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公認心理師試験用語集 : 少年法

5 - 法律・行政司法・犯罪に関する法律 > 61- 少年法

 ここでは、司法・犯罪分野における法規や制度である「少年法」についてまとめます。
また少年非行の要因に関する理論についてもふれます。
用語:

  1. 少年法改正少年法) / 少年法審判少年鑑別所家庭裁判所の処分少年院法務省式ケースアセスメントツール
  2. 少年犯罪の現状
  3. 非行の要因社会的絆理論


少年法

 少年法は、少年の保護事件などに関する刑事訴訟法の特則を規定したもので、未成年者の人格の可塑性に着目し、成人同様の刑事処分を下すのではなく、原則として家庭裁判所により「保護更生のための処置」を下すことを規定しています。
 そのために、非行少年を家庭裁判所の審判に付する手続きを「少年保護手続き」と言います。また審判後に、検察に送致され、刑事裁判で下される刑事処分についても少年の特別措置が規定されています。
 2022年4月より「改正少年法」が施行され、特定少年(18歳・19歳の少年)の特例が規定されています。


非行少年:

 少年法で「少年」とは、「20歳に満たない者」をいい、非行少年は、以下のように3つに区分されます。

  1. 犯罪少年
     「14歳以上20歳未満」で罪を犯した少年。刑事責任が問われる。特定少年が含まれる。
     警察官は、罰金以下の刑に当たる犯罪は、家庭裁判所へ送致し、それ以外は、検察官に送致する。検察官は、その後家庭裁判所に送致することが義務付けられている。(全件送致義務)
  2. 触法少年
     「14歳未満」で刑罰法令に触れる行為をした少年。刑事責任が問われない。
     14歳未満は刑法で罰することはできず、先ず児童相談所に送られ、児童相談所から送致を受けた場合のみ家裁の審判の対象となる。
  3. 虞犯少年(ぐはん):
     罪を犯す恐れのある18歳未満の少年(特定少年は対象とならない)。
     保護者の監督に服さない性癖、家出、援助交際などが該当する。
     14歳未満ならば触法少年と同様に児童相談所に送られ、14歳以上は原則、犯罪少年と同様に家庭裁判所に通告・送致されます。
家庭裁判所:

 家庭裁判所は、少年の最終的な処分を決定する機関であり、調査官等による調査及び審判を経て、非行少年に対して保護的措置を施したり、保護処分に付したりして、再非行の抑止を図ります。
 14歳以上の非行少年は、家庭裁判所に送致されます。(全件送致主義


少年保護手続の流れ:

 少年の処遇手続きの流れの概要を下表にまとます(▼ 参考:成人の刑事訴訟 )。
 成人は簡易・地方裁判所での裁判ですが、少年は家庭裁判所での審判(非公開)が行われます。

犯罪少年(14歳以上)触法少年(14歳未満)
1. 警察官による検挙1. 警察官による検挙
2. 検察への送致(*)2. 児童相談所へ通告または送致
3. 検事による起訴3. 児童相談所による措置等
4. 家庭裁判所へ送致4. 事案に応じて、児童相談所から、家庭裁判所へ送致、審判を受ける
5. 調査(必要性により、観護措置-
6. 審判(非公開裁判:家庭裁判所)-
(7. 審判で検察官送致の処分の場合は、成人と同様の刑事裁判を受ける)-

 * 警察官は、罰金以下の刑に当たる犯罪は、検察ではなく、家庭裁判所へ送致する。


 虞犯少年は、家庭裁判所または、児童相談所へ通告・送致されます。

  1. 14歳以上の虞犯少年は原則、家庭裁判所に通告または送致される。
    (例外:警察官/保護者の判断に基づき児童相談所への通告がされる場合もある)。
  2. 14歳未満の虞犯少年は触法少年と同じく児童相談所に通告または送られる。

 通告または送致後の手続きは、犯罪少年または、触法少年と同じ流れとなります。
 審判の結果によっては、少年院送致の処分もあります(家庭裁判所の処分)。



改正少年法:

 2022年4月より「改正少年法」が施行されます(参照:法務省)。
 18歳・19歳の少年を「特定少年」として17歳以下の少年と区別し、特定少年に対する特例が定められました。
 特定少年の特例の主な内容は下記となっています。

  1. 家庭裁判所の処分の1つである「検察官送致(逆送)」の対象となる事件が拡大。
  2. 検察によって起訴された場合は「実名報道」が解禁される(改正前は実名報道は禁止されていた)。
  3. 「保護処分の期間」、「刑罰の期間」が明示される(改正前は不定期であり明示されない)。
    保護処分の期間は、六か月と二年のいづれか。
    刑期の上限は成人と同じく30年(改正前の上限は長期は15年、短期は10年であった)。
  4. 第五種少年院への収容(二年の保護観察中に遵守事項を守らない場合)



少年法審判

 少年法では、審判について、「非行事実を認定でき要保護性を審理する審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない(同法22条1項)」とあります。

 少年法における家庭裁判所での審判は非公開で行われ、その立会い人は、少年の親族、教員その他相当と認める者(少年の監護・指導に関与し、更生に協力する者)に限定され、被害者や検察官は立会いができません。このことは、凶悪犯罪の若年化や被害者権利意識の向上に伴い、問題視されてきています。


観護措置・少年鑑別所:

 家庭裁判所は事件を受理したときに、少年を少年鑑別所に送致することがあり、これを観護措置といいます。
「観護措置」とは、審判を行うために必要性がある場合に、少年の移動の自由を制限して行うもので、調査官の観護(第1号観護措置)と、少年鑑別所に送致する場合(第2号観護措置)の2種類がありますが、実務上は少年鑑別所に送致することを意味します。

 少年鑑別所は、全国で52箇所設置されている法務省直轄の施設であり、下記の3つを行います。

  1. 鑑別」(少年の鑑別を行う)
  2. 観護処遇」(鑑別所内での少年の健全な育成のための支援を含む観護処遇)
  3. 地域援助」(地域の非行及び犯罪の防止に関する援助:法務少年支援センター)

 鑑別とは、「医学、心理学、教育学などの専門的知識に基づいて、少年が非行に関わることになった背景や要因、再非行の危険性などが明確にすること」です。
 鑑別所には最高8週間(2週間×4)収容され、専門的な調査や診断が行われます。

 少年鑑別所では、少年の再非行の可能性と教育上の必要性を把握する「法務省式ケースアセスメントツール(MJCA:▼ 詳細 )」が用いられています。

 地域援助は、法務少年支援センターという名称で、一般の方や関係機関に対してさまざまな援助を提供しています。「子供や保護者、および成人に対する心理相談」、「能力・性格の調査(心理検査等)」、「研修・講演、法教育授業等の実施」、「事例検討会や地域の関係機関等が主催する協議会への参画・参加」などをおこなっています。



家庭裁判所調査官による調査:

 審判の前には、「家庭裁判所調査官」が、少年の性格、日頃の行動、生育歴、環境などについて、心理学、教育学、社会学などの専門知識・技法を活用し、調査を行います。
 少年や保護者、その他の関係者を家庭裁判所に呼び、面接や心理テストなどの方法により行われます。少年の家や学校などに出向いた調査もあります。また、少年に対して反省を促し、再非行を防止するための面接指導や社会活動に参加させたり、保護者に対して少年の更生のための助言なども行います。

 少年に対する処分を直ちに決めることが困難な場合に、少年を適当な期間、家庭裁判所調査官の観察に付すことがあり、これを「試験観察」といいます(少年法25条1項)。
 少年を自宅に居住させて観察するものは、在宅試験観察と呼ばれ、保護処分に付されるかもしれないという心理的強制を少年の自力更生の動機付けとして利用する面もある方法です。



家庭裁判所の審判と処分

 家庭裁判所の審判と処分の流れは下図の通りです(法務省抜粋)。


 家庭裁判所の審判で決定される処分には、つぎのようなものがあります。

1. 審議不開始
 非行事実を確認できないときなどの処置で、不起訴のようなものです。
2. 検察官送致(逆送致)
 家庭裁判所から検察に「犯罪少年」を送り返すことを指します。この場合、少年は成人と同様に、公開の法廷での刑事裁判を受けます。

 検察官送致は、年齢超過による場合(審判時に20歳以上)と20条送致(同法20条1項)があります。20条送致とは「その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認める場合、または原則として16歳以上で故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合は、検察官へ送致すること(第20条)」です。
 刑事処分相当と認める場合には、保護不能の場合と保護不適の場合があります。
  1. 保護不能:非行化の要因の軽減・除去が不可能な場合、つまり、再犯の繰り返しのような場合
  2. 保護不適:更正の可能性があっても、犯罪事実が凶悪・重大な場合
3. 児童相談所長送致等
 児童福祉法の規定による措置を相当と認めるときは、権限を有する都道府県知事又は児童相談所長に送致します。
 児童福祉法には都道府県知事のとるべき措置に関する規定が無く、実際は、児童相談所長送致となります。
 児童相談所がその後、児童自立支援施設への入所等の措置を行う場合は、基本的には親権者等の同意が必要となります(社会的養護)。
4. 保護処分
上記以外の場合に、次の何れかの保護処分が決定されますが、不処分(教育的な措置で更正を目指す処分であり、刑事処分で言えば、執行猶予のようなもの)の判断もあります。
  1. 保護観察(保護観察所):
     保護監察官(国家公務員)と保護司が、遵守事項を遵守するよう指導、監督し、対象者の改善・更正を図るもので、これ自体は刑罰ではありません。
  2. 児童自立支援施設、又は児童養護施設に送致(児童福祉施設):
     児童福祉法に関連する保護措置です。児童自立支援施設(教護院)は、犯罪などの不良行為のおそれがある児童や、家庭環境等から生活指導を要する児童を入所または通所させ、必要な指導を行なって自立を支援する施設で、全国に58箇所あります。
  3. 少年院に送致
     少年の少年院送致は、平成19年の改正より14歳未満のものに対しても可能となっています。「おおむね12歳以上」に含まれ少年院に送致される可能性があります。

犯罪少年の刑事裁判での処分緩和:

 家庭裁判所による審判が検察官送致(逆送致)であり、その後「刑事裁判」で刑罰が下された場合、18歳未満の犯罪少年は処分が緩和されます。
 罪を犯したとき18歳未満の場合は、「死刑の場合は無期刑」、「無期刑の場合は有期の懲役又は禁錮」が緩和されます。




少年院

 少年院とは、家庭裁判所の審判により「保護処分」として送致された者を収容し、矯正教育や社会復帰支援等を行う施設です。
 少年院法で定められており、以下の種類があります(第三種を除き、 男女は別の施設)。

  1. 第一種少年院:
     おおむね12歳以上23歳未満の者を収容する。(旧初等、中等少年院)
  2. 第二種少年院:
     犯罪傾向の進んだ、おおむね16歳以上23歳未満の者を収容する。(旧特別少年院)
  3. 第三種少年院:
     心身に著しい故障のある、12歳以上26歳未満の者を収容する。(旧医療少年院)
  4. 第四種少年院:
     刑の執行を受けるものを収容する。
  5. 第五種少年院:
     二年の保護観察処分を受けた特定少年で、その期間に遵守事項を守らない程度が重い者を収容する。

 少年院では、「刑事処分」となり懲役や禁錮の言い渡しを受けた少年を収容する場合もあります。
 対象は16歳未満で、少年院での矯正教育が有効と認められたものであり、16歳に達するまでです(それ以外は、少年院ではなく「少年刑務所」に収容される)。


少年院における処遇:

 少年院では下記のような矯正教育や社会復帰支援等を行っています(法務省)。

  1. 生活指導 : 善良な社会人として自立した生活を営むための知識・生活態度の習得。
  2. 職業指導 : 勤労意欲の喚起、職業上有用な知識・技能(資格)の習得。
  3. 教科指導 : 基礎学力の向上、義務教育、高校卒業程度認定試験受験指導。
  4. 体育指導 : 基礎体力の向上。
  5. 特別活動指導 : 社会貢献活動、野外活動、音楽の実施
  6. 就業に関する支援 : ハローワーク(公共職業安定所)の職員による職業相談、職業紹介、職業講話等の実施など。
  7. 住居・宿泊場所に関する支援: 適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することの支援。障害を有しかつ、適当な帰住予定地のない者への特別調整の実施。
  8. そのほか、医療及び療養を受けることの支援、「退院者などからの相談」の実施。


少年犯罪の現状

 近年の少年犯罪の現状について犯罪白書のデータをもとにまとめます。
(資料:令和元年版 犯罪白書: 第2編平成における犯罪・少年非行の動向> 第2章少年非行の動向)

  1. 少年による刑法犯の検挙人員は平成16年以降減少し続けている。人口比でも減少傾向が見られる(人口比で比較すると成人より少年の方が多い)。
  2. 検挙されたもののうち、学生・生徒は約70%を占める。
  3. 年齢別では「中間少年(16、17歳)」が最も多く、その後「年少少年(14、15歳)」、「年長少年(18、19歳)」、「触法少年(14歳未満)」と続く(年齢別資料)。
  4. 罪名別では、窃盗が約60%と最も多く、横領が約10%、暴行と続く。殺人・強盗・放火・強制性交等の凶悪犯は約2%程度。
  5. 共犯事件は、約20%程度であり、約80%が単独犯である。


非行の要因に関する理論:

 非行の要因を説明する理論としては「外的要因」(環境や社会など)と「内的要因」(パーソナリティや欲求など)に分けられる。
 外的要因を重視する理論としては、下記のような理論がある(文献:井上,2017、ほか)。

  1. 社会的絆理論
     多くの人が逸脱しないのはそれを抑止する統制メカニズムとして「社会的絆」が存在するためであるという理論。T. Hirschi(ハーシ)によって提唱された。
  2. ラベリング理論(逸脱理論):
     逸脱(社会規範から逸れた行為)というのは、行為者の内的な属性ではなく、周囲からのラベリング(レッテル貼り)によって生み出されるという理論。S.B.Howard(ハワード)らによって提唱された。
  3. アノミー理論:
     文化構造と社会・経済構造の不統合は、個人に対してストレイン(緊張)をもたらし、個人はそのストレインに対して処理あるいは適応するために、非行(犯罪さらに逸脱一般)を行うという理論。R.K.Merton(マートン)によって提唱された。
  4. 分化的接触理論:
     非行・犯罪行為と言えども通常の行為と同一のモデルで説明され、「学習」によって習得されるという理論。E.H.Sutherland & D.R.Cressey(サザーランドとクレッシー)によって提唱された。
  5. 漂流理論:
     少年たちは順法的な生活を前提としている。そして非行は、少年たちが自由に行動し、時に反法的な行動をとるという「漂流」を行ったものだと考える理論。D.Matza(マッツァ)によって提唱された。
  6. 非行下位文化理論:
     一般社会の文化や規範は、中流階級の人に有利になっており、下層の人たちは文化や規範に従う限り、社会的な成功を得る可能性は少ない。その不満が、一般社会に対抗する文化を反動的に作り出し、その文化が非行を発生させるという理論。A.K.Cohen(コーヘン)によって提唱された。
  7. 文化葛藤理論:
     ある規範や文化に基づく行為が、同じ行為を犯罪として規制する別の規範や文化と接触・衝突し、葛藤することが犯罪の原因であるという理論。T.Sellin(セリン)によって提唱された。

社会的絆理論(T. Hirschi):

 社会的絆理論は、T. Hirschi(ハーシ)によって提唱された非行の要因を説明する理論です。
 ハーシは、人は逸脱して当然であるにも関わらず(逸脱可能性を持つ)、「なぜ多くの人が逸脱しないのか」を問うべきだと考えました。
 そして、多くの人が逸脱しないのは、それを抑止する統制メカニズムとして「社会的絆」が存在するためであると考えました。
 「社会的絆」には以下の4つから構成されています。

  1. 愛着(アタッチメント)
    他者に対して基本的に肯定的で親密な感情
  2. コミットメント
    集団(家族)が自身に抱いている理想像を受容すること。既存の社会的枠組みに沿った価値や目標達成に関わる度合い。
  3. 包絡(インボルブメント)
    集団のルールや規範にのっとり行為する時間(「構造化された時間」の中で生活している事)
  4. 信念(ブリーフ)
    全体社会の公正さや法の正当性に対する信頼


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