公認心理師の資質向上に関する事項をまとめます。
用語:
公認心理師法の43条には、資質向上の責務が定められています。生涯学習、自己研さんと相互研さんなどに代表されます。
公認心理師の資質の向上の目的には、下記のような内容が挙げられます。
資質の向上には、心理職のコンピテンシーや職業的発達段階に応じた自己の課題を発見し、スーパービジョン等の反省的実践や生涯学習を通して養成していくことが求められるとされます。
コンピテンシーとは、効果的で優れた行動につながる特性を意味しますが、ここでは「実践的スキルや姿勢・行動」といっても良いかもしれません。
心理職のコンピテンシーの枠組みには、「基盤コンピテンシー(7つ)」・「機能コンピテンシー(7つ)」「職業的発達」という3次元(3軸)から構成される立体的モデルがあります。
基盤コンピテンシーとは、姿勢、価値観、行動規範、倫理的姿勢などにあたり、下記の7つが挙げられます。
機能コンピテンシーとは、専門的な技能にあたり、下記の7つが挙げられます。
職業的発達は、訓練と実践の水準を示します。
立体的モデルでは、「博士課程教育」、「博士課程の研修」、「博士課程後のスーパーヴィジョン」、「就職後の研修」、「継続的なコンピテンシー」の段階があります。
コンピテンシーを高めるには反省的実践が重要であるとされています。反省的実践とは、常に自身の能力と技能を見定め、必要に応じてその活動を修正していくことです。
反省的実践は、1人で行うだけでなく、他者からフィードバックを得る活動を通して起こるとされており、その方法としては、「スーパービジョン」、「教育分析」、「キャリアポートフォリオの作成(自己俯瞰)」などが挙げられます。
また、カウンセラーの訓練法には「対人プロセス想起法」(面接の録音あるいは録画データを視聴しながら、その時の感じや考えを振り返り、対人プロセスに対する気づきを高める方法)などが用いられます。
スーパービジョンとは、経験豊かな心理士などである「スーパーバイザー」が、経験の浅い心理士である「スーパーバイジー」に対して行う専門的指導のことです。
スーパービジョンは、スーパーバイザーとの対話によって、助言や知識だけを得るだけでなく、関係性のモデリング・体験学習の要素もあります。
スーパービジョンは、下記の教育的・管理的・支持的機能を果たします。
スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係は、「カウンセラーとクライエントの関係の反復である」考えられ、両者の関係が実際のケースに様々な影響を及ぼすとされます。これは「パラレルプロセス(並行プロセス)」と呼ばれます。
スーパーバイザーは、ケースに対する一定の責任ももつため、スーパーバイザーの研究指導者などを兼ねるといった多重関係は避けることが望ましいとされています。
スーパービジョンは、面接が基本ですが下記のような種類があります。
心理職自身が個人療法を受けることを精神分析では教育分析と呼びます。自身の問題や心理的特徴について理解することができます。
自分自身を俯瞰するために、自分のキャリアや業績を整理します。また、コンピテンシーの各領域に関して自己評価や課題を記載します。
職業的発達段階を理解することで、自分自身の段階を評価し、その時に直面する課題の対応にも役立つとされます。また、職長的発達を促すだけでなく、「仕事に対する関心とやる気を維持し、職業的なウェルビーイングを高めるためのセルフケアとしても効果がある」と考えられています。
臨床家の職業的発達には下表に記した「M.H.Rφnnestad と T.M.Skovholt」による6期モデルがあります。
発達段階 | 内容 |
---|---|
第1期: 素人援助期 | 心理援助の訓練を受ける前の状態 |
第2期: 初学者期 | 訓練をうけることへの熱意はあるが、自信に乏しく不安が強い。学ぶ対象の情報量に圧倒される |
第3期: 上級生期 (博士課程相当) | 1人前になろうと完ぺき主義的になりがち。臨床家を理想として学ぶ |
第4期: 初心者専門家期 (経験5年程度) | 受けた訓練を見直す。クライエントとの関係性を重視し始める |
第5期: 経験を積んだ専門家期 (経験15年程度) | 自己の価値観・特性を反映させていく。柔軟で粘り強いアプローチがとれる |
第6期: 熟練した専門家期 (経験20年以上) | 職業的人生を振り返り、満足を感じる一方、知識の発展に冷めた見方や職業への関心が薄れる |
効果的な心理職の特徴を理解しておくことは、職業的発達のおける自己理解に役立つと考えられます。
マスターセラピストとされる臨床家は、「曖昧さ、複雑さなどを求め、そのような知的挑戦を歓迎する姿勢」を持っているとされます。
具体的には、「学ぶことに貪欲で、観察力を磨き、感受性を高めることに力を注ぐ」、「他者からのフィードバックを求めそれを歓迎する」という特徴があります。
生涯学習とは、「個人が知識、価値観、スキル、理解を職業的人生を通して身に着け、それらを自信と創造性、喜びをもって、すべての役割や状況、環境において応用できるように、刺激し、エンパワーメントする継続的で支持的なプロセス」と定義されています。
生涯学習(継続的訓練)の種類として下記の4つを挙げます。
*ノンフォーマルな学習とは、決まったカリキュラムや認定などが存在しない学習状況でフォーマルとインフォーマルの中間に位置します。