ここでは、嫌悪条件づけ、回避・逃避学習、及び、学習性無力感について説明します。
用語:嫌悪条件づけ(嫌悪療法、生物的制約) / 般化と弁別 / 回避・逃避と学習性無力感
「嫌悪刺激」とは生物に恐怖や不快を与える刺激であり、代表的には電気刺激や、叱る事などがあります。
条件づけにおいて「嫌悪刺激」が用いられると、「ネガティブな情動」が条件づけされることになり、これを嫌悪条件づけと言います。
「嫌悪療法」は、好ましくない行動を抑止するために、その行動と嫌悪刺激の条件づけを行う治療法です。代表例が、アルコール依存症の患者に抗酒剤(お酒を飲むと気分が悪くなる薬)を用いることです。
味覚嫌悪条件づけとは、食物を摂取したことにより体調を崩すと二度とその食物を摂取しなくなるという条件づけを言います。(例:生牡蠣にあたってしまうと、その後、牡蠣が食べられなくなります。)
この条件づけは、J.Garciaらがネズミによる実験でも確認され、ガルシア効果とも呼ばれます。
実験では、甘味液を与えた後、胃の不調を生じさせるX線を照射させる群(体調不良)と電撃を与える群(痛み)のネズミを比較し、その結果はX線照射の群が甘味液の摂取を避けるようになりました。
これは食物の摂取(味覚や嗅覚)においては、電撃との条件づけよりも、体調不良との条件づけの方が強く、優先されるという動物の「生物的制約」を示しているとされます。
生物学制約とは、動物の種によって条件づけできる刺激や反応に制約があることをさします。
「般化(はんか)」とは、条件づけされた刺激と類似した刺激に同様の反応を示すことを指します。
「弁別(べんべつ)」とは、類似した刺激を異なるものと識別することを言います。分化とも言います。
古典的条件づけにおいて、一方の刺激を強化し、他方の刺激を強化しないという手続きをくりかえし与えると、強化される刺激に対してのみ条件反応が生起するようになることを分化といい、こうした手続きを分化条件づけといいます。
動物に対して、困難な分化条件づけ、例えば、ほとんど判別できない大きさの違いで条件づけたりしようとすると、実験動物の行動に混乱が生じることがあります。
これを実験神経症といい、Pavlov,I.P が犬の実験で発見しました。不安神経症に関連するという考えもあります。
逃避とは、「嫌悪刺激が引き続き起こらないようするための行動」であり、逃避学習とは「逃避がなされるまでの反応が短くなる学習過程(行動によって、不快刺激が消失や軽減する学習過程)」をさします。
回避とは「嫌悪刺激が与えられないように前もって示す反応」であり、回避学習とは「嫌悪刺激に先行した合図が呈示されたときに、回避ができるようになる学習過程(不快刺激を回避する学習過程)」をさします。
( 補足: ▼ 受動的・能動的回避学習 )
逃避や回避が不可能な場所で、対象に嫌悪刺激を与え続けるとほとんど動かなくなり、回避可能な状態になってもその刺激を受け続けるようになります。また、別の状況でも般化が起こり、新たな回避行動の学習ができなくなり、この現象が「学習性無力感」と呼ばれます。
学習性無力感は、Seligman,M.E.P. (セリグマン)が犬による研究で発見し、抑うつや無気力症(アパシー)の形成モデルとも考えられています。セリグマンは、ポジティブ心理学の提唱者としても有名です。