ここでは、「知的障害(知的能力障害)」と「限局性学習症(限局性学習障害)」についてまとめます。
用語:
知的障害の定義と内容を、ICD-10とDSM-5のそれぞれについて記載します。
以前は、「精神遅滞(MR:Mental Retardation)」という用語が使われていましたが、現在は知的障害・知的能力障害に代わっています。
ICD-10の定義によると、知的障害とは「精神の発達停止、あるいは発達不全の状態であり、発達期に明らかになる全体的な知的水準に寄与する能力の障害(認知、言語、運動および社会的能力の障害)」とされます。
ICD-10や日本の行政上では、知的障害は発達障害に含まれません。
DSM-5では、「知的能力障害」という名称であり、「発達期に発症し、概念的、社会的、および実用的な領域における知的機能と適応機能の両面の欠陥を含む障害である」とされています。
診断基準は、「A.知的機能の欠陥」「B.適応機能の欠陥」「C.発達期の間の発症」の3つです。
DSM-5では、知的能力障害は「神経発達症群」に含まれます。
ICD-10や日本の行政上では、知的障害は、「18歳以前(おおむね18歳まで)」の知能低下が対象となります。
先天性の要因のみならず、事故などで生じた後天的な知能低下も知的障害となります。19歳以上の知能低下は若年性認知症となります。
「ICD-10」では、重症度は知能検査にもとづく知能指数IQの結果により分類されます。
平均値より2標準偏差(2*15=30点)より低い場合に下記のように判定されます。
一方、「DSM-5」では、重症度はIQではなく、「概念領域・社会領域・実用的領域」における知的機能と適応機能の両面から、重症度が分類されています(軽度、中等度、重度、最重要度)。
知的障害のこどもに対する援助や対応としては、できる事を増やしたり、得意な面を伸ばすことを優先します。
「スモールステップによる成功体験を積み重ねる」、「社会生活に必要な技能や習慣を身に付ける」、「具体的で生活に密着した実用的な活動の実施」といった事を重視します。記憶に負荷をかけないように、具体的、簡潔なコミュニケーションが重要となります。
知的障害児(者)に対しては、都道府県知事又は指定都市市長が交付する「療育手帳制度」があり、支援と相談を受けることができます。療育手帳の別名は、愛の手帳(東京都)などが有名です。
法律には定められておらず、ガイドラインとして各都道府県知事等に通知された後、各自治体が独自で行っている施策です。(参照:各障害者手帳制度の概要)
18歳以上も取得可能であり、療育手帳の取得可否は、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所で判定します。
DSM-5の限局性学習症とは、「知的能力に障害は認められないにもかかわらず、読字、書字、計算などの特定の知的学習能力において障害があること」です。医学的には、微細脳機能不全(機能損傷)が原因とされていますが、決定的ではないとされています。
DSM-5では、以下の症状が少なくとも1つ存在し、6カ月以上持続していることが基準となっています。
「学習障害」は、文科省の定義では下記の3つを含むこととされています。
「ディスレクシア(ディスレキシア)」は、学習障害の一種で、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害です(知的発達の遅れはない、視覚・聴覚障害などはない、環境的要因は原因ではない、充分な教育歴と本人の努力はある)。
読字障害、識字障害、失読症、難読症などが含まれ、発達性読み書き障害、発達性ディスレクシアとも呼ばれます。
ICD-10に規定された診断名であり、DSM-5では、限局性学習症のなかで「読字に限定した症状」を示すタイプの代替的な用語としてディスレクシア(dyslexia)を使用しても良いとなっています。
学習障害は、全般的な知能発達に遅れがないことや、単なる怠けと間違えられるため発見が難しいとされます。知能検査や行動観察などから査定が必要となります。
学習障害のこどもに対する援助としては、こどもの不得意な部分を得意な部分でカバーできるような環境整備が重要となります。書字に問題があるならば、試験にはパソコンを用いるなどの合理的配慮をおこないます。
また、感覚統合療法やソーシャルスキルトレーニングなどが用いられます。
*感覚統合療法:作業療法における訓練技法のひとつであり、複数の感覚を統合し反応として動作できるための訓練。感覚の統合の障害を限局性学首相の原因と捉えたアプローチ。