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心理学用語集: 自我心理学派・実存心理学

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用語: 自我心理学実存心理学自我機能



自我心理学

 自我心理学は、最もFreud,Sの考えに忠実な正統派ともいわれる系譜です。ライフサイクル論のErikson,E.Hもこの流れに入ります。
無意識よりも自我に研究を移し、自我の自律性や現実適応や機能、また防衛やその社会的行動」についてを対象とし、幅広い心理学として展開されています。
 自我心理学者と、その理論を下表にまとめます。

Abraham,K
アブラハム
先駆的精神分析学者で、ブロイラーの助手から始まり、フロイトに協力するようになりました。口唇期の研究が多く、自我心理学に繋がっていきます。
Reich,W
ライヒ
自我心理学の端緒となっている人物で、性的本能と外界に対して、自我が自分を防衛するために「性格の鎧」を着ると考えましたが、後年は、マルクス主義と精神分析の統合を試み異端とされます。面接現場の今ここにおいて、クライエントが示す行動や態度の全般を分析の対象とすることを提唱し、それを「性格分析」と呼びました。
Rank,O
ランク
神経症は出生時の外傷(出産外傷)が原因であり、出生時の母親からの分離が分離不安の根本原因と考え、分析初期のクライエントとの分離を多くする時間制限法を提唱しました。また、患者の自己主張を推奨する意思治療法も提唱しました。
Freud,A
アンナ・フロイト
Freud,Sの末娘で、防衛機制論を発展させました。遊戯療法はセラピストと幼児の関係を作る道具であり、幼児の精神分析に否定的で、Kleinらと対立しました。
Hartmann,H
ハルトマン
自我は単にエスと超自我の調整をするのではなく、積極的に外界と接触し適応的な機能を果たすと考えました(自律的な自我)。自我心理学を確立・発展させた理論家一人です。
Federn,P
フェダーン
自我と非自我の境界を「自我境界」と名づけました。
Erikson,E.H
エリクソン
人間の発達に関してのライフサイクル理論を提唱しました。
Jacobson,E
ジェイコブソン
自我心理学に対象関係論の視点を加え、超自我の発達を論じました。超自我はエディプス期に発生した後、自我の発達とともに一貫性のある組織化された観念群へと成熟していくと考えます。彼の考案した漸進的弛緩法はリラクゼーション法として有名です。
Kernberg,O.F
カーンバーグ
自我心理学的対象関係論を樹立。精神病人格構造(PPO)、境界人格構造(BPO)、神経症人格構造(NPO)を提唱し、症状と人格で病態水準を区別しました。
Kohut,H
コフート
自己愛を主要概念とする「自己心理学」の流れを作り、自己愛の肯定的な側面を評価し、健康な自己愛の視点を取り入れました。また、乳児が生きていくため(自己の発達のため)には、養育者からの共感的な関わりである「共感的環境」が重要であるとしました。
Masterson,J.F.
マスターソン
境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害の分析に注力しました。Mahler,M.S.の分離個体理論をもとに、境界性パーソナリティ障害の中心病理として「見捨てられ抑うつ」を抽出しました。


自我機能:

 自我機能について概要をまとめます。自我機能の分類には、Belak(1973)による12機能、Weiner(1996)による6機能、馬場(2008)による6機能などがあります。
 馬場による6機能とは、「現実機能」、「防衛機能」、「適応機能」、「対象関係」、「自律機能」、「統合機能」です。
 ここでは、現実機能、防衛機能、統合機能を取り上げて説明します。

  1. 現実機能(現実検討、自我境界維持機能): 
    自分の置かれた状況判断して、あるべき方向性を見つけていく機能(現実検討機能)と、自分が感じ考えていることと実際の現実、事実との違いが区別出来る能力(自我境界維持機能)を言います。
  2. 防衛機能:
     精神内面で自分を安定させるために、エス(欲動)と超自我の両方に調整的に働いて、自分の中が安定して、葛藤的でなく、不安でない、落ち着いていられるように操作する機能です。防衛機制といえます。
  3. 統合機能:
     自己や他者の一貫性や連続性が保つ機能です。


実存心理学

 実存心理学(exsistensial analysis)は、「実存主義哲学や現象学を背景理論とし,精神現象それ自体の本質を明らかにし、人間を全人的に把握することを志向する心理学」であり、大きく2つの流れがあります。

 Binswanger,L(ビンスワンガー)は、ハイデッカーの実存主義とフッサールの現象学に影響を受けてフロイトの生物学的傾向に反発しました。そして、セラピストはクライエントの観点から世界を理解することで、クライエントが歪曲した世界を見ていることを自覚するのを助けると考えました。
 彼の心理学を「現存在分析」といい、その後継者であるBoss,M(ボス)は、ハイデッカーの理論により忠実だといわれています。

 Frankl,V.E(フランクル)は、フロイトとアドラーまた、シェラーの実存哲学の影響を受け、アウシュビッツでの体験を通じて、個人が人生に独自の意味を見出し、それを生きることを援助しました。
 これを、「実存分析」と呼びます。自分の存在意義を見出すことや責任を分析対象とし、存在意義を見出せない事の失敗から神経症が生じると考えました。彼の治療法は、「ロゴセラピー意味療法)」と呼ばれます。



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