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心理学用語集: パーソナリティ障害

3 - 精神病理認知症・パーソナリティ障害 > 72- パーソナリティ障害

 ここでは、「パーソナリティ障害」についてまとめます。
用語:

  1. A群パーソナリティ障害
     猜疑性/妄想性,シゾイド/スキゾイド,統合失調型
  2. B群パーソナリティ障害
     境界性,演技性,自己愛性,反社会
  3. C群パーソナリティ障害
     回避性,依存性,強迫性
  4. 援助方法
     A-Tスピリット, メンタライゼーション

パーソナリティ障害の症状

 パーソナリティ障害とは、「思考・感情・行動などのパターンが平均から著しく逸脱し、社会生活や職業生活に支障をきたしている状態」のことを言います。
DSM-5の全般的診断基準としては下記が記載されています。長期間続いている必要があり、子どもには適用されません。

  1. 属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験及び行動の持続的様式
    (「認知」「感情性」「対人関係機能」「衝動の抑制」の4領域から2つ以上)
  2. 持続的様式は柔軟性がなく個人的及び社会的状況の幅広い範囲に広がる
  3. 持続的様式は、苦痛、または社会的・職業的な機能障害を引き起こしている
  4. 持続的様式は、少なくとも青年期ごろから長期間続く

 パーソナリティ障害は、正常な状態とは言えませんが、精神疾患(統合失調症・気分障害・不安障害など)とも区別されます。
また、正常な状態と精神疾患との重なりもあり、パーソナリティ障害と精神疾患が併発することも多いとされます。



パーソナリティ障害の種類

DSM-5では、A群、B群、C群の3つの群とそれらの下に10種のパーソナリティ障害が定義されています。

種別特徴
【 A群パーソナリティ障害 】 :
 奇異な・普通でない行動を示す群
猜疑性/妄想性 他人の動機を悪意あるものと解釈する広い不信と疑い深さ。
シゾイド/
スキゾイド
社会的関係を望まない。無関心や冷淡、平板な感情状態。
統合失調型 親密な関係が形成できない。認知や行動が風変り。
【 B群パーソナリティ障害 】:
 派手な・突飛な行動を示す群
境界性 対人関係、自己像、情動などの不安定性。著しい衝動性。
演技性 過度な情動性と人の注意を引こうとする行動。性的に誘惑的・挑発的な他者との交流。
自己愛性 誇大性、空想へのとらわれ、過度な賛美の要求、共感の欠如、他者の不当な利用や傲慢な態度。
反社会性 他人の権利を無視し侵害する行動(15歳以上で見られ、18歳以上で診断される)。違法行為、虚偽性、衝動性、無責任さや良心の欠如、将来の計画を立てられない、素行症。
【 C群パーソナリティ障害 】:
 不安・恐怖に関連する行動を示す群
回避性 社会的抑制、不全感。否定的認知に対する過敏性。それによる対人接触のある職業的活動の回避、遠慮、異常な引っ込み思案。
依存性 面倒見てもらいたいという過剰な欲求。従属的、しがみつき行動、分離不安。助言・保証をもとめ他者に責任をとってもらう。依存するため不快なこともやり過ぎる。
強迫性 秩序や完全主義、対人関係の統制へのとらわれ。それによる柔軟性、開放性、効率性の犠牲。規則や順序、予定への囚われ。仕事への過剰なのめりこみ、堅苦しさと頑固さ。


境界性パーソナリティ障害:

 「境界性パーソナリティ障害」は、境界例またはボーダーとも呼ばれます。DSM-5では、下記のような特徴が記載されています。

  1. 見捨てられることをさけようとする必死の努力
  2. 理想化とこきおろしの両極端に揺れ動く不安定な対人様式
  3. 衝動性による浪費、性行為、物質濫用、過食など
  4. 自殺行動やそぶり、自傷行為の繰り返し
  5. 感情の不安定性(強い不快感、抑うつ、苛立ち、不安、激しい怒りなど)/ 慢性的な空虚感
  6. 同一性障害(自己像の不安定)/ 一過性の妄想的考え、重篤な解離性症状

 治療においては、治療構造を崩そうとしたり(時間を守らないなど)、治療スタッフ間に認識の齟齬を生じさせて(人によって言う事や態度を変える)、治療を混乱させることがあるとされます。

 境界性パーソナリティ障害に関する理論には、自我心理学のカーンバーグ(Kernberg,O.)の「境界性人格構造(BPO)」やマスターソン(Masterson)の「見捨てられ抑うつ」があります。



パーソナリティ障害に対する援助の方法

 パーソナリティ障害に対する定型的なアプローチは確立されていないとされます。また、目標としては、パーソナリティの根本的変化ではなく、生活を営む上での困難を少しでも軽減し、適応的な形にすることが現実的とされています。

 援助の方法としては、心理療法として、「認知行動療法(弁証法的行動療法)」や「メンタライゼーションに基づく治療」や「転移に焦点をあてた心理療法」などが行われます。
その際には、主治医とセラピストの役割を分けて治療にあたる「A-Tスピリット」を用いることも多いとされています(主治医は投薬や身体的な管理を行う。セラピストは心理的援助を行う)。

  自傷他害や破壊的行動に及ぶクライエントに対しては、医療機関などと連携し、周到に準備された介入を行う必要があります。


メンタライゼーション:

 メンタライゼーションとは人の行為と関連付けて、自分や他者の心の状態を読み取る能力とされます。幼少期の愛着関係を通して獲得されると考えられています。
「メンタライゼーションに基づく治療」とは、クライエントのメンタライゼーションの促進に焦点を当てた心理療法です。境界性パーソナリティ障害に対する治療が有名です。  




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