ここでは、高齢者に関する法律である「高齢者虐待防止法」と「新オレンジプラン」、及び「高齢者福祉領域での心理職の役割」についてまとめます。
用語:
高齢者虐待防止法は、「高齢者に対する虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」のことであり、2005(平成17)年に制定、2006(平成18)年に施行されました。
法律は、高齢者への虐待防止と早期発見・早期対応を目的とし、家庭内、施設・従業者の従業者等による虐待を対象とし、市区町村の責務を規定しています。
養護者は、虐待を自覚していないことが多く、法律の目的には「養護者が虐待を行うに至らないように支援すること」が含まれています。
(詳細: ▼ 市区町村の責務)
高齢者は下記のものをさします。65歳未満でも下記のものは高齢者とみなされ適用対象となります。
虐待者は「養護者」及び「養介護施設従事者等」が対象となります。
高齢者の虐待の種類には下記の5つが定められています。
身体的虐待 | 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。身体的拘束も、身体的虐待に該当。 |
介護・世話の放棄・放任(ネグレクト) | 高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。 | 心理的虐待 | 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。 | 性的虐待 | 高齢者にわいせつな行為をすること、させること。 | 経済的虐待 | 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分すること。その他、当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。 |
一般市民は、高齢者虐待を”受けたと思われる”高齢者を発見した場合は、通報の「努力義務」があります。生命又は身体に重大な危険の場合は「通報義務」が課せられれます。
施設従事者等には「通報義務」が課せられています。
通報先は「市町村」となります。守秘義務は例外扱いされ、通報義務が優先されます。
高齢者虐待に関する他の留意点としては下記が挙げられます。
新オレンジプランは、2015(平成27)年に発表された国家戦略で、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」を目指しています。
厚生労働省、内閣官房、内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の12府省庁をまたいで作成されています。
下記の7つの視点から、認知施策の推進を行っています。
認知症初期集中支援チームは、認知症の早期支援機能を担うこと(地域での生活が維持できるような支援をできる限り早い段階で包括的に提供)を目的として、オレンジプランに基づき創設されました。
認知症初期集中支援チームは「保健師、看護師、作業療法士、介護福祉士など」の医療福祉に関する国家資格を有し、かつケア実務経験年数3年以上で、研修受講と試験合格した者で編成されます。
認知症初期集中支援チームは下記のような役割を包括的・集中的(おおむね6カ月)に果たします。6か月を超えるような場合は、地域包括支援センターへ役割を引き継ぎます。
認知症ケアパスとは「認知症の人の状態に応じた適切なサービス提供の流れ」とされます(参照:厚生労働省)。
各市町村では、認知症ケアパスを作成しており、認知症の人やその家族が「いつ・どこで・どのような」医療や介護サービスが受けられるのか、認知症の様態に応じたサービス提供の流れを「地域ごと」にまとめています。
市町村の標準的な認知症ケアパスを元にして、個々人のケアプランを介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成します。
高齢者福祉領域では、これまで心理的支援に関しても、社会福祉、介護福祉、医療関係者が行ってきました。
今後、国家資格である公認心理師としては、以下のような役割が求められるとされています
また、多職種との協働が求められ、包括的かつ継続的な支援が必要となります。
そのためには、フォーマルな連携(地域ケア会議)やインフォーマルな連携を積極的に行うことが望まれるとされています。
また、高齢者のケアに関わり「身体拘束禁止による高齢者虐待」などを理解しておく事も重要だと考えられます。