ここでは精神分析の学派のなかで、「ユング派・分析心理学」と「アドラー派・個人心理学」について説明します。
用語:
Jung,C.G(ユング)は、フロイトが無意識を抑圧された性的なものとして否定的に捕らえていたのに対し、無意識をその個人がより高次の統合性・全体性へと向かうための重要な要因ととらえました。ユングの心理学は分析心理学と呼ばれます。
ユングは、こころ(プシケ)は多層的であるとみなし、意識と無意識の層は対立的で相補的に機能するが、プシケ全体を統合する機能として「自己」があるとしました。そして、例え自我による意識的な統合性・安定性を崩したとしても、自己がその個人によってより高次の統合性・全体性へと向かわせるとし、それを「個性化、または自己実現」の過程と呼びました。
ユングのプシケ(こころ)の各層 | 説明 |
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ペルソナ層 | 社会的適応のために意識化されている層。これを統合する中心的機能を「自我」と呼んだ。 |
個人的無意識 | 個人が体験して、意識の枠組みからおさまらないものがある層。自我に欠けている部分(影)がある。さらにこの下に、マニマ・アニムスと呼ばれる男性女性的な心性の層がある。 |
集合的無意識 | 人類全体に共通する普遍的な無意識の層。個人的な経験を超えた集団・人類などの集合体が根底に持つ領域で、世界中に似通った神話が存在するのは、この集合的無意識によるものだと言われている。 |
彼は性格論で「向性」という重要な概念を示しています。向性とは、心的エネルギーの方向のことです。
性格論は「ユングタイプ論」と呼ばれ、向性と4つの心的機能の向きにより性格を8類型に類型化を行うものです。
(詳細 : ユングの向性論とタイプ論)
ユングは、「言語連想検査(実験)」とコンプレックス指標でも有名です。
クライエントは、連想する言葉を報告しますが、もしある単語に対して明らかな言い淀みが見られる場合は、そこに何らかの心理的な抵抗があるとされます。
そして、言い淀んだり言い間違えたり、同じことを何度も繰り返したりするのは、私たちの中の「コンプレックス」が刺激されるからなのだと考えました。
ユングのいうコンプレックスとは、「感情に色付けされた心的複合体」であり、自分自身にも言葉ではうまく説明できない複雑な心の反応のことを指します。
Adler,A(アドラー)の心理学は「個人心理学」と呼ばれており、近年は日本でも広く知られています。
アドラーは精神分析運動の初期の中核メンバーでしたが、フロイトが性欲を中心に考えることに反発して離反しました。
アドラーは「権力(力)への意志」を持った存在であり、それはより充足的、理想的な状態へと人が向かう根元的なものであると考えました。
そのために、人は欠乏している状態では劣等感を、充足している状態では優越感を感じます。
劣等感に対して代償的な充足を図ることを「補償」といいます。防衛機制の1つとしても分類されます。
「劣等コンプレックス」とは、劣等感が失敗や落胆によって強まったときに生じる感情であるとされます。
劣等感コンプレックスは、その状態から「逃避する行動」や、過度の競争心や攻撃性を伴う「過剰な補償」をもたらすとされています。
アドラーは、劣等コンプレックスを基礎としたネガティブなライフスタイル(個々の生き方の姿勢)が神経症を生じさせると考え、健康なライフスタイルに導くことを治療の目的と考えました。