ここでは、司法・犯罪分野における「犯罪者処遇モデル」と「保護観察(更生保護法)」についてまとめます。
用語:
犯罪者処遇モデルとして「医療モデル」「公正モデル」、「RNRモデル」「GLモデル」をあげます(引用文献 )。
「医療モデル(Medical model)」とは、犯罪を何らかの疾患や不適応の表れであると捉え、犯罪者は病人であり、処遇を治療行為とみなす考え方のことです。犯罪が個人の罪であるというよりも、社会状況などによって引き起こされると考えます。
「公正モデル(Justice model)」とは、医療モデルへの批判として、処遇が更生や社会復帰を名目に犯罪者を甘やかしており、より厳格で正義にかなう処罰が必要と考えます。また医療モデルは治癒が終わるまでは原則として施設から出さないため、責任を超えた自由の剥奪であると考えます。
「RNRモデル」(リスク-ニーズ-応答性モデル)は、DA. Andrews とJ. Bonta が主張した犯罪者処遇のモデルであり、下記の3つの原則に基づきます。
RNRモデルは実証的研究や、そのレビューによって有効性が報告されています。
再犯のリスク要因としては、「犯罪歴」といった静的な因子と、変化しうる動的な因子として基本的には「犯罪誘発的要因」が挙げられます。
「犯罪誘発的要因」とは、「犯罪促進的態度」「反社会的人格パターン」「犯罪促進的な者との交流」「仕事・学校の状況(失業.学業不振)」「家族・婚姻の状況(不安定など)」「薬物乱用」「余暇・娯楽の状況」があるとされ、RNRモデルではこの変化しうる動的な因子に対して処遇を行います。
「GLモデル」(Good Lives model)は、RNRモデル批判を批判したT. Wardらが提唱した犯罪者処遇のモデルです。
GLモデルでは、人間は生まれながらに何らかの「よさ」を追求し、犯罪行為はそれを不適切な手段で得ようとした結果である考えます。そして、直接的なリスク管理よりも本人のエンパワメントを通じた「よさ」(行為主体性、交友関係、内的平和や創造性など)の獲得が処遇の目的となります。
(例:他人との親密さという「よさ」を得ようとして暴力を用いてしまうと考え、本人のエンパワメントを通じて親密さが得られるような処遇を行う)
更生保護法とは、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより(社会内処遇)「再犯の防止や非行をなくし、自立、改善更生を助ける」ための法律です。
さらに、「恩赦の適正な運用を図る」、「犯罪予防の活動の促進等」を行い、社会の保護と個人及び公共の福祉を増進することも目的としています。
更生保護には、下記の制度が含まれています。
法務省の地方支分部局である「保護観察所」は、更生保護に関して下記のような業務を担います。
保護観察とは、「”犯罪をした人”または”非行のある少年”が社会の中で更生するように、保護観察官及び保護司による指導と支援を行うもの」です(引用 )。
保護の対象者(保護観察対象者)は、成人は「仮釈放者」・「保護観察付執行猶予者」、少年は「少年院仮退院者」・「保護観察処分少年」となります。
「地方更生保護委員会」は、刑事施設(刑務所・少年院など)からの仮釈放や仮退院者の許可及び、それらの取り消しをおこないます。受刑者の仮釈放審理に当たっては、被害者は意見を述べることができます(意見聴取制度)。
(地方更生保護委員会は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の8か所に設置)
保護観察を行う「保護観察官」と「保護司」の役割は下記のようになります。
保護観察官と保護司が行う「指導(指導監督)」と「支援(補導援護)」とは下記の内容となります。
指導(指導監督) |
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| 支援(補導援護) |
対象者が自立した生活を送るための援助・助言を行う。
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保護観察対象者には必ず守らなければならないルールである「遵守事項」が課されます。遵守事項には「一般遵守事項」と「特別遵守事項」があります。
特別遵守事項は、保護観察処分少年に対しては保護観察所の長が「保護観察の開始時」に裁判所の意見を聴いて定めます。少年院仮退院者又は仮釈放者に対しては地方更生保護委員会が釈放の時までに定めます。
正当な理由がなく遵守事項を守らないと、地方更生保護委員会又は保護観察所の長は、対象者を引致(強制的に一定の場所や機関へ連行)する事ができます。その後の地方更生保護委員会による仮釈放や仮退院の取り消しによっては、刑務所や少年院に収容される事があります。
更生緊急保護とは、「親族・縁故者等からの援助」や、公共の衛生福祉等からの保護を受けることのできない場合に、国が保護し生活に必要な衣食住等の提供や、自立にむけた指導や援助を行うことです(参照 )。
更生緊急保護の措置は、保護観察所とその委託先である更生保護会(更生保護事業を営む民間団体)が行っています。
措置(援助)の内容としては、「宿泊所の供与,食事付宿泊の供与,それに伴う補導帰住のあっせん(運賃割引証の交付,旅費の支給),一時の食事給与,衣料給与,医療,就職に関する援助等」があります。更生保護施設が措置において主要な役割を果たします。