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公認心理師試験用語集 : 犯罪被害者等基本法・裁判員制度

5 - 法律・行政司法・犯罪に関する法律 > 64- 犯罪被害者等基本法・裁判員制度

 ここでは、司法・犯罪分野における「犯罪者被害者に関する法律」及び「裁判員制度」についてまとめます。また司法で行われる「精神鑑定」についても記載します。
用語:

  1. 犯罪被害者等基本法犯罪被害者保護法(法テラス:日本司法支援センター) / 犯罪被害者支援法(犯罪被害者給付金支給法)
  2. 裁判員制度
  3. 司法精神鑑定刑事責任能力鑑定, 医療観察法鑑定・成年後見鑑定) / 情状鑑定(犯罪心理鑑定)


犯罪被害者等基本法・犯罪被害者支援法・保護法
犯罪被害者等基本法:

 犯罪被害者等基本法は、犯罪被害者等のための基本方針及び重点課題が規定された法律であり、2004(平成16)年に成立しました。
 犯罪被害者等が受けたその被害を回復、軽減し、再び平穏な生活を営むことができるように支援する施策が規定されています。
 犯罪被害者等とは、「犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為(交通事故も含まれる)」によって、被害を被った者及びその家族又は遺族をさします(日本国籍の有無は問わない)。

  1. 犯罪被害者等が「”被害を受けたとき”から再び平穏な生活を営むことができるようになるまで」の間、必要な支援等を途切れることなく受けることができる(刑事に関する手続に適切に関与できるような支援も含まれる)。
  2. 相談及び情報の提供、保健医療サービス・福祉サービスの提供、損害賠償請求の援助、犯罪被害者等の二次被害防止・安全確保、居住・雇用の安定、刑事に関する手続への参加の機会などの施策が行われる。
  3. 犯罪被害者等の負担の軽減のための専門的知識や技能を有する職員を配置や,犯罪被害者等に対する国民の理解を深めるための教育・広報活動も行われる。
  4. 施策は、国、地方公共団体、その他の関係機関、民間の団体等との連携の下、実施する。
  5. 犯罪被害者等基本計画の案を作成するなどの事務をつかさどる犯罪被害者等施策推進会議は、内閣府に置かれる。
    施策推進会議は、内閣総理大臣、国家公安委員会委員長、国務大臣(国家公安委員会委員長以外で総理大臣が指定)、有識者から構成される
  6. 2008年に開始された「被害者参加制度」において、被害者が検察官の隣で裁判に出席し、法廷で意見を述べることができる。

犯罪被害者保護法:

 犯罪被害者保護法は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律のことです。
 犯罪被害者の刑事手続における負担の軽減を目的とした法律であり、「被害者の公判傍聴に対する配慮」,「刑事裁判終了前の公判記録の閲覧・謄写」、「公判期日又は公判準備に対する旅費の支給」などが規定されています。
 被害者参加旅費等の支給は、法務大臣から委任された「日本司法支援センター(法テラス)」 が行います。


犯罪被害者支援法(犯罪被害者給付金支給法):

 犯罪被害者支援法(旧:犯罪被害者給付金支給法)は犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律のことです。
 犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族又は重傷病を負い若しくは障害が残った者に対して、犯罪被害者等給付金を支給し、さらに被害等を早期に軽減するように支援します。
 給付金の対象は、犯罪による被害が「遺族、重傷病、障害」となったものです。財産犯の被害は支給の対象外です。
 「被害者支援センター」は都道府県公安委員会が犯罪被害者等早期援助団体として指定したものをさします。犯罪被害者等の支援に関する広報・啓蒙活動、犯罪被害等に関する相談、給付金申請の補助、物品の供与又は貸与、役務の提供などを行います。

 


裁判員制度

 裁判員制度は、国民の中から選ばれる裁判員が「刑事裁判」に参加する制度です。2009(平成21)年から開始されました。
 裁判員は、法廷で行われる審理に立ち会い、裁判官とともに被告人が「有罪か無罪か」と「量刑」(有罪の場合にはどのような刑にするのか)を判断します。

  1. 対象事件は、地方裁判所での死刑や無期懲役等に当たる刑事事件。
    高等裁判所で以降は裁判員裁判制度は無い。
  2. 裁判官3人と、裁判員6人の計9名からなる合議体で行われる。
    全員の意見が一致しない場合、多数決の方式を採用して評決する。
  3. 裁判員は、評議内容や職務上知った秘密に関し、その漏洩が禁止されている。
    裁判中だけでなく、判決後(裁判員でなくなった後)も禁止されている。違反は刑事罰の対象となる。
  4. 裁判員の辞退は、定められた事項(理由)に該当する場合においてその申立てをすることができる(裁判所が辞退を決定する)。



司法精神鑑定

 「司法精神鑑定(精神鑑定)」は、法律家が精神障害に関する専門知識を補うために精神科医に精神医学的・心理学的な検査とそれに基づく判断を依頼することです(参考:NCNP )。
 精神鑑定の種類には「刑事責任能力鑑定、医療観察法鑑定、成年後見鑑定」などが挙げられます。

刑事責任能力鑑定(刑事精神鑑定):

 刑事責任能力鑑定では、刑法第三十九条における「心神喪失(責任無能力)」、「心神耗弱(部分責任能力)」の状態であるかを鑑定します。
 心神喪失とは、「精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力(事理弁識能力)がない状態」、または「その弁識に従って行動する能力(行動制御能力)のない状態」をいいます。
 心神耗弱とは、心神喪失ほど能力が欠如する程度には達しないが、著しく減退している状態をいいます。

 鑑定には時期等に応じて、下記のような区分があります。

  1. 起訴前鑑定: 検察官がその事件を起訴するかどうかを判断するために実施する。
    「簡易鑑定(期間:半日〜1日)」と「起訴前本鑑定(期間:2カ月程度)」がある。
  2. 公判鑑定: 起訴後に裁判所の判断で実施される。
     近年は公判前の整理手続きのなかで行われることも多く、その場合は「公判前鑑定」と呼ばれる
医療観察法鑑定・成年後見鑑定:
  1.  医療観察法鑑定:
     「医療観察法鑑定」は、医療観察法に審判のために行われる鑑定です。
     医療観察法の裁判所の指名によって精神保健判定医(もしくは同等の学識経験を有する者)のなかから選ばれた鑑定医によって行われます。
     鑑定は「鑑定入院医療機関」で実施され、医療観察法の処遇の3要件「疾病性」「治療反応性(可能性)」「社会復帰要因」について検討されます。
  2.  成年後見鑑定:
     「成年後見鑑定」は、成年後見制度を利用する際に、家庭裁判所が判断能力の判定を行うために行われる鑑定です。
     家庭裁判所からの依頼をうけて、精神科医が行いますが、本人の主治医が行うこともあります。


情状鑑定(犯罪心理鑑定)

 「情状鑑定」は「裁判所が刑の量定、処遇方法を決定するために必要な智識の提供を目的とした鑑定」とされます。
 精神科医や臨床心理士が行い、犯罪の動機や原因を本人の性格や知能、さらに生いたちにまでさかのぼって分析します。司法精神鑑定とは目的が異なります。
 弁護人から請け負う鑑定は「私的鑑定」、裁判所から受命するものは「本鑑定」と呼ばれます。




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