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心理学用語集: 感覚・視覚

1 - 基礎心理学感覚・知覚 > 21- 感覚・視覚

 ここでは「感覚」やそれに関する法則についてまとめます。
用語:

  1. 感覚の種類(体性感覚等, 受容器・感覚器,感覚モダリティ,共感覚,マスキング現象)
  2. フェヒナーの法則・ウェーバーの法則刺激閾・分別閾
  3. 視覚錐体・桿体順応) /
    色覚 : 三色説(ヤング=ヘルムホルツ説),反対色説(へリング説),段階説(処理の階層性)
  4. 聴覚味覚

感覚とは

 感覚とは、感覚器官が刺激されたとき生じる意識経験をいいます。
 感覚の種類としては下記のようなものがあります。

  1. 視覚,聴覚,味覚,嗅覚
  2. 皮膚感覚:触覚, 痛覚, 温覚, 冷覚
  3. 深部感覚:圧覚等
  4. 運動感覚:筋感覚,自己受容感覚とも呼ばれる(筋・腱・関節の自己受容器に基づく緊張・運動・位置感覚)
  5. 平衡感覚
  6. 内臓(有機)感覚、など
  7. 体性感覚;皮膚感覚,深部感覚,内臓感覚を合わせたもの
受容器と感覚器:

 「受容器」とは、刺激を電気信号に変化する細胞のことであり、「感覚器(器官)」とは、受容器と神経を含むもので、ひとつの機能を果たします。
 例えば、視覚の場合、感覚器は「眼」であり、受容器は「錐体・桿体細胞」です。


感覚モダリティ(感覚様相): 

 感覚モダリティとは、それぞれの感覚器で感知する固有の経験の種類(現象的性質)のことです。感覚モダリティには「光、音、温度、味、圧力、臭い」のモダリティが含まれます。
 異なった受容器を通して生じた感覚的経験はそれぞれ質的に異なります。視覚による経験(絵を見る)は、聴覚による経験(鳴き声)とは当然異なります。


適刺激と不適刺激・共感覚 :

 それぞれの感覚器は、特定の刺激に対して働きます。感覚受容器が感知できない刺激は感知しないため感覚は生じません。感知できる刺激・できない刺激をそれぞれ「適刺激、不適刺激」と言います。
 例) 感覚器が眼の場合は、光は適刺激だが、音は不適刺激。

 一方、ある刺激により、本来生じる感覚以外の感覚が生じることを「共感覚」といいます(1つの物理的刺激によって複数の感覚が生じる)。
 例えば、音楽が流れている時、音が聞こえる(聴覚による経験)だけでなく、色が見えること(視覚による経験)が生じます。
 共感覚は、成人よりも子どもで共感覚が生じやすいことが報告されています。


マスキング現象:

 ある刺激により特定の刺激が妨害される現象のことです。妨害する刺激をマスカー、妨害される刺激をマスキーと呼びます。同時に提示される刺激による「同時マスキング」、前の刺激がマスキングする「順行マスキング」や後からの刺激がマスキングする「逆向マスキング」があります。




フェヒナーの法則とウェーバーの法則:

 Fechner,G.T(フェヒナー)らは、刺激に対する感覚の測定を行い、その法則を研究しました。

Fechner(フェヒナー)の法則:

 「感覚の強さは刺激の強さ(水準)の対数に比例する」という法則です。
 E=KlogR(E:感覚の強さ、R:刺激水準)
 フェヒナーの法則から、刺激がそれ以上増加しても感覚が増加しなくなる刺激量があると考えられ、この刺激量を「刺激頂」といいます。

Weber(ウェーバー)の法則:

 「弁別閾は、刺激量に比例して変化する」という法則です。
 ΔR/R=k (ΔR:弁別閾、R:刺激水準)

刺激閾と分別閾(ベンベツイキ):

 刺激の量が感覚を感じる下限刺激量より小さくても感知しません。感覚が生じる刺激の大きさを「刺激閾」といいます。
 感覚受容器が感知することの「最小限の刺激の差異」のことを「弁別閾(丁度可知差異)」といいます。
例えば、音Aと音Bの大きさが”違う”と感じる時の「音量の差異」が弁別閾です。
 (関連:心理(精神)物理学的測定法




視覚とは

 感覚で最も重要なものが視覚です。視覚は、網膜の感光細胞で光刺激が電気信号に変換され、その信号が大脳皮質後頭野の視覚領に送られることで生じます。
 「中心窩(ちゅうしんか)」は網膜の中で視力がとても鋭敏な一点をさします(ほぼ、錐体細胞からなる)。

錐体と桿体:

 網膜の感光細胞には「錐体(スイタイ)」と「桿体(カンタイ)」があります。

  1. 錐体(細胞):
     網膜の中央部分に密集していて、色覚機能を持ち色識別ができます。
  2. 桿体(細胞):
     網膜上に存在し、暗所での視覚機能(暗所視機能)を担い、感度が高いのが特徴です。

順応(明順応と暗順応):

 刺激閾以上の刺激が与えられても、時間とともに感度/感受性が低下する現象を「感覚の順応」といいます。
 感覚の順応は感覚一般に生じますが、痛覚では軽い痛み以外は順応が生じません。
視覚においては、明るい場所に出たときに生じる順応である「明順応」と、暗い場所に入ったときに徐々に見えなかったものが見えてくる現象の「暗順応」があります。


色覚のメカニズム:

 視覚の重要な要素である色覚のメカニズムには諸説がありますが、最近では「段階説」有力です。

  1. 三色説(ヤング=ヘルムホルツ説)
     光の3原色(赤・緑・青)に対応した受容器の組み合わせで、色覚が生じると考えます。
     視覚現象である混色・補色は説明できますが、対比や残像(残効)の現象を説明できません。
  2. 反対色説(へリング説)
     白/黒、赤/緑、黄色/青の3種の視物質を仮定し、その物質の異化・同化作用で、色覚が生じると考えます。
     視覚現象である対比や残像(残効)は説明できますが、混色・色盲の現象を説明できません。
  3. 段階説(処理の階層性)
     段階説では、「錐体では三色説的処理が行なわれ」、そこから網膜経節細胞(網膜の内側面にある神経細胞で錐体・桿体細胞から情報をうける細胞)までに「反対色説的な処理が行われる」と考えます。三色説と反対色説を組合せたものであり、片方の説では説明ができなかった視覚現象を補完します。
     まず、三色説的処理では、光の波長(長・中・短波長)に対応した3種類の錐体が受容器として機能します(二色型色覚者とは3種類の錐体のうち2種類しか機能しない者をさす)。
     次に、反対色説的処理では、受容した三色的信号が網膜内において反対色の信号に変換されます(赤/緑、黄色/青)。



聴覚とは

 聴覚は、外耳、中耳、内耳、聴神経(バスドラム)、聴覚皮質などの器官を使い、音の信号を神経活動情報に変換され、その信号が大脳皮質の聴覚野(側頭葉など)に送られることで生じます。

  1. 外耳:
     外耳は、耳介(じかい)、外耳道からなる。耳介は、音声の音圧をあげて集音する機能と「音源定位(外空間における音源の位置を特定すること)」に役立つ。
     音源定位には「両耳間時間差」と「両耳間強度差」が用いられる。
  2. 内耳:
     内耳は蝸牛(かぎゅう)、半規管、前庭からなる。蝸牛はリンパ液で満たされ、基底膜、基底膜上にあるコルチ器官を含む。コルチ器官内には「有毛細胞」と呼ばれる感覚器細胞がある。
     音の振動はリンパ液を介して、基底膜を振動させ、コルチ器官の有毛細胞の感覚毛を揺らし、電気信号へと変換される。
     音の周波数は基底膜上での反応の位置として表される(高い周波数は蝸牛の基底部、低い周波数では頂部)。
  3. 人の可聴範囲は周波数が20Hz程度〜20,000Hz程度とされる。2,000Hz〜4,000Hzが最も聴きやすいとされます。
  4. 音の聴覚的な強さである「ラウドネス」の単位は「phon(ホーン/ホン)」。phonは、音の周波数(Hz:ヘルツ)と音圧(dB:デジベル)によって決まる。
     (騒音は、周波数ごとに定められた特性値を音圧レベルのデジベルに足して得られ、デジベルで表現される)


味覚とは

 味覚は、味覚受容器によって感ずる感覚であり、「甘味」、「酸味」、「苦味」、「塩味」、「うま味」の5つを基本味とします。
 舌の味蕾(みらい)とよばれる器官が信号を受容し,その信号は味覚神経系(顔面、舌咽、迷走神経)を介して、視床大脳皮質の味覚野へ伝えられます。




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