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公認心理師・臨床心理士・心理職(心理系公務員)を目指す方々のための「心理学用語」を説明したサイトです

公認心理師試験用語集 : 資質向上の責務

5 - 法律・行政公認心理師法 > 13- 公認心理師の資質向上

 公認心理師法の43条には、資質向上の責務が定められています。生涯学習自己研さんと相互研さんなどに代表されます
公認心理師の資質の向上の目的としては、
・「生涯学習を通した職業的成長のプロセスを支え、心理職としての技能を高め、知識を広げ、現場における要求に効果的に応えるため」
・「仕事に対する関心とやる気を維持し、職業的なウェルビーイングを高めるため」
に必要であるとされます。

資質の向上には、心理職の「コンピテンシー」(ここでは実践的スキルと姿勢と換言)に応じた自己の課題を発見し、養成していくことが求められるとされます。その内容について説明します。



心理職の「コンピテンシー」

コンピテンシーの枠組みには、「基盤コンピテンシー(7つ)」・「機能コンピテンシー(7つ)」「職業的発達」という3次元(3軸)から構成される立体的モデルがあります。

基盤コンピテンシー:

 基盤コンピテンシーとは、姿勢、価値観、行動規範、倫理的姿勢などにあたり、下記の7つが挙げられます。

  1. 専門家としての姿勢
    心理職の価値観と倫理観に基づく言動
  2. 反省的実践
    自己の言動を振り返り、他者に対する自己の影響の認識や、自身の評価をする
  3. 科学的知識と方法
    科学的な研究から得られた知識を尊重し、効果的に応用する
  4. 治療関係
    個人やグループ、共同体と効果的に意味のあるやり方で関係を作る
  5. 文化的ダイバーシティ
    様々な価値、文化的な背景などをもつ個人、集団に対する敏感さと配慮
  6. 多職種協働
    他の専門家と効果的に共同作業ができる
  7. 倫理・法的基準と政策
    倫理的概念や法に関する知識を個人や集団に対して適用できる
機能コンピテンシー:

 機能コンピテンシーとは、専門的な技能にあたり、下記の7つが挙げられます。

  1. 心理的アセスメント
    客観的な心理的アセスメントと解釈、手法の理解と活用
  2. 介入
    クライエントの特徴にあった介入計画、知識とスキル、成果の評価
  3. スーパービジョン・教育
    専門的知識やスキルの教授
  4. 研究と評価
    研究とその方法方法への理解。知見の効果的な活用
  5. 管理・運営
    メンタルヘルスサービス・事業の管理と組織運営への関わり
  6. コンサルテーション
    リファー元に対する専門家としての助言や支援
  7. アドボカシー
    社会、政治、経済、文化的に影響を与え、個人、集団、システムの変化を促進
職業的発達:

 職業的発達は、訓練と実践の水準を示します。
立体的モデルでは、「博士課程教育」、「博士課程の研修」、「博士課程後のスーパーヴィジョン」、「就職後の研修」、「継続的なコンピテンシー」の段階があります。



反省的実践とスーパービジョン
反省的実践:

 コンピテンシーを高めるには反省的実践が重要であるとされています。
 反省的実践とは、常に自身の能力と技能を見定め、必要に応じてその活動を修正していくことです。
そして、反省的実践は、1人で行うだけでなく、他者からフィードバックを得る活動を通して起こるとされており、
反省的実践の方法としては、「スーパービジョン」、「教育分析」、「キャリアポートフォリオの作成(自己俯瞰)」などが挙げられます。


スーパービジョン」: 
 スーパービジョンとは、経験豊かな心理士などである「スーパーバイザー」が、経験の浅い心理士である「スーパーバイジー」に対して行う専門的指導のことです。
 スーパービジョンは、スーパーバイザーとの対話によって、助言や知識だけを得るだけでなく、関係性のモデリング・体験学習の要素もあります。
 スーパービジョンは、下記の教育的・管理的・支持的機能を果たします。

  1. 教育的機能:
     援助者としての知識・技能・態度などを指導し成長を促す。
  2. 管理的機能:
     スーパーバイジーの業務の管理、監督、調整を行う。
  3. 支持的機能:
     スーパーバイジーの専門的な援助活動における心理的援助を行う。

 スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係は、「カウンセラーとクライエントの関係の反復である」考えられ、両者の関係が実際のケースに様々な影響を及ぼすとされます。これは「パラレルプロセス並行プロセス)」と呼ばれます。
 スーパーバイザーは、ケースに対する一定の責任ももつため、スーパーバイザーの研究指導者などを兼ねるといった多重関係は避けることが望ましいとされています。
 スーパービジョンは、「個人対個人」による面接が基本ですが下記のような種類があります。

  1. 個人対個人による面接
  2. 複数のスーパーバイジーによる「グループ・スーパービジョン」
  3. スーパーバイジー同士がお互いに助言しあう「ピア・スーパービジョン」
  4. クライエントとスーパーバイジーの面接中に直接スーパーバイザーが指示を出す「ライブ・スーパービジョン」

教育分析」: 
 心理職自身が個人療法を受けることを精神分析では教育分析と呼びます。自身の問題や心理的特徴について理解することができます。


キャリアポートフォリオの作成(自己俯瞰)」: 
 自分自身を俯瞰するために、自分のキャリアや業績を整理します。また、コンピテンシーの各領域に関して自己評価や課題を記載します。
(参照:▼ 自己分析について)



職業的発達段階の理解

 職業的発達段階を理解することで、自分自身の段階を評価し、その時に直面する課題の対応にも役立つとされます。また、職長的発達を促すだけでなく、「仕事に対する関心とやる気を維持し、職業的なウェルビーイングを高めるためのセルフケアとしても効果がある」と考えられています。
 臨床家の職業的発達には下表の6期モデルがあります。

発達段階内容
第1期:
素人援助期
心理援助の訓練を受ける前の状態
第2期:
初学者期
訓練をうけることへの熱意はあるが、自信に乏しく不安が強い。学ぶ対象の情報量に圧倒される
第3期:
上級生期
(博士課程相当)
1人前になろうと完ぺき主義的になりがち。臨床家を理想として学ぶ
第4期:
初心者専門家期
(経験5年程度)
受けた訓練を見直す。クライエントとの関係性を重視し始める
第5期:
経験を積んだ専門家期
(経験15年程度)
自己の価値観・特性を反映させていく。柔軟で粘り強いアプローチがとれる
第6期:
熟練した専門家期
(経験20年以上)
職業的人生を振り返り、満足を感じる一方、知識の発展に冷めた見方や職業への関心が薄れる

効果的な心理職の特徴の理解:

 効果的な心理職の特徴を理解しておくことは、職業的発達のおける自己理解に役立つと考えられます。
 マスターセラピストとされる臨床家は、「曖昧さ、複雑さなどを求め、そのような知的挑戦を歓迎する姿勢」を持っているとされます。
 具体的には、「学ぶことに貪欲で、観察力を磨き、感受性を高めることに力を注ぐ」、「他者からのフィードバックを求めそれを歓迎する」という特徴があります。




生涯学習

 生涯学習とは、「個人が知識、価値観、スキル、理解を職業的人生を通して身に着け、それらを自信と創造性、喜びをもって、すべての役割や状況、環境において応用できるように、刺激し、エンパワーメントする継続的で支持的なプロセス」と定義されています。

生涯学習(継続的訓練)の種類として下記の4つを挙げます。

  1. フォーマルな継続学習:
     専門団体によって正規の研修として位置づけられる
  2. インフォーマルな継続学習:
     専門誌や専門書を読む
  3. 偶発的学習:
     講師をすること、専門団体の委員などを務めること
  4. ノンフォーマルな学習:
     講演会や事例検討会への出席

 *ノンフォーマルな学習とは、決まったカリキュラムや認定などが存在しない学習状況でフォーマルとインフォーマルの中間に位置します。




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