ここでは、知能に関する理論について記載していきます。
ビネーとウェクスラーの他に、知能に関する理論として下記が挙げられます。
Spearman,C.E(スピアマン)は、知能についての因子分析を最初に行ったとされます。
スピアマンは、小学生の成績の分析から、各学科に共通する因子と個別の学科の課題に固有の因子があるとする「二因子説」を提唱しました。
二因子は、「一般因子(g因子)」と「特殊因子(s因子)」と呼ばれます。
知能を生得的側面と発達的側面からとらえたものに、Hebb,D.O (ヘッブ)の「知能A/B」があります。
(詳細:▼知能A/B)
Thurstone,L.L(サーストン)は、大学生と中学生の知能検査の分析から、知能は8ー10の比較的独立した機能から構成されているとする「多因子説」を提唱しました。
その後、彼の因子のいくつかには、共通する一般知能因子が含まれている可能性が指摘されました。
多因子には、下記の7つがあるとされます。
Guilford,J.P(ギルフォード)は、知能が情報処理機能であるという観点から、「内容、操作、所産」という3次元の「知能構造モデル」を提唱しました。
知能因子は、内容4種類*操作5種類*所産6種類=合計120種類からなるとされています。
Cattell,R.B(キャッテル) は、「一般的知能」は、文化や教育による過去の経験や学習の影響を強く受けて発達する「結晶性知能」と、文化や教育の影響が少ない「流動性知能」に分ける事ができるとしました。
過去の経験や学習が結晶化した判断力や習慣です。文化や教育による影響が受けやすく、年齢を重ねても上昇、維持されると言われています。
「言語性」のテスト(単語理解や一般知識など)に反映されると考えられいます。
新しい場面で適応を必要とするときに働く能力です。脳や個体の生理的成熟と密接に関係しているとされます。従来は20代以降下降するとされていましたが、60代まで維持されるデータも示されています。ピーク後は、結晶性知能と比較すると下降が急になります。
「非言語性」のテスト(計算、図形、推理など)に反映されると考えられています。
Sternberg, R.J.(スタンバーグ)は、知能を「人の生活に関連した現実環境に対する目的的適応、その選択及び形成に向けられた心的活動」であると考えました。
そして、知能には「コンポーネント的/分析的能力」、「経験的/創造的能力」、「実際的/文脈的能力」の3つのバランスが重要であると考え、「鼎立理論 または 三頭理論」を提唱しました。
鼎立理論は、「コンポーネント理論(知能の構造を示し、結晶性知能と流動性知能についての理論)」、「経験理論(新しい状況や課題に対処する能力の理論と、情報処理を自動化する能力の理論)」、「文脈理論(知的行動が社会文化的文脈によってどのように規定されるかの理論)」の3つから構成されています。
Gardner, H. (ガードナー)は、「人は皆それぞれ一組のMultiple Intelligences(多重知性)を持っており、少なくとも8つの知的活動の特定の分野で、才能を大いに伸ばすことが出来る」とし、「多重知能(MI理論)」を提唱しました。
下表に8つの多重因子とそれに関連する職業をまとめます。
知能 | 知能の説明 | 関連する職業 |
---|---|---|
言語的知能 | 話しことば・書きことばへの感受性、言語学習・運用能力など | 作家や演説家、弁護士など |
論理数学的知能 | 問題を論理的に分析したり、数学的な操作をしたり、問題を科学的に究明する能力 | 数学者や科学者 |
音楽的知能 | リズムや音程・和音・音色の識別、音楽演奏や作曲・鑑賞のスキル | 作曲家や演奏家 |
身体運動的知能 | 体全体や身体部位を問題解決や創造のために使う能力 | ダンサーや俳優、スポーツ選手、工芸家 |
空間的知能 | 空間のパターンを認識して操作する能力 | パイロットや画家、彫刻家、建築家、棋士 |
対人的知能 | 他人の意図や動機・欲求を理解して、他人とうまくやっていく能力 | 外交販売員や教師、政治的指導者 |
内省的知能 | 自分自身を理解して、自己の作業モデルを用いて自分の生活を統制する能力 | 精神分析家、宗教的指導者 |
博物的知能 | 自然や人工物の種類を識別する能力 |
生物学者や環境・生物保護活動家 |