ここでは、新フロイト派とその他の精神分析に関連した人物をまとめます。
用語:
新フロイト派とは、1930-1940年代の米国の社会的文化的要因を重視した精神分析家達を呼びます。
そのうち、「サリヴァン(Sullivan,H.S)」、「ホーナイ(Horney,K)」、「フロム(Fromm,E)」をまとめます。
サリヴァンは、「関与しながらの観察」が治療者に求められる姿勢だと考えました。
関与しながらの観察とは、「客観的に対象を対象として扱わず、自分を含めた上(参与した上)で、調査を行う手法」であり、これを自身の治療法に取り入れました。
他者の行動を理解するには、面接に参加している自己を道具として利用することが必要であるという事だと言えます。
サリヴァンは、精神疾患の原因を幼少期の対人関係に求め、統合失調症の初期における妄想的な言動は「パラタクシックな歪み」の産物であるとしました。そして、患者を対人交流から遮断することが治療に役立つと論じました。パラタクシックな歪みとは過去の(幼児期からの)対人経験によって条件づけられている対人関係上の体験のゆがみとされます。
ホーナイは、神経症の要因として「基本的不安(基底不安)」を提唱しました。基底不安は、自分が敵意に満ちた外界に囲まれて孤独で不安とされます。
神経症は人間関係における孤独感、無力感から生じ、その源泉は幼児期の母親との関係における基底不安にあるとしました。
フロムは、人の内的欲求と社会的要請との妥協から発達させる社会的性格や「権威主義的性格」を提唱しました。
近代人は「伝統的権威や束縛から自由になったが、自由であるが故の孤独感や不安感(自由への恐れ)に囚われていて、そこから逃避するために権威主義となる危険性を秘めている」としました。
その妻だった「Fromm-Reichmann,F(フロム-ライヒマン)は、患者に聴き入る態度を重視し、分裂病者とのコミュニケーションの道を開きました。
ラカン(Lacan,J.M)は、フロイトの精神分析学を構造主義的に発展させたパリ・フロイト派を牽引し、またフロイトの大義派を立ち上げました。
人は、他者を鏡にすることにより、他者の中に自己像を見出す(この自己像が「自我」となる)という発達理論である「鏡像段階論」を提唱しました。
スターン(Stern,D.N)は、乳児が生後9ヶ月頃から模倣を超えて、乳児と母親の主観間で情動を共有するための行動である「情動調律(affect attunement)」を提唱しました。
情動調律は、「養育者(母親)が乳児の行動に表れる情動を察し、同じ知覚様式内で情動状態を表現する行動をとること」とされます。養育者が乳幼児の行動や気持ちの動きを映し返す行動(例:母親が乳児の喃語を繰り返す)である「ミラーリング」に近い概念とされます。
また、母親と乳幼児は、時間経過によって変化する『生気情動(vitality affect:言葉に置き換えにくく、身体性を帯びている情緒)』を交換していると考えました。生気情動はの母子関係のみならず日々の人間関係にも大きな影響を及ぼすとされます。
スターンの乳児発達理論は、発達早期の母子関係と『自己感(sense of self)』を中心にしています。乳児の成長に従って四つの異なった自己感が出現してくると考えました(新生自己感, 中核自己感, 主観的自己感, 言語自己感)。
古澤平作(こざわへいさく)は、日本に自由連想法といった精神分析の技法を導入し、阿闍世コンプレックス理論(あじゃせコンプレックス)を唱えました。
エディプス・コンプレックスは、母を愛するが故に父を殺害せんとする欲望であるのに対し、阿闍世コンプレックスは、母を愛する故に裏切られて母を殺害せんとする欲望とされます。
土居健郎(どいたけお)は、著書「甘えの構造」において、日本人の精神構造にある「甘え」を解き明かしました。