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心理学用語集 : ひきこもり支援

5 - 法律・行政その他の法律 > 83- ひきこもり支援

 2019年の厚生労働省の調査結果から、自宅に半年以上閉じこもっている「ひきこもり」は15〜39歳が推計54万1千人、40〜64歳が推計61万3千人いることが報告されています。中高年のひきこもりは、7割以上が男性で、ひきこもりの期間は7年以上が半数を占めています。
 ここでは、ひきこもり支援の施策やガイドラインについてまとめます。

用語:子ども・若者育成支援推進法 / ひきこもり地域支援センターひきこもり支援コーディネーター・サポーター関連機関支援ガイドラインアウトリーチ



ひきこもりに関する施策

 ひきこもりの定義は「様々な要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念」とされます。
 社会的参加とは「義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など」をさします。他者と交わらない形で外出している場合でも、ひきこもりに含まれます(引用 )。
 
 ひきこもりの施策としては「子ども・若者育成支援推進法」や「ひきこもり対策推進事業」、「ふれあい心の友訪問援助事業」などが行われています(終了も含む)。


子ども・若者育成支援推進法:

 子ども・若者育成支援推進法は、2010(H22)年に施行された法律であり、「教育、福祉、雇用など各関連分野にわたる施策を総合的に推進する」とともに、「ニート、ひきこもりといった困難を抱える若者の方への支援を行うための地域ネットワークづくりの推進を図る」ものです。
 「ひきこもり地域支援センター」は、その地域ネットワークを構成する機関とされています。


ひきこもり地域支援センター:

 ひきこもり地域支援センターとは、ひきこもりに特化した第一次相談窓口としての機能を有する施設であり、都道府県・指定都市に配置されています。
 ひきこもり地域支援センターには「ひきこもり支援コーディネーター」を置き、「第一次相談窓口」「他の関係機関との連携」「情報発信」の3つの事業を行います。
 第一次相談窓口として、電話・来所による相談だけでなく、訪問による相談なども行います。


ひきこもり支援コーディネーター・ひきこもりサポーター:

 「ひきこもり支援コーディネーター」は、ひきこもり地域支援エンターに配置され、ひきこもりの状態にある本人、家族からの電話、来所等による相談や家庭訪問を中心とした訪問支援を行うことにより、早期に適切な機関につなぐ(自立への支援)役割を担います。
 社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士等の有資格者が行います。

 「ひきこもりサポーター」は、ひきこもりの発見や訪問支援や専門機関への紹介を行います。ひきこもり支援に関心がある者であれば、ひきこもりサポーター養成研修を受けることでサポーターとして登録されます。


ひきこもり支援に関連する機関:

 ひきこもり地域支援センターが連携し、ひきこもり支援に協力する機関としては下記が挙げられます。

  1. 保健医療 : 医療機関、保健所、保健センター
  2. 就労関係 : 地域若者サポートステーション(サポステ)、ハローワーク、地域障害者職業センターなどの障害者雇用促進関連施設
  3. 福祉・行政 : 福祉事務所、地域包括支援センター、児童相談所、精神保健福祉センター、発達障害者支援センター、子ども・若者総合相談センターなど
  4. 教育・その他 : 学校、教育員会、家族会、NPOなど


ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン

 ひきこもりは原則として統合失調症の症状による現象は除くとされていますが、実際には確定診断前の症状を有している可能性があるとされています(ガイドライン )。
 ひきこもりの評価には、下記の要素が重要とされます。

  1. 長期的な関与を続けながら情報を蓄積すること。
  2. 精神障害の有無について(気分障害、統合失調症、発達障害など)判断すること。

 ひきこもりの支援には、地域連携ネットワークを構築し(教育、保健、福祉、医療などの複数の専門機関による多面的な支援)、訪問支援(アウトリーチ型支援)も用いながら、支援段階にあわせて家族や当事者への支援を実施する事が重要とされます。
 引きこもりの支援には、当事者とその周囲の状況の全体的な評価(多次元モデル)に基づいて組み立てられるべきだとされています

  1. 第一の次元: 背景にある精神障害に特異的な支援
  2. 第二の次元: 環境的条件の改善(家族を含むストレスの強い環境の修正や支援機関の掘り起こし等)
  3. 第三の次元: ひきこもりが意味する思春期の自立過程の挫折に対する支援

ガイドラインにあるひきこもり支援の留意点についてまとめます。

支援機関に求められる視点

ひきこもりの長期化を防ぐために、支援機関は当事者の来談・受診をできるだけ早く実現することが重要とされます。
  1. 身近な地域にあるひきこもりに対する支援機関を、普段から住民向けに広く周知しておくこと。
  2. 家庭への訪問を行うアウトリーチ型支援を、タイミングよく開始すること。
  3. 家族がひきこもりの本人に来談・受診を説明しやすくなるようなアドバイス、ガイダンスを継続すること。

家族と当事者への支援

  1. 家族だけしか相談に来ない事例では、支援は第一段階である家族支援段階から開始し、順を追って、来談型あるいはアウトリーチ型の当事者が中心の支援段階へと進んでいく。その後、集団活動を求める段階では就労支援機関等へとつなげる。
  2. 当事者に対しても家族に対しても、まずは支持的で受容的な面談を行う。
  3. 当事者の障害の重症度や有効性の評価を行ったうえで、必要ならば薬物療法の開始する。

訪問支援:アウトリーチ型支援

  1. 訪問支援(アウトリーチ型支援)がめざすゴールは、精神科医療や社会活動への可能性を拡げるための社会資源につながること。
  2. 訪問支援のタイミングを慎重に考慮し、事前に「1.情報の収集と関係づくり、2.達成目標の明確化、3.家族や当事者への事前連絡、4.適切な訪問のセッティング、5.関係機関との情報交換」を検討する。
    (訪問スタッフの構成[複数]や、近隣への配慮の家族への確認、警察への介入の要請検討なども含まれる)
  3. 当事者を対象とした訪問は本人の了承を得る。当事者が訪問を拒否しており、家族を対象とした訪問を行っている場合でも、当事者は支援者に強い関心を持っているはずであり、当事者の存在を意識し、当事者の本当の気持ちを尊重する姿勢で臨む(訪問での長時間の家族との面談等は避ける)。



アウトリーチ:

 「アウトリーチ」は、支援者が対象者のもとへ出向いて支援することであり、訪問支援とも言われます。
 近年は「支援者が支援が必要な人を発見し、積極的に情報や支援を届ける」という定義もあります(三品,2011)。
 下記に特徴をまとめます。

  1. 支援の対象者の多くは、自ら支援を求めない又は求められない人である。
  2. 医療支援や生活支援など包括的な支援として、多職種アウトリーチチーム(多職種・多機関でのチーム対応)が求められる( 伊藤, 2015 )。
  3. ストレングスモデルに基づき、対象者の望む事の実現に協働で取り組む。



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