パーソナリティを研究する学問は、パーソナリティ心理学や、人格心理学、性格心理学と呼ばれます。
ここでは、パーソナリティ心理学の代表的な理論である「類型論と特性論の比較」と「類型論の各理論」についてまとめています。
用語:パーソナリティ / 気質 / 類型論と特性論の特徴 / クレッチマーとシェルドン(Kretshmer・Sheldon) / シュナイダー(Schneider) / ユング(Jung:向性論・タイプ論)
パーソナリティとは、「精神的身体的体系をもった個人内の力動的体制(状況や経験によって動的に変化する)であり、その個人特有の環境への適応を決定するもの」、とオルポートは定義しています(引用:心理学概論)。
パーソナリティは安定性がみられる一方、環境(経験)や主体的努力によって変化するとされます。
パーソナリティは、ラテン語の「ペルソナ(仮面)」に由来しており、個人の社会的な役割・外見的な自分を言う意味も含まれます。
パーソナリティ研究の歴史は長いですが、最近では、用語の厳密な区別をせずに、統一的に「パーソナリティ、あるいは、性格」という用語を用いることが多いです。
「気質」(temperament)とは、生まれてすぐ現れ、ある程度の期間持続する行動の個人差であるとされます。遺伝的な要因が大きいとされます。
人は特定の気質をもって生まれ、周囲の環境と相互作用を重ねながら、独自のパーソナリティを築くと考えられます(関連:クロニンジャー)。
A.ThomasとS.Chessらによって行われた「ニューヨーク縦断研究」によって、気質の9つの指標(活動水準、周期性、接近-回避、順応性、敏感性、反応の強さ、機嫌、散漫性、持続性と注意)が見いだされました。そして、それに基づき、乳児は「扱いやすい」「扱いにくい」「エンジンがかかりにくい」の3つ分かれることが示されました。
気質の指標としてはさまざまですが、大きくは「情緒性」「自己統制性」「活動水準」に集約される事が多いです。
人間の性格を、「原理に基づき典型的な行動や心的特性を設定した類型に分類することで、その全体像を捉えようとする」考え方です。
人間の性格とは、「心理的特性の構成とその量的差異によって表すことができる」という考え方です。
性格類型論と性格特性論の長所・短所の比較を下表にまとめました。
比較内容 | 性格類型論 | 性格特性論 |
---|---|---|
長所 | 性格の直観的・全体的な把握が可能である。 大まかな、個人の社会への適応法や態度、傾向がわかる。 |
個人別の特性が理解しやすい。 中間型なども理解可能で、画一的でない。 |
短所 | 類型に当てはまらない部分を見逃したり、固定化する。 中間型や混合型がいるため、その分類が困難。 |
細かすぎるため、全体的な把握ができない。 傾向がわからない。 |
代表的理論 |
性格類型論として代表的な理論について説明します。
クレッチーマーは、精神病患者の分析から患者の体型による性格の違いを発見し、「分裂気質」・「循環(躁鬱)気質」・「粘着気質」の3つの特性に分類した性格論を展開しました。
シェルドンは、クレッチマーによる体型の分類が観念的過ぎること、精神疾患患者に基づいていることなどを批判し、正常な男子の体型の調査をもとに、胎生期の胚葉発達においてどの部位が特に発達しているかによって類型に名前を付けてました。
下表にクレッチーマーとシェルドンの類型についてまとめます。
体型 | 気質 | 性格 |
---|---|---|
クレッチーマーの性格類型論 | ||
細身型 | 分裂気質 | 内気、繊細、非社交的 |
肥満型 | 循環(躁うつ)気質 | 陽気、同調性、高揚と沈滞が交互に起こる |
闘志型 | 粘着気質 | 几帳面、粘り強い、融通が利かない |
シェルドンの性格類型論 | ||
外胚葉型 神経系統や感覚器官の発達は良いが虚弱な体型(扁平で痩せ) |
神経緊張型 | 控えめ、過敏、疲れやすい、非社交的 |
内胚葉型 消化器系(内臓器官)がよく発達した柔らかでまるい肥満型 |
内臓緊張型 | 安楽を好む、生活を楽しむ、社交的 |
中胚葉型 筋肉や骨の発育が良い頑丈な体型 |
身体緊張型 | 活動的、精力的、冒険を好む、自己主張的 |
Schneider,K.(シュナイダー)は精神病質者を「自らの異常性に自ら悩む」か「社会がその異常性のために悩まされる存在である人々」とし、異常性格を10分類しました。
ユング(Jung,C.G.)の性格論は、「向性」に基づきます。
向性とは、心的エネルギーの方向のことです。内向に基づく態度として「内向性」と「外向性」があります。
ユングのタイプ論とは、内向性と外向性と、4つの心的機能の組み合わせにより、人間を「8つのタイプ」に分類したものです。
心的機能は、下記の2分類・4つの機能からなります。
心的機能のうち主にその個人が依存している機能を「優越機能」と呼び、対となっている他方の機能を「劣等機能」と呼びます。