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公認心理師試験用語集 : 児童虐待防止法

5 - 法律・行政児童に関する法律 > 32- 児童虐待防止法

 ここでは、児童に関する法律である「児童虐待防止法」についてまとめます。
用語:児童虐待防止法 / マルトリートメントとリスク(Belskyの養育モデル) / 特定妊婦



児童虐待防止法

 児童虐待防止法は、児童虐待を防止するために作られた法律で2000年に施行、2004年に改正され、主に児童虐待の定義と通報義務を定めています。
 児童虐待とは、保護者がその監護する「児童(18歳に満たない者)」に対し、次に掲げる行為をすることを言います。
保護者とは、親権者、未成年後見人、その他の者で児童を実際に監護する者を言います。

身体的虐待 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
性的虐待 児童にわいせつな行為をすること、させること、見せること。
ネグレクト 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、又は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。保護者以外の同居人による児童虐待と同様の行為もネグレクトの一類型に含まれる。
心理的虐待 児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。児童の目の前でドメスティック・バイオレンスが行われること等、児童への被害が間接的なものについても含まれる。

 児童虐待の相談対応件数は年々増加しており、近年は心理的虐待が最も多く、次に身体的虐待の割合が多いです(参照:平成29年度相談対応件数)。
 また、主たる虐待者としては、実母が約50%近くを占め、その次に実父と約40%を占めます(参照:平成30年版 子供・若者白書)。
 児童虐待による死亡事例としては、心中以外では「身体的虐待」が最も多く次に「ネグレクト」となります。加害者は「実母」が最も多く、次に「実父」となります。
 死亡した児童の年齢は「0歳児」が最も多く、加害者の年齢は実母の場合は「20歳未満」が最も多く、実父の場合は「20〜24歳」が最も多いです。
 心中による死亡の背景としては「経済的困窮(借金)」が最も多く、次に「家庭不和」となっています(参照:厚生労働省 検証報告書)。


通告の義務(第6条):

 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者には、速やかに、これを「市区町村」、「都道府県の設置する福祉事務所」または「児童相談所」に通告する義務が定められています。
守秘義務は危機介入のために例外扱いされます。すなわち、刑法の守秘義務に関する法律の規定は、通告する義務を妨げないとされ、通告義務が優先されます

 児童の福祉に業務上関係のある団体やその職員等は、児童虐待の早期発見に努め、支援の要請、教育または啓蒙に努めなければならないとしています。
発見は、教師、児童福祉施設職員、医師、保健師などにされることが多く、その対応には教育、医療、福祉、司法などの様々な専門家が連携することが重要となります。組織に所属する心理職として発見した場合は、組織内での共有をし、管理職が児童相談所へ通告を行います。

通告後の流れ:

 児童相談所や市町村が通告を受理した以降の対応をまとめます。

  1. 情報収集と安全確認: 
     児童相談所と市町村は、目視によるこどもの安全確認と、生活状況などを把握します。
     児童相談所は、家庭への「立入調査」や、警察とともに家庭内に立ち入る「臨検・捜索」の権限があり、児童虐待が行われている疑いがあるときには行使します。
  2. 方針決定:  
     情報をもとに処遇方針が決定され、深刻な虐待状態にある場合は、家庭から一時的に保護する「一時保護」が実施されます(2週間から2カ月、更新可能)。
     親権者等の意に反する場合は家庭裁判所の承認を得る必要があります。
  3. 継続的支援:  
     処遇方針の決定を受けて「在宅支援」と「代替養育」が行われます。
     在宅支援とは、家族での生活を続けながら改善を目指す支援で市区町村が運営する「要保護児童対策地域協議会」で情報を共有し、機関協働による支援を行います。
     代替養育とは、こどもの生活の場を里親や施設等に移して支援を行うことです。親権者等の意に反する場合は、児童相談所は、家庭裁判所の承認を得る必要があります。

児童虐待やマルトリートメントのリスクと予防

 「マルトリートメント(不適切な養育)」とは、人あるいは動物に対する残酷なもしくは暴力的な振る舞いを意味し、児童虐待を包括する用語です。
 児童虐待やマルトリートメントは、児童の精神発達に深刻な影響を与え、「脳の器質的な変形」を引き起こしたり、「PTSD」、「解離性同一性障害」、「抑うつ」、「学習意欲の低下や非行」の要因になると考えられています。
 さらに、虐待を受けた児童が親になったときに、自分の子供を虐待するという、「虐待の世代間の伝達」が起こりやすいとされます。


児童虐待のリスク要因:

 J. Belsky(ベルスキー)のモデルにおいて、親の養育行動に影響する要因として「1.親の個人的な心理的資源」、「2.子どもの特徴・個性」、「3.ストレスやサポートの要因(夫婦関係・仕事・社会的交友・支援関係など)」が挙げられています。
 このうち「3.ストレスやサポートの要因」が、最も養育行動に直接的に影響を与えます。さらに、親の精神健康度にも影響を与える事による間接的な影響もあります。

 児童虐待につながるリスクとしては、下記のようなものが指摘されており、さまざまなリスク要因が絡み合っておこるとされています(厚生労働省)。特定妊婦のリスク要因も確認しておきましょう。

  1.  保護者の要因:
     望まぬ妊娠や若年・うつ病など保護者の疾病、慢性疾患の悪化・アルコールやギャンブル依存などの嗜癖・虐待された経験など
  2.  子ども側の要因:
     乳児期の子ども・未熟児・障害児など
  3.  養育環境の要因:
     単身家庭や子ども連れの再婚家庭等・夫婦の不和やDV・社会的孤立・経済的な不安定さ(失業・転職の繰返し)

特定妊婦:

 特定妊婦とは、児童福祉法において「出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦」と定義されます。妊娠中に家庭環境などにリスクを抱えている妊婦で、育児が困難と予想される妊婦とも説明されます。
 医療機関や学校等において特定妊婦と把握された場合、その者の現在地の市町村へ情報提供することが「努力義務」となっています。

 市区町村に登録された特定妊婦は養育支援訪問事業や要保護児童対策地域協議会を通じて養育上の支援を受けることとなります(補足:厚生労働省:特定妊婦の目安

 以下は、特定妊婦のリスク要因とされています(文献:#1#2)。

  1. 妊婦が若年
  2. 未入籍/シングルファミリー/ステップファミリー
  3. 夫との関係:年の差婚、DV歴がある
  4. 多産(こどもの数が多い)
  5. 妊婦に精神疾患や慢性疾患悪化の可能性がある、受診支援が必要
  6. 妊娠時の初診が遅い≒母子健康手帳未発行・妊娠後期の妊娠届
  7. 妊娠時の受診回数が少ない
  8. 妊娠出産に関する知識不足/入院先の確保がない
  9. 胎児に先天性疾患がある
児童虐待の対策:

 児童虐待の発生の予防としては、下記のような対策が重要とされます。

  1. 市区町村での子育て支援の充実
  2. 虐待防止のための教育
  3. ハイリスクケースの早期発見と支援

 ハイリスクケースへは、「要保護児童対策地域協議会」のケースとして支援されます。
 支援内容としては、相談所や施設などでの「拠点型支援」と、家庭に赴く「訪問型支援」などがあります。



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