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心理学用語集 : 配偶者暴力(DV)防止法

5 - 法律・行政その他の法律 > 81- 配偶者暴力(DV)防止法

 ここでは、「配偶者暴力防止法DV防止法)」についてまとめます(DV:Domestic Violence/ドメスティック・バイオレンス)。
配偶者暴力防止法(DV防止法)は通称であり、正式には「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」という名称です。
 またDVの理論として「ドゥルース・モデル(パワーとコントロール)」と「暴力のサイクル理論」をまとめます。

用語:配偶者に含まれる者保護命令通報義務配偶者暴力相談支援センター警察の役割ドゥルースモデル・暴力のサイクル理論



DV防止法

「配偶者暴力防止法(DV防止法)」は、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備し、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的とする法律です。
 (詳細:▼ DV防止法の成立と改正)

 ここでいう配偶者からの暴力とは、「身体に対する暴力」、または「心身に有害な影響を及ぼす言動」(「生命等に対する脅迫」を含む)です。
対象となる配偶者には、「結婚している者(婚姻の届出済)」だけでなく、下記の対象者も含まれます。

  1. いわゆる事実婚の状態にある者。
  2. 生活の本拠を共にする交際関係にある者(婚姻関係における共同生活に類する共同生活)。
  3. 離婚後又は婚姻取消後であっても、当該配偶者であったものから引き続き更なる暴力を受ける恐れが大きい者

ただし、「男女交際などにおける、恋人からの暴力」は対象にはなりません。


保護命令:

 「保護命令」とは、裁判所が配偶者から暴力を受けた被害者からの申し立てにより、配偶者に対して発する命令のことです。
保護命令の対象となる暴力は「配偶者からの身体に対する暴力、又は生命等に対する脅迫」であり、精神的暴力は現行法では保護命令の対象にはなりません。
保護命令は「地方裁判所」が管轄し、以下の5つの類型があります。

  1. 接近禁止命令:
     6か月間、被害者の身辺へのつきまといや、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く)や、その他、被害者の住居、勤務先などの場所の付近の徘徊を禁止します。
  2. 電話等禁止命令:
     面会の要求、行動の監視、乱暴な言動、電話や電子メールによる連絡(緊急やむを得ない場合以外)などについて禁止します。
  3. 子に対する接近の禁止命令:
     被害者が未成年の子と同居している場合に、上記の接近禁止命令が効力を有している間、子の住居、就学する学校その他の場所においてその子の身辺につきまとい又はその付近を徘徊することを禁止します。子どもを介して配偶者が暴力を受けることを防ぐ意味を持っています(ただし、当該子が15歳以上であるときは、その同意がある場合に限定される)。
  4. 親族に対する接近の禁止命令:
     配偶者が被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者(被害者と同居している子及び配偶者と同居している者を除く。)の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近を徘徊することを禁止します。
  5. 退去命令:
     2ヶ月間、被害者とともに生活の本拠としている住居から退去すること、及び当該住居の付近を徘徊することを禁止します。これは、被害者が暴力から逃れるために転居する時間を確保するための制度です。
通報義務(努力義務):

 DVを受けている者(身体に対する暴力に限る)を発見した者は、「配偶者暴力相談支援センター」又は「警察官」に通報するように努めなければならないと定められています。
DVへの対応は危機介入であり、刑法の秘密漏洩罪や守秘義務に関する法律の規定は、通報することを妨げるものと解釈しません。
 ただし、医師その他の医療関係者は、DVによって負傷し又は疾病にかかったと認められる者を発見したときは、通報できるようになっていますが、「被害者の意思を尊重するように努めること」となっています。
同時に、配偶者暴力相談支援センター等の利用について情報を提供するよう努めなければならないと定められています。



配偶者暴力相談支援センターと警察の役割

 「配偶者暴力相談支援センター」とは、DV被害者に対する支援業務を行う施設であり、「都道府県に設置」が義務付けられており、市町村にも設置でき、他の施設の代用も可能です。
センターでは、以下のような支援を行います(婦人相談所を含む)。

  1. 相談・カウンセリング、もしくは相談を行う機関の紹介。
  2. 医学的または心理学的な指導、その他の必要な指導。
  3. 被害者やその家族の一時保護。
  4. 自立生活の支援(就労促進・住宅確保)。
  5. 保護命令の制度の利用についての援助。
  6. 被害者を居住させ保護する施設の利用について援助。
  7. ( 補足: 被害者の保護施設

警察の役割:

 警察官は、通報等によりDVが行われていると認めるときは、「暴力の制止、被害者の保護その他の配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされています。
 警視総監、道府県警察本部長、警察署長は、DVを受けている者から、援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該被害を自ら防止するための措置の教示や、配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うとされています。
 また、ストーカー規制法第4条(警告)では、被害者の申し出により、つきまとい等の違反行為が繰り返され継続する危険がある場合、国家公安委員会規則の定めによって、警察署長など警察本部長等が対象者へ警告を行えるとされています。



ドゥルースモデルと暴力のサイクル理論

 配偶者暴力(DV)の理論として代表的な「ドゥルース・モデル(パワーとコントロール)」と「暴力のサイクル理論」をまとめます(引用:橋本,2010)。

 ドゥルース・モデルは、米国ミネソタ州のDomestic Abuse Intervention Projectが提唱したモデルです。
 虐待者と被虐待者の関係を「パワーとコントロール(権力と支配)の車輪」で示しており、身体的暴力と非身体的暴力が互いに絡み合いながら、虐待者が被虐待者の生活を支配していることを象徴しています。
 非身体的暴力には「脅し、感情的な暴力、社会的に孤立させる、責める、子供を使っておとしめる」、「特権を振りかざす、経済的虐待、強迫」といったものが含まれます。

 暴力のサイクル理論はWalkerが提唱した理論であり、暴力は絶えず行われるわけでなく下記の3つのサイクルがあるというものです。
 この暴力と愛情のサイクルによって、被虐待者は虐待者と別れられず、共生的(共依存的)関係となると考えます。

  1. 「1. 暴力の蓄積期」
     虐待者は緊張を蓄積させ、ささいな事が気になる時期。
     被虐待者はその気配を感じ、刺激しないようになっている。
  2. 「2. 暴力の爆発期」
     虐待者は怒りのコントロールができずに暴力を爆発させる時期。
     被虐待者はそれによって恐怖心を抱き、無力感を感じる。従順となり責められることを受け入れる。
  3. 「3. 開放期(ハネムーン期)」
     虐待者は二度と暴力は振るわないと謝罪し、被虐待者の罪悪感や同情心に働きかけ、愛情のある態度になる時期。
     被虐待者は相手が変わるという期待を持つ。
  4. 「1. 暴力の蓄積期」へと循環する。
 

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