ここでは「感覚」やそれに関する法則についてまとめます。
用語:
感覚とは、感覚器官が刺激されたとき生じる意識経験をいいます。
感覚の種類としては下記のようなものがあります。
「受容器」とは、刺激を電気信号に変化する細胞のことであり、「感覚器(器官)」とは、受容器と神経を含むもので、ひとつの機能を果たします。
例えば、視覚の場合、感覚器は「眼」であり、受容器は「錐体・桿体細胞」です。
感覚モダリティとは、それぞれの感覚器で感知する固有の経験の種類(現象的性質)のことです。感覚モダリティには「光、音、温度、味、圧力、臭い」のモダリティが含まれます。
異なった受容器を通して生じた感覚的経験はそれぞれ質的に異なります。視覚による経験(絵を見る)は、聴覚による経験(鳴き声)とは当然異なります。
それぞれの感覚器は、特定の刺激に対して働きます。感覚受容器が感知できない刺激は感知しないため感覚は生じません。感知できる刺激・できない刺激をそれぞれ「適刺激、不適刺激」と言います。
例) 感覚器が眼の場合は、光は適刺激だが、音は不適刺激。
一方、ある刺激により、本来生じる感覚以外の感覚が生じることを「共感覚」といいます(1つの物理的刺激によって複数の感覚が生じる)。
例えば、音楽が流れている時、音が聞こえる(聴覚による経験)だけでなく、色が見えること(視覚による経験)が生じます。
共感覚は、成人よりも子どもで共感覚が生じやすいことが報告されています。
ある刺激により特定の刺激が妨害される現象のことです。妨害する刺激をマスカー、妨害される刺激をマスキーと呼びます。同時に提示される刺激による「同時マスキング」、前の刺激がマスキングする「順行マスキング」や後からの刺激がマスキングする「逆向マスキング」があります。
Fechner,G.T(フェヒナー)らは、刺激に対する感覚の測定を行い、その法則を研究しました。
「感覚の強さは刺激の強さ(水準)の対数に比例する」という法則です。
E=KlogR(E:感覚の強さ、R:刺激水準)
フェヒナーの法則から、刺激がそれ以上増加しても感覚が増加しなくなる刺激量があると考えられ、この刺激量を「刺激頂」といいます。
「弁別閾は、刺激量に比例して変化する」という法則です。
ΔR/R=k (ΔR:弁別閾、R:刺激水準)
刺激の量が感覚を感じる下限刺激量より小さくても感知しません。感覚が生じる刺激の大きさを「刺激閾」といいます。
感覚受容器が感知することの「最小限の刺激の差異」のことを「弁別閾(丁度可知差異)」といいます。
例えば、音Aと音Bの大きさが”違う”と感じる時の「音量の差異」が弁別閾です。
(関連:心理(精神)物理学的測定法)
感覚で最も重要なものが視覚です。視覚は、網膜の感光細胞で光刺激が電気信号に変換され、その信号が大脳皮質後頭野の視覚領に送られることで生じます。
「中心窩(ちゅうしんか)」は網膜の中で視力がとても鋭敏な一点をさします(ほぼ、錐体細胞からなる)。
網膜の感光細胞には「錐体(スイタイ)」と「桿体(カンタイ)」があります。
刺激閾以上の刺激が与えられても、時間とともに感度/感受性が低下する現象を「感覚の順応」といいます。
感覚の順応は感覚一般に生じますが、痛覚では軽い痛み以外は順応が生じません。
視覚においては、明るい場所に出たときに生じる順応である「明順応」と、暗い場所に入ったときに徐々に見えなかったものが見えてくる現象の「暗順応」があります。
視覚の重要な要素である色覚のメカニズムには諸説がありますが、最近では「段階説」有力です。
聴覚は、外耳、中耳、内耳、聴神経(バスドラム)、聴覚皮質などの器官を使い、音の信号を神経活動情報に変換され、その信号が大脳皮質の聴覚野(側頭葉など)に送られることで生じます。
味覚は、味覚受容器によって感ずる感覚であり、「甘味」、「酸味」、「苦味」、「塩味」、「うま味」の5つを基本味とします。
舌の味蕾(みらい)とよばれる器官が信号を受容し,その信号は味覚神経系(顔面、舌咽、迷走神経)を介して、視床、大脳皮質の味覚野へ伝えられます。