ここでは、Bandura,A.(バンデューラ)が提唱した社会的学習理論について説明します。
用語:観察学習 / モデリング / 自己効力感 / 自尊感情・自己肯定感
社会的学習という言葉は多義的に用いられていますが、一般に「他者の影響を受けて、社会的習慣、態度、価値観、行動を習得していく学習」をさします。
観察学習とは、他者の行動の結果をモデルとして観察することで成立する学習の理論で、Banduraが提唱しました。
Banduraは、人間においては直接学習より観察学習が支配的と考えました。
モデリングとは、模倣や同一視といった概念を包括するものとしてBandura,A.が提唱し、「他者の行動やその結果をモデル(手本)として観察することにより,観察者の行動に変化が生ずる現象のこと」を指します。
モデリングは、下記の4つのプロセスによって成立するという仮説を立てています。
ここで重要なことは、他者の行動を観察することが自分の行動の変容に結びつくということですが、この事は、実際の強化や罰以外に、イメージによる強化が意味を持つということを意味します。
そして、イメージによる強化の形態には、次の3つがあるとされています。
「代理強化」は、観察によるオペラント条件づけ(自発的な行動に対する条件づけ)と言えます。
一方、「代理的条件づけ(代理的レスポンデント条件)」は、観察による古典的条件づけです。無条件刺激の経験が無くとも観察で条件づけが生じるというものです。
Bandura,A(バンデューラ) は社会的学習に関連して、人間の行動を決定する重要な要因として「自己効力感」を提唱しました。
自己効力感とは、「自分が行為の主体であり、自分が行為を統制しており、外部からの要請に対応できるという確信の程度」のことを指します。
自分の働きかけが外界に影響を与える事に対する自己評価であり、未来、将来的な確信の程度とも言えます。
( 補足: ▼ 結果予期/期待・効力予期/期待 )
自己効力感の認識に影響を与える要因として、バンデューラは次の4つを挙げています。
その後の研究で、上記4つ以外にも自己効力感に影響を与える要因として、下記の報告されています。
Bandura,A は、社会的認知理論(社会的学習理論の発展)の中で相互決定主義に立っています。
相互決定主義とは、「行動」「環境要因」「個人要因」の三者は、相互に影響を与え合い、互いの決定因になるという考え方です。
自己効力感は行動に影響を与え、行動はそれに伴う体験(制御体験等)を通して、自己効力感に影響を与えるといった事だと思われます。
自己効力感の類似用語に、「自尊感情」や「自己肯定感」があります。それぞれの意味を合わせて記載しておきます。