社会の存在は、個人に様々な影響を与えます。ここでは、他者や集団の存在によって見られる、個人の社会的な行動について説明します。
用語:
「同調」とは、人が意識せずとも自らの意思に関わらず、集団や他者の規範・期待に沿って行動することを指します。同調には、情報的影響(正しい判断を行いたいという欲求に基づく)と規範的影響(他者からの期待に応えたいという欲求に基づく)があるとされます。
「服従」とは、権威者の指示や命令に従う同調のことを指します。
社会的圧力とは、集団の規範に対して同調を余儀なくされる圧力です(斉一性の圧力)。アッシュの線分(Asch,S.E)の実験では、誤答するさくらが居ると、明らかな誤答にまで同調してしまう傾向があることが示されています。
アイヒマン実験とは、Milgram,S(ミルグラム)が、権威者の指示に服従する人間の心理状況の実験をいいます。電気ショックを与える実験(相手は与えられたフリをする)であり、一切責任を負わなくて良いと状態(責任代理状態)においては、人は非人道的な行為も行ってしまうという現象が見られました。
ピグマリオン効果(教師期待効果)とは、教師が期待を持つほど生徒の成績が上がる効果のことです。R. Rosenthal(ローゼンタール)が提唱しました。
他者に対してある期待をすると、期待する人の態度がそれに沿って変容し、期待された人も、その方向に行動をとるようになる効果をいいます。
「観察者効果」とは、見られていると意識したときに行動が変化する現象を指しますが、広い意味ではピグマリオン効果は観察者効果の一種とも言えそうです(関連:実験者効果)。
集団としての個人は、集団外ではとらないような特殊な行動を取る事があります。下記の代表的な行動を挙げます。
「凝集性」とは集団のメンバが、自発的にその集団に留まる力のことです。凝集性が高いと、相互理解や受容、意見の類似という利点がありますが、柔軟性が減少するという短所もあります。
「集団極性化」とは、集団の判断がもともとの個人の意見より、極端な方向に変化する現象をいいます。より危険な方向に偏ることを「リスキーシフト」、より安全な方へ偏ることを「コーシャスシフト」といいます。
集団思考とは集団的浅慮とも呼ばれるもので、「集団においては、不合理あるいは危険な意思決定が起こる」という現象です。
「集団思考」(集団的浅慮)は、集団の凝集性が強く、外部の情報が得られない状況において、生起しやすいとされます。また、強固な方針を持つリーダーが強い指導性を発揮することが多いです。
多元的無知(集団的無知)とは、「集団の大半が、自らは集団規範を受け入れていないにもかかわらず,他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状態」を意味します。
誰も信じていないが、誰もが『誰もが信じている』と信じている状態といえ、「裸の王様」の物語に代表される状態です。
(本当は王様の服は誰にも見えていないにもかかわらず、「みんなには王様の服が見えている」と思う。)
「社会的促進」とは、他者の単なる存在により、課題遂行に影響が出る現象をいいます。容易な課題は促進されます(正反応)が、難しい課題の場合は逆に抑制されます(誤反応)。
これに対し、「社会的手抜き」とは、他者と一緒に課題を遂行すると、発揮する努力が減る現象をいいます。多数で神輿を担ぐと、担げる重さは個人の担げる重さの和よりも低くなってしまいます。
「傍観者効果」とは、自分以外の他者の存在の認知によって、援助行動が抑制される現象を指します。他者の存在によって責任の分散が起きてしまいます。B.Latane(ラタネ)とJ.M.Darley(ダーリー)の実験によって確認され、後に緊急時の援助行動の意思決定モデルを提案しました。
( 補足: ▼ 緊急時の援助行動の意思決定モデル )
「社会的インパクト理論」は、他者の存在が、個人の遂行行動に与える影響を定式化した理論です。B.Latane(ラタネ)が提唱し、社会的手抜きや傍観者効果の説明を定式によって試みたものです。
他者の存在の影響度は、「他者の地位(強度)」と「他者との距離(直接性)」と「他者の人数」によって定められると考えます。
「没個性化」とは、多数の人々の中に埋没している場合に、自己に注意が向かず、アイデンティティを失っている状態を指します。集団の中にいて、匿名性、責任分散、興奮、感情刺激過多の条件が整うと、個人が自分自身を評価することをやめて、他者からの評価への不安が薄れ、罪、恥、恐怖心、責任感が機能しなくなり、情緒的、衝動的、非合理的行動が出現することがあります。
「社会的勢力」とは人や組織が、他の人々の行動に影響を与える潜在能力を意味します。French&Ravenが提唱し、下記の6つがあるとしました。
集団(多数者)が個人に与える影響とは逆に、個人や少数者が集団に与える場合があります。
「少数者影響過程(少数者の影響)」とは、ある集団内で少数しか持たない意見が、多数者の意見に影響を与えることを意味します。
Moscovici(モスコヴィッシ)は実験結果から、少数派が多数派に影響を与えるには、行動様式の一貫性が必要と考えました。
「社会的交換理論」とは人間の社会的相互行為(コミュニケーション)を、何らかの社会的価値が交換されている過程と考える理論です。
例えば、「乳児は泣き、母親は乳を飲ませる。乳児は満足して声をあげて笑い、その顔を見て母親は幸福感に浸る」という行為は、泣く行為と母乳を飲ませるの交換と、微笑みと幸福感の交換がされていると考えます。
「ソシオメトリー」とは、Moreno,J.L(モレノ)が考案した、集団の構成員間の心理関係とその集団構造の測定理論および、測定のことを指します。
成員に対して、他成員への感情を調査し、集団構造を親和・反感の2軸で分析します。集団内の人気者は「スター」と呼ばれます。
その他、集団に関連した用語である「パニックとデマ・流言」について説明します。
パニックとは、絶対的脅威と受け取られる状況下の群衆の逃走行動を指します。「情報が不明確で事態の予測が困難」「脱出経路が限られている」「不安を感じ連帯性が欠如している」ことがパニックの発生条件とされます。
デマや流言は、情報伝達において、「簡略化(平均化)」、「関心の強い部分の強調(強調化)」、「受け手が知識や態度に合わせた変更(同化)をする事」が行われる事で生じるとされます。