわせが標準的であるとされています。

  1. 薬物療法:
     抗うつ薬である「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」と抗不安薬である「ベンゾジアゼピン(BZD)系」が用いられます。
  2. 認知行動療法:
     「曝露療法(エクスポージャー)」や「認知療法」をおこないます。


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