ここでは、「パーソナリティ障害」についてまとめます。
用語:
パーソナリティ障害とは、「思考・感情・行動などのパターンが平均から著しく逸脱し、社会生活や職業生活に支障をきたしている状態」のことを言います。
DSM-5の全般的診断基準としては下記が記載されています。長期間続いている必要があり、子どもには適用されません。
パーソナリティ障害は、正常な状態とは言えませんが、精神疾患(統合失調症・気分障害・不安障害など)とも区別されます。
また、正常な状態と精神疾患との重なりもあり、パーソナリティ障害と精神疾患が併発することも多いとされます。
DSM-5では、A群、B群、C群の3つの群とそれらの下に10種のパーソナリティ障害が定義されています。
種別 | 特徴 |
---|---|
【 A群パーソナリティ障害 】 : 奇異な・普通でない行動を示す群 | |
猜疑性/妄想性 | 他人の動機を悪意あるものと解釈する広い不信と疑い深さ。 |
シゾイド/ スキゾイド |
社会的関係を望まない。無関心や冷淡、平板な感情状態。 |
統合失調型 | 親密な関係が形成できない。認知や行動が風変り。 |
【 B群パーソナリティ障害 】: 派手な・突飛な行動を示す群 | |
境界性 | 対人関係、自己像、情動などの不安定性。著しい衝動性。 |
演技性 | 過度な情動性と人の注意を引こうとする行動。性的に誘惑的・挑発的な他者との交流。 |
自己愛性 | 誇大性、空想へのとらわれ、過度な賛美の要求、共感の欠如、他者の不当な利用や傲慢な態度。 |
反社会性 | 他人の権利を無視し侵害する行動(15歳以上で見られ、18歳以上で診断される)。違法行為、虚偽性、衝動性、無責任さや良心の欠如、将来の計画を立てられない、素行症。 |
【 C群パーソナリティ障害 】: 不安・恐怖に関連する行動を示す群 | |
回避性 | 社会的抑制、不全感。否定的認知に対する過敏性。それによる対人接触のある職業的活動の回避、遠慮、異常な引っ込み思案。 |
依存性 | 面倒見てもらいたいという過剰な欲求。従属的、しがみつき行動、分離不安。助言・保証をもとめ他者に責任をとってもらう。依存するため不快なこともやり過ぎる。 |
強迫性 | 秩序や完全主義、対人関係の統制へのとらわれ。それによる柔軟性、開放性、効率性の犠牲。規則や順序、予定への囚われ。仕事への過剰なのめりこみ、堅苦しさと頑固さ。 |
「境界性パーソナリティ障害」は、境界例またはボーダーとも呼ばれます。DSM-5では、下記のような特徴が記載されています。
治療においては、治療構造を崩そうとしたり(時間を守らないなど)、治療スタッフ間に認識の齟齬を生じさせて(人によって言う事や態度を変える)、治療を混乱させることがあるとされます。
境界性パーソナリティ障害に関する理論には、自我心理学のカーンバーグ(Kernberg,O.)の「境界性人格構造(BPO)」やマスターソン(Masterson)の「見捨てられ抑うつ」があります。
パーソナリティ障害に対する定型的なアプローチは確立されていないとされます。また、目標としては、パーソナリティの根本的変化ではなく、生活を営む上での困難を少しでも軽減し、適応的な形にすることが現実的とされています。
援助の方法としては、心理療法として、「認知行動療法(弁証法的行動療法)」や「メンタライゼーションに基づく治療」や「転移に焦点をあてた心理療法」などが行われます。
その際には、主治医とセラピストの役割を分けて治療にあたる「A-Tスピリット」を用いることも多いとされています(主治医は投薬や身体的な管理を行う。セラピストは心理的援助を行う)。
自傷他害や破壊的行動に及ぶクライエントに対しては、医療機関などと連携し、周到に準備された介入を行う必要があります。
メンタライゼーションとは人の行為と関連付けて、自分や他者の心の状態を読み取る能力とされます。幼少期の愛着関係を通して獲得されると考えられています。
「メンタライゼーションに基づく治療」とは、クライエントのメンタライゼーションの促進に焦点を当てた心理療法です。境界性パーソナリティ障害に対する治療が有名です。