ここでは、「労働者管理法」および「ワークモチベーション理論」について説明します。
用語:
産業心理学においては、労働者の作業環境、作業効率、人間関係などの幅広く扱います。
労働者のや作業効率に関する代表的な研究としては、Taylor,F.W.の「科学的管理法」と、Mayo,G.E.の「ホーソン研究」が挙げられます。
「科学的管理法」とは、Taylor,F.W.(テイラー)によって生み出された労働者管理の方法論です。
労働者の負荷のかからない一般的な作業条件や作業量や賃金率を体系的に設定するシステムであり、「課業管理」・「作業の標準化」・「作業管理のために最適な組織形態」の3つを原理とします。
「ホーソン研究」は、Mayo,G.E.(メイヨ―)によって行われた研究であり、ホーソン工場にて労働環境、作業時間、人間関係などの要因と生産能率との関連を調べたものです。
ホーソン研究の結果からは、労働者の生産能率は、職場における「個人の人間関係や目標意識に左右される」ということが示されました。
労働者間のインフォーマルな人間関係が、労働者の作業の「モラール(士気)」を高め、それが生産能率に影響を与えるとされます。
ホーソン研究によって「経営管理論」だけでなく「人間関係論」の視点がもたらされました。
ホーソンの研究から発見された現象として「ホーソン効果」があります。
「ホーソン効果」とは、患者が信頼する治療者(医師など)に期待されていると”感じること”で、行動の変化を起すなどして、結果的に病気が良くなる現象をさします(良くなったように感じる、良くなったと治療者に告げるを含んでいる)。
統計上において症状が改善されたようにみえることを、特に「統計上のホーソン効果」とよび、プラセボ効果の一部として統計上扱われる場合があるとされています。
ホーソン効果は実験者効果(実験者が被験者の行動に及ぼす現象)に類似していますが、変化を起こす原因が異なります。実験者効果は「実験者のもつ期待」が被験者の行動に変化を及ぼしますが、ホーソン効果は「被験者が他者からの期待を感じている事」が被検者の行動に変化を及ぼすと言えます。
ワークモチベーションとは労働者が「目標に向けて行動を方向づけ、活性化し、そして維持する心理的プロセス」と定義されます。
ワークモチベーションに関する理論は多数ありますが、ここでは、「内容理論」と「過程理論」に分類し、代表的な理論をまとめます。
「X-Y理論」とは、McGregor,D.(マクレガー)によって提唱された動機づけに関わる経営手法に対する理論です。
マズローの欲求階層説をもとにしながら、人間をX理論とY理論から捉えたマネージメント方法となります。
「動機づけ-衛生要因理論」とは、Herzberg,F(ハーズバーグ)によって提唱されたモチベーションの理論です。
ワークモチベーションは、「動機づけ要因」と「衛生要因」の2要因の両方に影響をうけるとされます。
「衡平理論(公平理論)」とは、Adams,J.S.(アダムス)によって提唱されたモチベーションの理論です。
職場において、自分と他者の「仕事量に対する対価(報酬)」を比較し、不公平さを感じる場合、それを解消し公平となるように動機づけられるという理論です。
「自分得た結果・報酬」÷「自分の貢献」=「他者の得た結果・報酬」÷「他者の貢献」
となるように動機づけられます。
「期待理論」とは、Vroom(ブルーム)によって提唱されたモチベーションの理論です。
ワークモチベーションは、「期待(expectancy)」と「誘意性(value)」の積(かけ算)で表されます。
誘意性は、さらに行動の結果によってさらにもたらされる「二次的な結果(例:賃金や昇進など)の魅力(二次的な結果の誘意性)」と行動の期待が二次的な結果をもたらす上で「役立つ度合い(道具性:instrumentality)」の積として表現されます。