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公認心理師試験用語集 : 公認心理師の職業倫理

5 - 法律・行政公認心理師法 > 12- 公認心理師の職業倫理

 公認心理師としての職業倫理について説明します。
用語: 職業倫理の種別 / 多重関係 / 保護義務 / 秘密保持 / インフォームド・コンセント


職業倫理の種別

職業倫理には、「命令倫理」と「理想追求倫理」の二つのレベルがあるとされます。
 命令倫理とは、「最低限の基準に従って行動すること(しなければならない・してはならないこと)」をさします。
 理想追及倫理とは、「専門家としてめざす最高の行動規範」をさします。

倫理には7つの原則があります。7原則を「A 関わり方・態度」「B 専門範囲の理解」「C 秘密保持とインフォームド・コンセント」に分類してまとめました。

分類 原則
A 関わり方・態度 1. 相手を傷つけない、傷つけるようなおそれのあることをしない。(相手を見捨てない、同僚の被倫理的な行動への指摘など)
2. 相手を利己的に利用しない(多重関係を避ける、利益誘導とされるリファーの禁止など)
3. 一人ひとりを人間として尊重する(相手を欺かない、自身の感情をある程度開示するなど)
4. 全ての人々を公平に扱い、社会的な正義と公正・平等の精神を具現する(差別を行わないなど)
B 専門範囲の理解 5. 十分な教育・訓練によって身につけた専門的な行動の範囲内で、相手の健康と福祉に寄与する。(効果のある定められた技法の利用、心身の健康の維持、適切なリファーなど)
C 秘密保持とインフォームド・コンセント 6. 秘密を守る(秘密保持の原則と例外、クライエントの承諾など)
7. インフォームド・コンセントを得、相手の自己決定権を尊重する(十分な説明による本人の合意とその実施)


職業倫理の留意すべき事項

職業倫理の「A 関わり方・態度」、「B 専門範囲の理解」、「C 秘密保持とインフォームド・コンセント」に分類において留意すべき事項をまとめます。

A-1: 多重関係

 多重関係とは「複数の専門的関係性の中で業務を行っている状況」や「専門家と、それ以外の明確・意図的な役割を持っている状況」をさします。
 後者の例としては、「カウンセラーとクライエント、職場での上司の部下」の両方の関係を持つことが挙げられます。
 性的多重関係者を含む問題はもっとも多い問題とされており、非性的多重関係の連続線上にあるとされています。
 また「関係者への利益誘導」(例:利害関係のある機関へのクライエント紹介)と「商取引・物品交換」なども多重関係に含まれます。

 多重関係の弊害としては、下記のような事が考えられます。

  1. クライエントとの関係において、中立性や客観性が侵され、利害の対立や個人的な意見がからむ恐れがある。
  2. 以前から知っている人間に対しては、予断や偏見を持つ可能性がある。
  3. クライエントを一層弱い立場に陥れる可能性がある。
  4. クライエントが十分な自己開示ができなくなる。
A-2: 公認心理師が不在時の対応

 要心理支援者を傷つける恐れのある言動として「相手を見捨てること」が挙げらます。具体的な例として、公認心理師の不在があります。
 不在には、「時間的余裕がある場合(退職、育児休暇など)」と、「突然の不在の(急病、事故など)」の2種類がありますが、それぞれに対応が必要となります。

時間的余裕がある場合:
 早期に要心理支援者に説明し、不在の意味や影響、目標達成の状況、今後の課題、リファーや終結などを話し合います。

突然の不在の場合:
 職場の同僚が要心理支援者の意思を尊重した対応を行います。予め、その組織としての対応についてマニュアルを作成しておくことや、対応の内容について要心理支援者と話し合い、希望する対応方法を明確にしておく必要があります。

B-1: 専門範囲内の理解

 自身の専門的能力の範囲を超えた要心理支援者を支援することが、症状の悪化をもたらす要因という報告もあります。
 専門的能力の範囲内で支援を行うためには、的確に心理的アセスメントを行い、自分自身が対応できる範囲内の事柄なのかを迅速に判断する必要がありますが、その判断には、「1)注意の標準」と「2)教育・訓練・経験に基づく専門的能力」があるとされます。

【1)注意の標準
 「注意の標準」とは、「専門的な職業に従事する者としての基準」であり、それに基づき専門範囲内かどうか判断を行います。
 公認心理師の「注意の標準」の判断基準となるのは、国内外の学会等が作成している「ガイドライン」をさします。(例えば、統合失調症に対するガイドラインや、認知行動療法のガイドラインなど)
 公認心理師は、注意の標準をその時点の求められる水準に達しているように、新たなる知識や技術を修得やガイドラインを理解しておく必要があります。

【2)教育・訓練・経験に基づく専門的能力
 自身の教育(座学教育)、訓練(実習)、経験(スーパーヴィジョンを受けて得られた実務経験、専門的経験)に基づく専門的能力によって、専門範囲内かどうかの判断を行います。
 自身の専門的能力の範囲外と判断した場合は、他の専門家にリファーするなどの処置をとり、リファーは、「できるだけ早い時期、可能な限り初回の時点」で行う必要があります。
 そのためには、初回面接時点における適切な心理的アセスメントが不可欠です。また、複数のリファー先を公認心理師が提示して、要心理支援者が次の機関・専門家を自身で決めることができるようにします。


B-2: 保護義務(自傷・他害の危機への対応)

 保護義務(警告義務)とは、自傷・他害の明確で切迫した危機があり、クライエント自身と他者の両方を含んだ犠牲者となり得る人に対して、専門家が果たすべき義務です。

  1. 犠牲者となり得る人に対してその危険について警告する。
  2. 犠牲者となり得る人に対して危険を知らせる可能性のある人たち(家族など)に警告する。
  3. 警察に通告する。
  4. 他人、その状況下で合理的に必要とされる判断方法を、どのような方法であっても実行する。
C-1: 秘密保持

 秘密の定義には、法的と倫理的に内容の違いがあります。
 法的な「秘密」とは、「本人が隠しておきたいと考えることだけでなく、隠すことに本人が実質的利益のあると客観的に認められる事柄」とされます。
 職業倫理的な「秘密」とは、「本人が専門家に対する信頼を基にして打ち明けた事柄」とされます。秘密の価値の判断は含まれず、法的な秘密より範囲が広いです。

( 補足#1: 要配慮個人情報


 秘密保持とは、業務を通してクライエントから得た個人情報や秘密を第3者に開示しない事です。個人情報等の安全な管理も含まれます(電子データや紙データ・ファイル管理)。
 支援にあたり、秘密保持がなされないと「要心理支援者が安心して話ができない」、「援助要請を諦め、孤立化を招く恐れがある」などの弊害やリスクがあるため、心理的援助には不可欠とされます。
 公認心理師法第41条では秘密保持義務が定められています。

 第3者へ情報開示を行う場合には「クライエントの承諾」が必要となります。但し、秘密保持の例外としては、下記のような、クライエントの承諾を得る事が困難な場合や、法令の遂行に支障を及ぼす場合といった「正当な理由」がある場合とされます。

  1. 自傷・他害の恐れがある状況(虐待の恐れも含まれる)
  2. 法による定めがある場合や、医療保険による支払いが行われる場合
     児童虐待防止法の通告義務、個人情報保護法での「本人の同意を得ることが困難な場合」(意識不明など)など
  3. (直接的にクライエントの支援に関わっている専門家同士で話し合う場合。例:精神科内や相談室内のケース・カンファレンス等)

 但し、専門家同士で話し合う場合は、専門家同士で「秘密」の扱いに違いがあるため、法律上課題があるとされています。よって、情報共有する場合は、クライエント本人に情報共有する理由と目的を伝えて、同意を得ること(インフォームド・コンセント)が必須です。

 クライエントによる明確的な意思表示がある場合や、専門家同士での情報共有のためにクライエントから情報開示の同意を得る場合は、「誰に(開示対象者)」・「何を(対象範囲)」・「何のために(目的)」を明確にして吟味することが必要とされます。


C-2: インフォームド・コンセント

 インフォームド・コンセントとは、クライエントが十分な情報を得たうえで医療行為などに合意することです。
 インフォームド・コンセントは、「クライエントの権利を尊重する・情報の扱いについて明確にする」という職業倫理的の観点だけでなく、「クライエントからの評価や信頼を高め、心理的援助に対するクライエントの理解を促進する」という心理的支援の実践においても不可欠とされます。

インフォームド・コンセントの具体的な内容としては、下記の点があげらます。

  1. 援助の内容・方法について(目的、形態、方法、効果とリスクなど)
  2. 秘密保持について(秘密保持の方法と限界)
  3. 費用について
  4. 時間的側面について(時間、場所、期間、予約など)
  5. 公認心理師の訓練などについて(訓練・経験、資格、職責範囲、理論的な立場、当該相談機関の規定など)
  6. 質問・苦情などについて(苦情の方法、心理師の変更や中止など)
  7. その他(多職種との連携方法など)


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