ここでは、「労働災害に関わる法律」、「ハラスメント対策」、「障害者雇用対策」についてまとめます。
また「自殺対策基本法」についても記載します。
用語:
労働災害に関わる法律や対策も時代に応じて変化し、過重労働や心理的負荷による精神障害に対しても、労働災害認定の対象とその保証が行われるようになりました。
過重労働対策として、1995年に厚生労働省から過重労働による「脳血管疾患および虚血性心疾患の認定基準」が示されました。
長時間過重業務の判断については、「発症前1カ月間に100時間、2カ月間から6カ月間にわたり、80時間を超える時間外労働が認められる場合」が対象となります。
2002年に策定された「過重労働による健康障害防止のための総合対策」では、時間外労働の削減、有給休暇取得の促進を推進しています。労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストが厚労省から公開されています。
2006年には労働安全衛生法で、長時間労働者に対する「面接指導」が事業者に義務付けられました。
長時間にわたる労働により疲労が認められる労働者に対し、事業者は医師による面接指導を実施することが義務付けられています。常時50人未満の事業場も義務化の対象です(産業医の配置は50名以上の事業場が対象)。
2014年には「過労死防止対策推進法」が施行されました。過労死等の防止のため、「調査研究等、啓発、相談対策の整備等、民間団体の活動に対する支援」が規定されています。
「過労死等」とは、過労死等防止対策推進法第2条により、以下のとおり定義づけられています。
1999年に「心理的負荷による精神障害に係る業務上外の判断指針」が示され、精神障害に対する労働災害認定とその保証が行われるようになりました。
2011年に判断指針は改正され、「職場における心理的負荷による精神障害の認定基準」が設けられました。
認定要件としては下記の3つが定められています(厚生労働省)。
労働災害防止計画とは、労働災害を減少させるために政府が重点的に取り組む事項を定めた中期計画です。
2013年度からの5年間を対象とした第12次労働災害防止計画(2013年公示)では、健康確保・職業性疾病対策のひとつとして、「メンタルヘルス対策」があげられ、「メンタルヘルス対策を実施する事業場の割合を80%以上とする」という目標が掲げられています。
2018年度からの5年間を対象とした第13次労働災害防止計画(2018年公示)では、「メンタルヘルス対策を実施する事業場の割合を80%以上、集団分析の実施と活用した事業場の割合を60%以上とする」という目標が掲げられています。
労働者の休業・退職時や障害者となった時に対する保険制度としては、「労働者災害補償保険法」、「健康保険法」、「厚生年金保険法」、「雇用保険法」が挙げられます。
障害者雇用対策として、障害者の雇用と在宅就労の促進について定めた法律である「障害者雇用促進法」(昭和35年制定)の改正が挙げられます。
2016(平成28)年の障害者雇用促進法の改正により、「障害者に対する差別禁止」、「合理的配慮の提供の義務」が施行されました。
障害者雇用促進法では、合理的配慮は民間事業主も法定義務の対象となります(参照:障害者差別解消法では、努力義務)。
( 詳細: ▼ 差別や合理的配慮の事例等 )
また、2018(平成30)年には、障害者の雇用義務の規定に関して、法定雇用率の算出基礎対象に、精神障害者が追加されました。
(従来は、精神障害者は、身体または知的障害のみなしとして扱われていた。)
*法定雇用率:事業主が雇用すべき、全従業員数に対する障害者数の割合のこと。
地域障害者職業センターとは、障害者への「職業リハビリテーション」のサービスや、障害者雇用に関わる人に対する相談・援助を提供する施設です(障害者雇用促進法に基づく施設)。障害者職業カウンセラーが配置されています。
利用可能な障害者は「身体障害者手帳、精神福祉保健手帳、療育手帳のある人」といった手帳がある人以外だけでなく、「難病のある人、診断書がある人など」も対象となっています。
障害者及び、事業主・関係機関に提供されるサービスは下記の通りです。
障害者就業・生活支援センターとは、障害者雇用促進法に基づく事業であり、厚生労働省や都道府県から社会福祉法人やNPO法人に委託されています。
障害者の職業生活における自立を図るため、「雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ること」を目的としています。
職場におけるハラスメント対策として、「セクシャル・ハラスメント対策」と「パワーハラスメント対策」をまとめます。
令和2年より,職場におけるハラスメント防止対策が義務化され(中小企業は努力義務),事業主・労働者の責務が法律上明確化されています(参考資料)。
ハラスメントの調停には,「紛争調整委員会」(労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会)が関わる場合があります。委員会は、関係当事者又はその同僚に出頭を求め、その意見を聴くことができます。
男女雇用機会均等法では、職場のセクシャル・ハラスメント対策について、使用者による雇用管理上必要な措置を義務付けています(2007年)。
セクシャルハラスメントとは、職場において行われる労働者の性的な言動によって、「当該労働者がその労働条件につき不利益を受ける」、又は「当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」を意味します。
法律において下記が明文化されています。
パワーハラスメントは、職場において下記の3つをを満たしたものとされています(資料 )。
「パワーハラスメント対策」が職場において義務化されており,上記のセクシャルハラスメントと同様に,「1.事業主の責務」、「2.労働者の責務」,「3.防止のために講ずべき措置」,「4.労働者に対する不利益取扱いの禁止」が適用されます。
自殺対策基本法は、増加する自殺者の状況に対処するための法律であり、2006年(平成18年)に施行されました。
「自殺総合対策大綱」が定められ、「自殺防止の調査・研究、医療体制の設備、早期発見と回避、未遂者と家族へのケアなど」が対策とされています。
「ゲートキーパー」とは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応を図ることができる人のことです(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)(引用)。
主治医を始め、教職員、保健師、看護師、ケアマネージャー、民生委員、児童委員、各種相談窓口担当者など、関連するあらゆる分野の人材にゲートキーパーとなっていただけるよう研修等を行うこと(ゲートキーパーの養成)が自殺総合対策大綱に規定されています。
産業・労働分野においては、事業者は労働者の自殺対策のため、労働者の心の健康の保持を図るための必要な措置を講ずるように努めるものとされています。
具体的には、長時間労働の是正、メンタルヘルス対策の促進、ハラスメント防止対策などの措置となります。