ここでは、「労働安全衛生法」とそれに関連した指針や制度についてまとめます。
用語: 労働安全衛生法 / THP・快適職場 / 心の健康の保持増進(予防・ケア) / 職場復帰支援 / ストレスチェック制度
労働安全衛生法とは、職場における労働者の安全と健康を守り、労働災害を防止することを目的とした法律です(1947年制定)。
労働災害防止計画、安全衛生管理体制、労働者の危険・健康障害防止、労働者の健康保持増進のための措置などが規定されています。
事業者による健康診断の実施義務、労働者の受診義務は、健康保持増進のための措置に含まれます。
職場における労働者の安全と健康を守るために、事業者は「総括安全衛生管理者」、「安全管理者」、「衛生管理者」、「安全衛生推進者」を事業内容や規模の応じて選任しなければなりません。
50人以上の労働者を使用する事業所では、「衛生委員会の設置」、「産業医の選任」が義務付けられています。
法律には規定されていませんが、ガイドラインである「トータルヘルスプロモーションプラン指針」と「快適職場指針」をまとめます。
THP(トータルヘルスプロモーションプラン)指針とは、事業場における労働者の心身両面の総合的な健康の保持増進を図ることを目標とした指針です(1988年)。
THP指針における「メンタルヘルスケア」の対象は、積極的な健康づくりを目指す人であり、下記の実施を行います。
快適職場指針とは、事業者の快適な職場づくりを努力義務とした指針です(1992年)。職場のストレス軽減対策の先駆けとされます。
労働者の心の健康の保持増進のための指針とは、労働安全衛生法に基づき、事業者が講ずるように努めるべきメンタルヘルスケア(4つのケア)の実施に関する指針です(2006年)。
(労働安全衛生法第69条:事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。)
労働者のメンタルヘルスの予防の種類として「1次予防、2次予防、3次予防」があります。
労働者の心の健康の保持増進のためには、「ストレスへの気づきや対処法などに関する教育研修・情報提供」を行い、「4つのケア」を推進し、「職場環境等の改善、メンタルヘルス不調への対応、休業者の職場復帰のための支援等」が円滑に行われるようにする必要があるとされています。
「4つのケア」は下記のように定められています。
職場復帰支援の手引きは、メンタルヘルス不調により休業した労働者に対する職場復帰支援についての事業所向けマニュアルです(2004)。
事業所は職場復帰支援を下記の5ステップに分けて行う事が望ましいとされています。
5つの各ステップの詳細は「職場復帰支援の手引き」を参照ください。
留意点としては「プライバシー保護」が重要となります。労働者の情報収集や情報提供には本人との同意が必要です。
その他、「主治医との連携の仕方(労働者の業務内容の共有、情報提供の費用負担等)」や「段階的復職や就業上の配慮等(試し出勤制度、短時間出勤などの時間調整、軽作業など業務内容調整等)」に関しても検討します。
ストレスチェック制度とは、労働者のメンタル不調の一次予防を目的に、労働者のストレス検査の実施する制度です(2014年)。
労働安全衛生法に基づいた制度であり、常時50人以上の労働者を使用する「事業者に対して義務化」されています。
下記にストレスチェック制度の概要をまとめます。
項目 | 内容 |
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実施義務 | 事業者には、ストレス検査を1年ごとに1回行うことが義務付けられている。労働者が50名未満の事業所は努力目標。
事業者は、労働者の受検の有無を把握し、未受検の労働者に対して、受検を勧奨することができる。 |
検査内容 | 職場における「心理的負担」「心身の自覚症状」「他の労働者による支援」を検査内容に含む事とされている。
職業性ストレス簡易調査票は下記の3つから構成されている(参照)。 【 仕事のストレス要因 】
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実施者 | ストレスチェックの実施者は、下記とされる。但し、医師と保健師以外は、厚生労働大臣が定める研修を修了する必要がある。
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結果通知 | ストレスチェックの結果は、検査実施者から「労働者個人」に通知される。 事業者は労働者の同意がなければ結果を得られず、また結果に基づく不利益な取り扱いを禁止されている。 |
面接指導 | 実施者は、労働者に対して、面接指導の申出を行うよう勧奨することができる。
労働者(面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者)から事業者に申出があった場合は、事業者はその労働者に対して医師による面接指導を実施する。医師による面接指導は原則直接対面だが、条件を満たせば情報通信機器を用いる事も可能。 事業者は、面接指導の結果の記録を作成し、5年間保存する義務がある(実施年月日、労働者氏名、医師名、医師の意見内容)。 |
必要措置 | 事業者は、面接指導の結果に基づき、労働者に必要な措置に関して医師の意見を聴き、必要性に応じて措置(労働時間の短縮等)を講じなければならない。 |
集団分析 | 事業者は努力目標として、「集団分析(部門など組織単位でのチェック)」を行い、職場のストレス要因の評価、職場環境の改善に努めることとされている。 |