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心理学用語集: 身体症状症・心身症

3 - 精神病理神経症性障害・ストレス関連障害 > 55- 身体症状症・心身症

 ここでは、DSM-5の「身体症状症および関連症群」についてまとめます。
また、混同しやすい「心身症」との違いや、そのほか「慢性疲労症候群」についても記載します。
用語:

  1. 身体症状症および関連症群病気不安症(心気障害)、作為症(ミュンヒハウゼン症候群/代理ミュンヒハウゼン症候群)
  2. 心身症: 過敏性腸症候群、メニエール病、アレキシサイミア
  3. 慢性疲労症候群


身体症状症および関連症群

 身体症状症および関連症群には、「身体症状症」、「病気不安症」、「変換症(転換性障害)」、「作為症(虚偽性障害)」が含まれます。
 基本的には、患者の訴える身体症状が、「一般身体性疾患や物質作用で説明できないか、原因からの予測をはるかに超えている」という特徴があります。

障害名説明
身体症状症  苦痛を伴い、日常生活に混乱を引き起こす複数の身体症状を有する障害です。身体症状や健康への懸念に関する過度な思考や不安、行動を有します。
病気不安症
(心気障害)
 重い病気にかかっている、かかりつつあるという過度なとらわれがある障害です。身体症状はしないまたは、存在しても軽微であり、その過度なとらわれとは不釣り合いなものです。
変換症
(転換性障害)
 複数の運動機能や感覚機能の変化がみられる障害です(例:麻痺や歩行障害、視覚障害など)。旧来の転換型ヒステリーの症状です。
作為症
(虚偽性障害)
 身体的または心理的な徴候や症状の捏造や意図的誘発をする障害です。詐病のような経済的利得や責任の回避などの外的報酬がないものを言います。
 以前は「ミュンヒハウゼン症候群」と呼ばれていました。
 他者の疾患の臨床像を捏造するという他者に負わせる作為症もあり、代理によるミュンヒハウゼン症候群と呼ばれます(例:子どもを病気にさせる)。


身体症状症の援助方法:

 援助の方法は、病態説明と症状の保証を行うことであり、薬物療法は、限定的とされています。
 リラクセーション法などの身体的アプローチもとりうるとされます。




心身症

 心身症とは、「心理社会的要因によって、器質的ないし機能的障害がみとめられる病態」をさします(日本心身医学会参照)。
 「身体症状症」とは異なり、一般身体性疾患の診断が確定していることが必要となります。
 心身症の例としては、「胃潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、片頭痛、不整脈、月経不順、気管支喘息、過換気症候群、アトピー性皮膚炎、メニエール病、本態性高血圧症」などなどが挙げられます。

 (詳細1: ▼ 過敏性腸症候群(IBS)

 (詳細2: ▼ メニエール病

      

 心身症の治療法としては、身体症状に対する治療を行いますが、さらに、心理状態と身体機能のつながり(心身相関)の観点から、心理面による治療も行います。

  1. 治療法としては、「抗うつ薬を主とした薬物療法」と、「認知行動療法」、「リラクセーション法(自律訓練法)」などの心理療法が行われます。
  2. 心身の状態を把握するために、症状に対する日誌をつけると診察や治療に役立つとされています。頭痛に対しては「頭痛日誌」として、痛みの頻度や長さ、強さ、部位、その他の症状などを記録します。

アレキシサイミア(失感情症):

 心身症の機序を理解するための概念として、Sifneos,P.E.(シフネオス)らによって1970年代に提唱された「アレキシサイミア(失感情症)」があります。
 「アレキシサイミア」とは、「自らの感情認知とその表現にかけている状態」をさします。
 自らの感情を自覚・認知したり表現することが不得意で、空想力・想像力に欠ける傾向を持ちます。身体症状や事実関係については執拗に述べるものの、それに伴う感情を言語化することができず、情動の体験と表現が制限されていることを特徴とします。
 神経生理学の観点からは新皮質(知性)と大脳辺縁系・視床下部(情動)が乖離していることによるものと考えられています。また、発達の観点からは、乳幼児期における養育者との情緒応答性の障害に起因するとも考えられています。



慢性疲労症候群

 慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome: CFS)は、ある日突然原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降強度の疲労感と共に、微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感や、思考力の障害、抑うつ等の精神神経症状などが長期にわたって続く疾患です(日本医療研究開発機構 )。
 下記のような症状を6ヵ月以上持続または再発を繰り返すとされます。

  1. 強い倦怠感を伴う日常活動能力の低下(微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感などもある)
  2. 活動後の強い疲労・倦怠感(運動や仕事の後に24時間以上、倦怠感や体調不良がある)
  3. 睡眠障害
  4. 認知機能または起立性調節障害(思考力の障害、抑うつ等の精神神経症状など)

 日本のおける明確なデータは見つけられませんでしたが、公認心理師試験の回答では「男性より女性に多い。」となっています。



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