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公認心理師試験用語集 : 犯罪者処遇・保護観察

5 - 法律・行政司法・犯罪に関する法律 > 63- 犯罪者処遇・保護観察

 ここでは、司法・犯罪分野における「犯罪者処遇モデル」と「保護観察(更生保護法)」についてまとめます。
用語:医療・公正モデル / RNRモデル / GLモデル / 保護観察(更生保護法)



犯罪者処遇モデル

 犯罪者処遇モデルとして「医療モデル」「公正モデル」、「RNRモデル」「GLモデル」をあげます(引用文献)。

医療モデル・公正モデル:

 「医療モデル(Medical model)」とは、犯罪を何らかの疾患や不適応の表れであると捉え、犯罪者は病人であり、処遇を治療行為とみなす考え方のことです。犯罪が個人の罪であるというよりも、社会状況などによって引き起こされると考えます。
 「公正モデル(Justice model)」とは、医療モデルへの批判として、処遇が更生や社会復帰を名目に犯罪者を甘やかしており、より厳格で正義にかなう処罰が必要と考えます。また医療モデルは治癒が終わるまでは原則として施設から出さないため、責任を超えた自由の剥奪であると考えます。

RNRモデル(Risk Need Responsivity model):

 「RNRモデル」(リスク-ニーズ-応答性モデル)は、DA. Andrews とJ. Bonta が主張した犯罪者処遇のモデルであり、下記の3つの原則に基づきます。
RNRモデルは実証的研究や、そのレビューによって有効性が報告されています。

  1. リスク原則:処遇の密度は再犯リスクの高い者に集中させなければならない。
  2. ニーズ原則:処遇は犯罪誘発要因に限定して行われなければならない。
  3. 応答性原則:処遇は認知行動療法を中心にその者の応答性を高めるようになされなければならない(学習効果を高めるようになされるべき)。

 再犯のリスク要因としては、「犯罪歴」といった静的な因子と、変化しうる動的な因子として基本的には「犯罪誘発的要因」が挙げられます。
 「犯罪誘発的要因」とは、「犯罪促進的態度」「反社会的人格パターン」「犯罪促進的な者との交流」「仕事・学校の状況(失業.学業不振)」「家族・婚姻の状況(不安定など)」「薬物乱用」「余暇・娯楽の状況」があるとされ、RNRモデルではこの変化しうる動的な因子に対して処遇を行います。


GLモデル(Good Lives model):

 「GLモデル」(Good Lives model)は、RNRモデル批判を批判したT. Wardらが提唱した犯罪者処遇のモデルです。
 GLモデルでは、人間は生まれながらに何らかの「よさ」を追求し、犯罪行為はそれを不適切な手段で得ようとした結果である考えます。そして、直接的なリスク管理よりも本人のエンパワメントを通じた「よさ」(行為主体性、交友関係、内的平和や創造性など)の獲得が処遇の目的となります。
 (例:他人との親密さという「よさ」を得ようとして暴力を用いてしまうと考え、本人のエンパワメントを通じて親密さが得られるような処遇を行う)



保護観察(更生保護法)

 更生保護法とは、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより(社会内処遇)「再犯の防止や非行をなくし、自立、改善更生を助ける」ための法律です。
 さらに、「恩赦の適正な運用を図る」、「犯罪予防の活動の促進等」を行い、社会の保護と個人及び公共の福祉を増進することも目的としています。
 更生保護には、仮釈放制度、保護観察更生緊急保護、恩赦制度や、医療観察制度(心神喪失者等医療観察法)、犯罪予防活動などを含んでいます。

 保護観察とは、「”犯罪をした人”または”非行のある少年”が社会の中で更生するように、保護観察官及び保護司による指導と支援を行うもの」です(引用)。
 保護の対象者(保護観察対象者)は、成人は「仮釈放者」・「保護観察付執行猶予者」、少年は「少年院仮退院者」・「保護観察処分少年」となります。
 刑事施設(刑務所・少年院など)からの仮釈放や仮退院者の許可は「地方更生保護委員会」(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の8か所に設置)がおこないます。


保護観察官と保護司による指導・支援:

 保護観察を行う「保護観察官」と「保護司」の役割は下記のようになります。

  1. 保護観察官
     医学、心理学、教育学、社会学などの専門的知識を持つ国家公務員。
     保護観察の実施計画の策定、遵守事項違反・再犯その他危機場面での措置や、担当保護司に対する助言や方針の協議、専門的処遇プログラムの実施などを行う。
  2. 保護司
     地域性・民間性を持つボランティア。
     対象者との日常的な面接による助言・指導、対象者の家族からの相談に対する助言や、地域の活動や就労先等に関する情報提供や同行などを行う。

 保護観察官と保護司が行う「指導(指導監督)」と「支援(補導援護)」とは下記の内容となります。

指導(指導監督)

  1. 行状の把握: 面接で対象者と接触し、生活状況等を把握する。
  2. 指示・措置: 遵守事項を守って生活するよう必要な指示・措置をする。
  3. 専門的処遇: 特定の犯罪傾向を改善するための専門的処遇をする。
     専門的処遇プログラムは「性犯罪・覚せい剤依存・暴力傾向・飲酒運転」の4種。

支援(補導援護)

対象者が自立した生活を送るための援助・助言を行う。
  1. 住居・宿泊場所の援助: 同居可能な家族と連絡を取らせる。更生保護施設等への入所を調整する。
  2. 医療・療養の援助: 適切な医療機関の情報提供。通院や服薬を継続するよう助言。
  3. 職業補導・就職援助: 就労に関する情報提供。ハローワークに同行。
  4. 教養訓練の援助: ボランティア活動への参加などを促す。健全な余暇の過ごし方の助言。
  5. 生活環境の改善・調整: 学校へ協力を依頼する。家族関係の調整をする。
  6. 生活指導: アルコールや薬物依存を支援する団体の情報提供。社会生活技能訓練の実施。

保護観察対象者の遵守事項:

 保護観察対象者には必ず守らなければならないルールである「遵守事項」が課されます。遵守事項には「一般遵守事項」と「特別遵守事項」があります。
 「一般遵守事項」は対象者全員に付けられ、保護観察官や保護司の面接を受けたり、転居や旅行の場合には、保護観察所長の許可をうけることなどの事項があります。
 「特別遵守事項」は個人の問題性に合わせて付けられ、性犯罪者等の専門的処遇プログラムを受けたり、就職活動や仕事をする、共犯者との交際を絶つなどの事項があります。

 正当な理由がなく遵守事項を守らないと、地方更生保護委員会又は保護観察所の長は、対象者を引致(強制的に一定の場所や機関へ連行)する事ができます。その後、刑務所や少年院に収容するための手続をとる事があります。


更生緊急保護:

 更生緊急保護とは、「親族・縁故者等からの援助」や、公共の衛生福祉等からの保護を受けることのできない場合に、国が保護し生活に必要な衣食住等の提供や、自立にむけた指導や援助を行うことです(参照)。
 更生緊急保護の措置は、保護観察所とその委託先である更生保護会(更生保護事業を営む民間団体)が行っています。
 措置(援助)の内容としては、「宿泊所の供与,食事付宿泊の供与,それに伴う補導帰住のあっせん(運賃割引証の交付,旅費の支給),一時の食事給与,衣料給与,医療,就職に関する援助等」があります。更生保護施設が措置において主要な役割を果たします。



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