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公認心理師試験用語集 : 家事事件手続法・司法面接

5 - 法律・行政司法・犯罪に関する法律 > 62- 家事事件手続法・司法面接

 ここでは、司法・犯罪分野における法規や制度である「家事事件手続法」についてまとめます。
 また、「司法面接」及び、司法・犯罪分野で「心理職に求められる技能や態度」についても記載します。
用語:

  1. 家事事件手続法子どもの権利条約ハーグ条約成年後見制度
  2. 司法面接認知面接 ) / 客観的・主観的事実


家事事件手続法

 家事事件手続法は、家庭裁判所が管轄する家事審判事件及び家事調停の手続きについて定めた法律であり、2013(平成25)年に施行されました(以前は、家事審判法)。
 家庭内の紛争紛争が対象で、訴訟の形式によらない非公開の手続きで処理を行い、成年後見・保佐や、婚姻・離婚、親子、親権、相続などに関する事件の審判や、親権者の変更、養育費の請求、遺産分割などの調停があります。


児童の権利に関する条約(子どもの権利条約):

 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)とは、児童(18歳未満の者)の権利について定められた条約であり、日本は1994(平成6)年に批准しています。
 これをうけて家事事件手続法に、「子どもの意思の尊重と意見表明権」が強化されました。
 権利条約には「生命に対する固有の権利(6条)」、「出生の時から氏名を有する権利(7条)」、「できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利(7条)」、「自由に自己の意見を表明する権利(第12条)」などが定められています。
(外務省:児童の権利に関する条約


ハーグ条約:

 ハーグ条約とは、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ国際私法会議)であり、日本は2014(平成26)年に批准しています。
 国際結婚・離婚を受けて、子の国際的な奪取、不当な連れ去りを防止のための条約であり、子が「16歳未満」であると、子を奪われた親は、国の政府を通じて相手国にこどもの返還や面会を請求できます。


成年後見制度:

 成年後見制度とは認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な人を保護し支援する制度です(法務省)。
 成年後見人等の職務は「本人の財産管理や契約」などの法律行為に関するものに限られており、食事の世話や実際の介護などは、一般に職務の対象外です。また、後見人等は、契約等の法律行為の取り消しは行えますが、食料品の購入等の日常生活に関する行為の取り消しはできません。
 被後見人等(本人)の法律行為は、後見人等が代理で行われますが、選挙権は制限されません。

 成年後見制度には大きく法定後見制度と任意後見制度があり、さらに法定後見制度は判断能力の程度などに応じて「後見」「保佐」「補助」の3つから選べます。
 後見人・保佐人は医療保護入院の家族等に含まれ、入院の同意を行う事ができます。

 成年後見制度の申し立ては、「本人、配偶者、親族(四親等)、検察官」などや「市町村長」が行えます。
 成年後見人に選任される者が必要な資格等は無く、法定後見は家庭裁判所の審判により成年後見人等が選任されます。



司法面接

 「司法面接」とは、法廷でも使用することのできる精度の高い供述証拠を聴取することをめざした面接法の総称であるとされます。
 特に、子ども、および障害者など社会的弱者を対象に、以下の3つの目的を持って行う面接ともされています(引用:司法面接支援室)。

  1. 聞き取りが子ども(被面接者)に与える負担をできる限り少なくする。
  2. 聞き取る話の内容が間違った誘導の結果ではないかという疑念がもたれる可能性をできるだけ排除する。
  3. 子どもの関わった事件が何らかの作為による虚偽の話ではなく実際にあった出来事であるかどうかを検討するための情報を得る。

 負担をできる限り少なくするため、面接は原則1回であり、録画による記録を行います。
 面接の流れは「ラポールの形成」、「こどもによる自発的な報告」、「オープンクエスション」、「WH質問(何,誰,どこ等)」となり、出来事に関する事実の聴取を行います。


認知面接:

 「認知面接」とは、事件の目撃者から正確な情報を引き出すための捜査の面接手法です(文献:高村,2005)。
 下記の4つの手法が用いられます。

  1. 「文脈の心的再現」:
    事件当時の状況をイメージさせる
  2. 「すべてを報告する教示」:
    「思い浮かんだことをすべて報告させる教示」
  3. 異なる順序での出来事想起:
    「ばらばらな順序で出来事を描写させる」
  4. 視点を変えた事件描写:
    状況を別の異なった視点から描写させる



司法・犯罪分野における心理職

 司法・犯罪分野において、心理職に求められる技能や態度としては、下記のような点があげられます。

  1. 法規や制度の理解に基づく関係機関との連携
     適切な心理的実践の遂行のためには、法規や制度の理解、関係機関の役割や機能の理解が必要となります。
     そのうえで、適切な時期に適切な関係機関との連携と協働していき、目標に沿ったアセスメントや援助を行っていくことが重要とされます。
  2. 事実へのアプローチ
     裁判等においては、「事実」をもとに審判がなされるため、司法・犯罪分野における「事実」は非常に重要となります。
     事実には、「客観的事実(現実的な外面的事実)」と「主観的事実(個人の感じたことなど内面的な事実)」があることを念頭に、区別しながら対象者との間で確認作業を進めていくことが必要であるとされます。「客観的事実と主観的事実のズレへの理解」は、心理的支援のきっかけにもなるとされています。
     心理的アセスメントにおいては、客観的・主観的事実の理解のために、対象者の言動だけでなく、雰囲気や行動、表情などあらゆることを手掛かりにしていくことが望まれます。
  3. バランス感覚と自己客体化の能力
     犯罪においては、加害者と被害者、家庭内紛争では、様々な当事者が存在しています。問題解決のために、心理的実践を効果的に行うためには、「公平で中立的」であり「柔軟な思考と姿勢」を保持している、バランス感覚が求められるとされます。
     そして、そのバランス感覚を身に着けるためには、クライエントに共感し受容しながらも、自己を客観的にみること、つまり「自己客体化の能力が重要となるとされています。


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