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心理学用語集: ヒューマンエラー・安全文化

1 - 基礎心理学産業心理学 >68- ヒューマンエラー・安全文化

 ここでは、産業心理学や認知心理学に関連する「ヒューマンエラー」や「安全文化」、「事故発生のモデル」について説明します。

用語:ヒューマンエラー安全文化事故発生モデルハインリッヒの法則スイスチーズスノーボール



ヒューマンエラー

 「ヒューマンエラー」とは、人為的な過誤やミスのことです。人間の計画された一連の精神的・身体的活動が、「意図した結果に至らなかった」ものであり、他の偶発的な原因や機械側の原因は含まれません。

 ヒューマンエラーには、その結果から下記の5つの種類があるとされています。

  1. 省略エラー(オミッション・エラー):
     必要な仕事や手続きを「遂行しないこと」(例:Aのスイッチを忘れて押さなかった)。
  2. 誤処理エラー(コミッションエラー):
     必要な仕事や手続きの「遂行の誤り」(例:うっかり、Aの代わりにBのスイッチを押した)。
  3. 不当処理エラー:
     不必要なことを「遂行したこと」(例:AだけでなくBのスイッチを押した)。
  4. 順序エラー:
     必要な仕事や手続きの「順序の誤り」(例:Aを先に押すべき代わりに、Bのスイッチを先に押した)。
  5. タイミング・エラー:
     必要な仕事や手続きの「遅れや早すぎ」(例:Aのスイッチを押すタイミングが遅れてしまった)。

 マニュアル等に定められた通りに行動したにも関わらず、事故や問題が発生した場合は、狭義においてはヒューマンエラーにはなりません。
 ヒューマンエラーの原因を引き起こす要因としては、「認知ミス(錯誤)」、「能力不足・知識不足(誤判断、動作ミス)」、「失念・忘却・気の緩み」、「無理難題な状況」などがあるとされます。



安全文化

 安全文化とは、組織やグループで共有されている安全に関する信念や価値とされます。
 安全風土とは、安全行動を誘発する組織の雰囲気とされます。
 安全文化に関して「J.T.Reason」は安全文化を構成要素として下記の4つを提唱しました。

  1. 報告できる文化:
     自分自身のミスやエラーなど自分に不利な事柄も報告する
  2. 正義の文化:
     意図的で悪意の感じられる不安全行動に関しては厳しく罰する
  3. 柔軟な文化:
     予想し得ない事態に直面した時、マニュアルに頼らず臨機応変に対応できる
  4. 学習する文化:
     過去の事故やニアミス事例に対応して組織を変化させている


災害・事故発生のモデル

 ここでは災害や事故発生に関するモデルをまとめます。

  1. 「事故」とは一般的には、予期せず、人が外傷を負う事や生命が失われる事、あるいは物が損傷する等が発生するような出来事とされます。
  2. 「インシデント」とは、患者の診療やケア等において、本来あるべき姿からはずれた行為や事態の発生と定義されます。
  3. 「ヒヤリ・ハット」とは、重大な災害や事故には至らないものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例の認知をいいます。
ハインリッヒの法則:

 ハインリッヒの法則とは、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリ・ハットが存在するというものです。
 ハインリッヒ(Heinrich)が330件の災害・事故を分析した結果から導きました(重大1件、軽微29件、ヒヤリ・ハット300件)。


スイスチーズモデル:

 スイスチーズモデルとは、Reason.J(リーズン)によって提唱された事故発生のモデルです。
 このモデルでは「事故とは、様々な危険に対処する階層的な防護壁の穴をすり抜けた場合に生じる」と考えます。
 防護壁をスイスチーズ(穴が空いている)と見立てて、この名前がついています。
 リーズンは事故の原因を「個人的問題」と「構造的問題(システムの欠陥)」に区別できるとしました。


スノーボールモデル:

 スノーボールモデルとは、山内らによって提唱されたモデルであり、医療組織で起こる事故は、エラーの発生が患者に近づくにつれて危険が増大していくというものです。
 雪玉が転がり落ちるにつれて、大きくなっていくイメージからこの名前がついています。
 小さなエラーの段階でチェックを働かせて防ぐことができれば、大きな事故にはつながらないと言うことができると思います。



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