ここでは、「配偶者暴力防止法(DV防止法)」についてまとめます(DV:Domestic Violence/ドメスティック・バイオレンス)。
配偶者暴力防止法(DV防止法)は通称であり、正式には「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」という名称です。
またDVの理論として「ドゥルース・モデル(パワーとコントロール)」と「暴力のサイクル理論」をまとめます。
用語:配偶者に含まれる者 / 保護命令 / 通報義務 / 配偶者暴力相談支援センター・警察の役割 / ドゥルースモデル・暴力のサイクル理論
「配偶者暴力防止法(DV防止法)」は、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備し、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的とする法律です。
(詳細:▼ DV防止法の成立と改正)
ここでいう配偶者からの暴力とは、「身体に対する暴力」、または「心身に有害な影響を及ぼす言動」(「生命等に対する脅迫」を含む)です。
対象となる配偶者には、「結婚している者(婚姻の届出済)」だけでなく、下記の対象者も含まれます。
ただし、「男女交際などにおける、恋人からの暴力」は対象にはなりません。
「保護命令」とは、裁判所が配偶者から暴力を受けた被害者からの申し立てにより、配偶者に対して発する命令のことです。
保護命令の対象となる暴力は「配偶者からの身体に対する暴力、又は生命等に対する脅迫」であり、精神的暴力は現行法では保護命令の対象にはなりません。
保護命令は「地方裁判所」が管轄し、以下の5つの類型があります。
DVを受けている者(身体に対する暴力に限る)を発見した者は、「配偶者暴力相談支援センター」又は「警察官」に通報するように努めなければならないと定められています。
DVへの対応は危機介入であり、刑法の秘密漏洩罪や守秘義務に関する法律の規定は、通報することを妨げるものと解釈しません。
ただし、医師その他の医療関係者は、DVによって負傷し又は疾病にかかったと認められる者を発見したときは、通報できるようになっていますが、「被害者の意思を尊重するように努めること」となっています。
同時に、配偶者暴力相談支援センター等の利用について情報を提供するよう努めなければならないと定められています。
「配偶者暴力相談支援センター」とは、DV被害者に対する支援業務を行う施設であり、「都道府県に設置」が義務付けられており、市町村にも設置でき、他の施設の代用も可能です。
センターでは、以下のような支援を行います(婦人相談所を含む)。
警察官は、通報等によりDVが行われていると認めるときは、「暴力の制止、被害者の保護その他の配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされています。
警視総監、道府県警察本部長、警察署長は、DVを受けている者から、援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該被害を自ら防止するための措置の教示や、配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うとされています。
また、ストーカー規制法第4条(警告)では、被害者の申し出により、つきまとい等の違反行為が繰り返され継続する危険がある場合、国家公安委員会規則の定めによって、警察署長など警察本部長等が対象者へ警告を行えるとされています。
配偶者暴力(DV)の理論として代表的な「ドゥルース・モデル(パワーとコントロール)」と「暴力のサイクル理論」をまとめます(引用:橋本,2010)。
ドゥルース・モデルは、米国ミネソタ州のDomestic Abuse Intervention Projectが提唱したモデルです。
虐待者と被虐待者の関係を「パワーとコントロール(権力と支配)の車輪」で示しており、身体的暴力と非身体的暴力が互いに絡み合いながら、虐待者が被虐待者の生活を支配していることを象徴しています。
非身体的暴力には「脅し、感情的な暴力、社会的に孤立させる、責める、子供を使っておとしめる」、「特権を振りかざす、経済的虐待、強迫」といったものが含まれます。
暴力のサイクル理論はWalkerが提唱した理論であり、暴力は絶えず行われるわけでなく下記の3つのサイクルがあるというものです。
この暴力と愛情のサイクルによって、被虐待者は虐待者と別れられず、共生的(共依存的)関係となると考えます。