ここでは、児童に関する法律である「児童福祉法」についてまとめます。
用語:
児童福祉法とは、児童の健全な育成、福祉の保証とその積極的増進を理念とし、児童福祉を担う公的機関、各種施設や、職種、児童福祉事業等に関する規定がされた法律です。(1947年・昭和22制定)
児童福祉法は、1989年に国際連合で採択され、1994年に日本が批准した「子どもの権利に関する条約」の精神が反映されています。
児童福祉法における児童の定義は、「18歳未満」のものをさします(児童福祉法4条)。
児童相談所とは、各都道府県に設けられた児童福祉の専門機関であり、児童に対して主に「相談機能」「一時保護機能」「措置機能」「民法上の権限」という4つの機能などを持っています。
2019年の児童虐待防止法及び児童福祉法の改正によって、弁護士等の配置や、第三者による評価といった「児童相談所の体制の強化」が行われています。
社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育するとともに、家庭への支援を行うことです。
国際連合の「児童の代替的養護に関する指針(資料)」では「家族との接触及び家族への復帰の可能性を促進」と「養育者・養育環境の永続性(パーマネンシー)を目標とする」ことが記載されています。
これを受けて新たな社会的養育ビジョンには、「特別養子縁組の推進」や「子どもの出自を知る権利の保証(記録の永年保存)」が記載されています(資料)。
社会的養護(代替養育)の方法として下記があげられます。
児童相談所(都道府県)は、親権者又は未成年後見人の意に反して、里親への委託や施設への入所させる事はできません。
一方、裁判所の決定は親権者等の意には関係しません。親権者等の意に反する場合は、児童相談所は、家庭裁判所の承認を得る必要があります。
また「子ども」もしくは「その保護者(非親権者も含まれる)」の意向が、児童相談所の方針と一致しない等の場合は「都道府県児童福祉審議会」の意見を聴取しなければならないとされます。
市区町村には、要保護児童への支援を行うための関係機関によるネットワーク会議である「要保護児童対策地域協議会」を運営する努力義務があります。
要保護児童対策地域協議会の援助対象は、「要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童)」、「要支援児童(養育上の支援を要する児童)」、「特定妊婦」とされています。
児童福祉法には下記が児童福祉施設として定められています。目的がわかりやすいように”本サイト独自”に分類しています。
児童福祉施設ではありませんが「自立援助ホーム」なども関連施設です。
代表的な児童関連施設の概要を紹介します。
乳児院 |
---|
乳児及び幼児を対象とした児童福祉施設。児童相談所の措置に基づき、近々で保護者や里親に引き取られる場合、医療的ケアが必要で乳児院が適当だと判断される場合の措置先となる。 | 児童養護施設 |
児童相談所長が環境上養護を要すると判断した児童(保護者のない児童、虐待されている児童など)を養育する児童福祉施設。また、退所した者の自立のための援助も行う。 乳児(満一歳に満たない者)から入所でき、20歳まで延長できる。 | 児童心理治療施設 |
社会生活への適応が困難となった児童を対象とした児童福祉施設。短期間入所、または通所させ、社会生活に適応するために必要な心理的治療、生活指導を行う。 入所している多くの子どもが発達障害等の診断名がついている。 | 児童自立支援施設 |
不良行為をなした児童、またはその恐れのある児童を入所させ、必要な指導を行い自立を支援する児童福祉施設。 (参照:少年法の保護処分) | 母子生活支援施設 |
保護者である配偶者のいない女子とその監護すべき児童を入所させて、保護するとともに自立の促進のためにその生活を支援する児童福祉施設。保護者の女子本人から「申込」に基づく入所となる。 | 児童家庭支援センター |
通称はこども家庭支援センター。地域の児童家庭相談の窓口で、家庭や地域に密着した支援を行う児童福祉施設。
相談や必要な助言を行なうとともに、保護を要する児童又はその他の保護者に対して指導する。 児童相談所、児童福祉施設等との連絡調整を総合的に行い、市町、学校、保健所などの地域の関係と連携して支援活動をする。 | 自立援助ホーム |
児童福祉施設ではないが、児童自立生活援助事業に基づき、就労支援等の自立を支援する入所施設。 義務教育を終了しており、児童養護施設等を退所した児童を対象とする。 |
近年の児童養護施設や里親に関する現状についてまとめます(厚生労働省, 2018年データ; 2013年データ)。
家庭支援専門相談員とは、虐待等の家庭環境上の理由により施設に入所している児童の早期の退所を促進し,親子関係の再構築等が図られるよう支援する専門職のことです。児童福祉施設(乳児院・児童養護施設・児童心理治療施設・児童自立支援施設)に配置が義務づけられています。
児童の保護者等に対し,児童相談所との密接な連携のもとに,電話,面接等により児童の早期家庭復帰,里親委託等を可能とするための相談援助等の支援を行います。
「自立支援計画」とは、社会的養護を受けている対象者が自立するための支援計画です。
現在は「ケアプラン」とも呼ばれ、「養育・支援計画(プラン)」と「家庭復帰支援計画(プラン)」の2つを含みます。
ケアプランのガイドライン(平成30年)では、各機関等の連携と協働を重点におき、養育・支援計画は「児童相談所・里親やファミリーホーム、児童福祉施設が協働して、子どもの意見や保護者の思いを十分に聞き取って作成するべき」、家庭復帰支援計画は「それに加えて市区町村の福祉など地域で家庭を支援する機関が協働して作成するべき」としています。
(参考:ケアプランガイドライン)
「乳児家庭全戸訪問事業」は児童福祉法定められた事業で、主に「1.育児に関する不安や悩みの傾聴、相談」「2.子育て支援に関する情報提供」「3.乳児及びその保護者の心身の様子及び養育環境の把握」「4.支援が必要な家庭に対する提供サービスの検討、関係機関との連絡調整」を行います(引用)。
対象者は、生後4か月を迎える日までの赤ちゃんがいる全ての家庭です。
支援の必要性を検討すべきと判断される家庭についてケース対応会議を開催し、支援の必要性とその後の支援内容を決定します(養育支援等へつなげる)。