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公認心理師試験用語集 : 児童福祉法

5 - 法律・行政児童に関する法律 > 31- 児童福祉法

 ここでは、児童に関する法律である「児童福祉法」についてまとめます。
用語:

  1. 児童相談所社会的養護(永続性) / 要保護児童対策地域協議会
  2. 児童福祉施設家庭支援専門相談員自立支援計画(ケアプラン) / 代替養育の現状(児童養護施設等のデータ)
  3. 乳児家庭全戸訪問事業


児童福祉法の概要と児童相談所

 児童福祉法とは、児童の健全な育成、福祉の保証とその積極的増進を理念とし、児童福祉を担う公的機関、各種施設や、職種、児童福祉事業等に関する規定がされた法律です。(1947年・昭和22制定)
 児童福祉法は、1989年に国際連合で採択され、1994年に日本が批准した「子どもの権利に関する条約」の精神が反映されています。
 児童福祉法における児童の定義は、「18歳未満」のものをさします(児童福祉法4条)。

児童相談所:

 児童相談所とは、各都道府県に設けられた児童福祉の専門機関であり、児童に対して主に「相談機能」「一時保護機能」「措置機能」「民法上の権限」という4つの機能などを持っています。

  1. 相談機能
     児童の福祉に関するあらゆる相談を受け、必要に応じて専門的な角度から総合的に調査、診断、判定し、処遇方針を定め、関係機関等を活用して、一貫した児童の処遇を行います。
  2. 一時保護機能・安全確保:
     必要に応じて児童を家庭から離して一時保護する機能を持ちます(親権者等の同意は不要)。また一時保護の解除後も安全確保の措置を行います。
  3. 措置機能
     都道府県知事の委任を受け、児童や保護者を児童福祉司などに「指導させる措置」や「代替養育などの措置」(児童を児童福祉施設に入所させる、里親、保護受託者に委託するなど)を行います(措置には原則親権者等の同意が必要)
     子どもが児童福祉施設等に入所した後も、その施設、保護者等との接触を保ち、適切な援助を継続的に行います。措置の解除は、措置停止(一次的な家庭への復帰など)を経てから行うこととされています。
  4. 民法上の権限
     民法に基づき、児童相談所は親権者の親権喪失宣言の請求や、後見人の選任と解任の請求を「家庭裁判所」に対して行うことができます。
     親権喪失制度は「著しい虐待を行うなどで親権者として不適当と認められた場合、親権が喪失する制度」であり、「親権の一時停止制度」とは、一定期間親権を停止して、その間後見人が子供を監護できる制度です。
     親権の喪失・停止は「家庭裁判所(裁判官)」が行う事ができます。

 2019年の児童虐待防止法及び児童福祉法の改正によって、弁護士等の配置や、第三者による評価といった「児童相談所の体制の強化」が行われています。



社会的養護(代替養育):

 社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育するとともに、家庭への支援を行うことです。
 国際連合の「児童の代替的養護に関する指針(資料)」では「家族との接触及び家族への復帰の可能性を促進」と「養育者・養育環境の永続性(パーマネンシー)を目標とする」ことが記載されています。
 これを受けて新たな社会的養育ビジョンには、「特別養子縁組の推進」や「子どもの出自を知る権利の保証(記録の永年保存)」が記載されています(資料)。

 社会的養護(代替養育)の方法として下記があげられます。

  1. 里親委託: 家庭における養育を里親に委託させるもの
  2. ファミリーホーム: 小規模住居型児童養育事業を行う者の住居において家庭養育を行うもの(定員5・6名)
  3. 施設養護: 児童福祉施設に児童を入所させて養育を行うもの

 児童相談所(都道府県)は、親権者又は未成年後見人の意に反して、里親への委託や施設への入所させる事はできません。
 一方、裁判所の決定は親権者等の意には関係しません。親権者等の意に反する場合は、児童相談所は、家庭裁判所の承認を得る必要があります。
 また「子ども」もしくは「その保護者(非親権者も含まれる)」の意向が、児童相談所の方針と一致しない等の場合は「都道府県児童福祉審議会」の意見を聴取しなければならないとされます。


要保護児童対策地域協議会:

 市区町村には、要保護児童への支援を行うための関係機関によるネットワーク会議である「要保護児童対策地域協議会」を運営する努力義務があります。
 要保護児童対策地域協議会の援助対象は、「要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童)」、「要支援児童(養育上の支援を要する児童)」、「特定妊婦」とされています。

  1. 要保護児童対策地域協議会は児童相談所と協働して援助を行う(児童相談所の方が上位組織)。
    援助には「児童福祉施設の退所後」の自立支援に向けた相談や援助も含まれる。
  2. 地域協議会を構成する関係機関には「市町村(児童福祉や母子保健等の部局),児童相談所,福祉事務所,保育所,児童福祉施設,保健所,医療機関,教育委員会,警察等々」が含まれる(参照)。
  3. 地域協議会は、関係機関等に対し、資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。この場合,医師や地方公務員等の守秘義務(秘密保持義務)に反することにはならず,個人情報保護法に違反することにもならない。



児童福祉施設や関連する施設

 児童福祉法には下記が児童福祉施設として定められています。目的がわかりやすいように”本サイト独自”に分類しています。

  1. 母子保護の関連施設:
    「助産施設」 / 「母子生活支援施設
  2. 保育関連施設:
    「保育所」(保育園) / 「幼保連携型認定こども園」(認定こども園) / 「児童厚生施設」(児童館など)
  3. 措置関連の施設:
    乳児院」 / 「児童養護施設」 / 「障害児入所施設」 / 「児童心理治療施設」 / 「児童自立支援施設
  4. 支援センター:
    児童家庭支援センター」(こども家庭支援センター)/ 「児童発達支援センター

 児童福祉施設ではありませんが「自立援助ホーム」なども関連施設です。


代表的な児童関連施設の概要を紹介します。

 乳児院
 乳児及び幼児を対象とした児童福祉施設。児童相談所の措置に基づき、近々で保護者や里親に引き取られる場合、医療的ケアが必要で乳児院が適当だと判断される場合の措置先となる。
 児童養護施設
 児童相談所長が環境上養護を要すると判断した児童(保護者のない児童、虐待されている児童など)を養育する児童福祉施設。また、退所した者の自立のための援助も行う。
 乳児(満一歳に満たない者)から入所でき、20歳まで延長できる。
 児童心理治療施設
 社会生活への適応が困難となった児童を対象とした児童福祉施設。短期間入所、または通所させ、社会生活に適応するために必要な心理的治療、生活指導を行う。
 入所している多くの子どもが発達障害等の診断名がついている。
 児童自立支援施設
 不良行為をなした児童、またはその恐れのある児童を入所させ、必要な指導を行い自立を支援する児童福祉施設。
(参照:少年法の保護処分
 母子生活支援施設
 保護者である配偶者のいない女子とその監護すべき児童を入所させて、保護するとともに自立の促進のためにその生活を支援する児童福祉施設。保護者の女子本人から「申込」に基づく入所となる。
 児童家庭支援センター
 通称はこども家庭支援センター。地域の児童家庭相談の窓口で、家庭や地域に密着した支援を行う児童福祉施設。
 相談や必要な助言を行なうとともに、保護を要する児童又はその他の保護者に対して指導する。
 児童相談所、児童福祉施設等との連絡調整を総合的に行い、市町、学校、保健所などの地域の関係と連携して支援活動をする。
 自立援助ホーム
 児童福祉施設ではないが、児童自立生活援助事業に基づき、就労支援等の自立を支援する入所施設。
 義務教育を終了しており、児童養護施設等を退所した児童を対象とする。


代替養育の現状(児童養護施設等のデータ):

 近年の児童養護施設や里親に関する現状についてまとめます(厚生労働省, 2018年データ; 2013年データ)。

  1. 児童養護施設への入所児童は減少傾向にある。一方、里親やファミリーホームへの委託は増加傾向にある。
  2. 養護(委託/入所)の平均年齢と平均期間は、里親が5.9歳と4.5年、児童養護施設が6.4歳と5.2年、ファミリーホームが8.2歳と3.6年となっている。いずれも2歳時点の養護がもっとも多い。
    18歳以上の児童の割合は里親が2.1%、児童養護施設が約0.8%、ファミリーホームが0.4%。
  3. 養護の理由が虐待である児童の割合は、里親が約39%、児童養護施設が約45%、ファミリーホームが約43%となっている。
    被虐待体験を有する児童の割合は、里親が約38%、児童養護施設が約65%、ファミリーホームが約53%となっている。
  4. 何かしらの心身の障害がある児童の割合は、里親が約25%、児童養護施設が約37%、ファミリーホームが約47%となっている。
  5. 家族との交流は、里親の場合は約30%が交流があり、ファミリーホームの場合は約55%、児童養護施設の場合は約70%と高くなっている。
  6. 高校卒業をした児童の大学・短大への進学率は、里親は約42%、児童養護施設約30%、ファミリーホームは約27%。
    (表5:就学状況別児童数の値から本サイトにて算出)

家庭支援専門相談員:

 家庭支援専門相談員とは、虐待等の家庭環境上の理由により施設に入所している児童の早期の退所を促進し,親子関係の再構築等が図られるよう支援する専門職のことです。児童福祉施設(乳児院・児童養護施設・児童心理治療施設・児童自立支援施設)に配置が義務づけられています。
児童の保護者等に対し,児童相談所との密接な連携のもとに,電話,面接等により児童の早期家庭復帰,里親委託等を可能とするための相談援助等の支援を行います。


自立支援計画(ケアプラン):

 「自立支援計画」とは、社会的養護を受けている対象者が自立するための支援計画です。
 現在は「ケアプラン」とも呼ばれ、「養育・支援計画(プラン)」と「家庭復帰支援計画(プラン)」の2つを含みます。

  1. 児童福祉施設のうち措置関連の施設(児童養護施設等)は、入所者の「自立支援計画」(自立を支援するための計画)を入所中に策定する事が義務づけられている(「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」)。
  2. 里親の自立支援計画は児童相談所が策定する事になっている。

 ケアプランのガイドライン(平成30年)では、各機関等の連携と協働を重点におき、養育・支援計画は「児童相談所・里親やファミリーホーム、児童福祉施設が協働して、子どもの意見や保護者の思いを十分に聞き取って作成するべき」、家庭復帰支援計画は「それに加えて市区町村の福祉など地域で家庭を支援する機関が協働して作成するべき」としています。
(参考:ケアプランガイドライン




子育て支援事業
乳児家庭全戸訪問事業:

 「乳児家庭全戸訪問事業」は児童福祉法定められた事業で、主に「1.育児に関する不安や悩みの傾聴、相談」「2.子育て支援に関する情報提供」「3.乳児及びその保護者の心身の様子及び養育環境の把握」「4.支援が必要な家庭に対する提供サービスの検討、関係機関との連絡調整」を行います(引用)。
 対象者は、生後4か月を迎える日までの赤ちゃんがいる全ての家庭です。
 支援の必要性を検討すべきと判断される家庭についてケース対応会議を開催し、支援の必要性とその後の支援内容を決定します(養育支援等へつなげる)。





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