ここでは「自己概念や自己評価などに関連した用語」及び、「説得に関する効果や方法」をまとめます。
自己概念とは、自己を対象とした自分自身についての信念の集合であるとされます(関連:ロジャース/自尊感情)。
用語:
他者と自己を関連づけることによって、自己評価を高めたり、維持しようとする傾向があります。
「栄光浴(BIRGing)」とは、評価の高い人や集団との関係を強調することで自己評価を高めようとする傾向をいいます。
「CORFing」とは、その逆であり、価値が低い他者との結びつきを避ける傾向をいいます。
「社会的アイデンティティ理論」とは、社会的集団のメンバである事に基づく人の自己概念の側面から、その人の行動を説明する理論です。
例えば、人は可能な限り自身の属する集団に有利になるように、内集団のメンバを高く評価したり、外集団との比較をおこなおうという「内集団バイアス(内集団ひいき)」があります。これは、社会的アイデンティティ理論に基づくものと考えられます。
内集団バイアスが強く出ると、外集団に対する不当な低評価だけでなく差別的行動が起こることもあるため、社会的排斥の要因を説明する理論でもあります。
関連する用語である「準拠集団」とは、個人がその集団に属する一部として自己を関連付けることで、自己評価や判断に影響をもたらす集団を指します。
自己評価を維持するための、自己の認知や行動に関するモデルとして「セルフ・ハンディキャップ」や「自己評価維持モデル(SEM)」が挙げられます。
セルフ・ハンディキャッピングとは、自己の能力に比べて目標が達成困難であったり、成功の確信が持てない場合において、失敗した時でも他のせいであると言い訳ができるように、自らハンディキャップを設ける行動をさします。
失敗しても、自尊感情を維持できるように「結果が出る前に自分に不利な条件があることを主張したり、それを自ら作り出すことで、失敗しても仕方がないという事態を作り上げること」といった事を行います。
成功した時には、ハンディキャップがあるのに成功したと自己の評価を高められることになります。
自己評価維持モデル(SEM)とは、人は肯定的な評価を維持することに動機付けられていると考えます。
自己評価維持モデルでは、自己評価を維持するために「1.心理的に近い他者」「2.その他者が自分より能力が優れているという認知」「3.活動への自身の関与度」の3要素を変容しようとすると考えます。
例えば、チームで行う仕事が失敗した時に、「私はあまり関与してなかったので」と発言する人には、自己評価を維持するため「3.活動への自身の関与度」を変容しようとしていると理解することができます。
社会的比較理論は、Festinger,L (フェスティンガー)によって提唱されました(関連:認知的不協和理論)。
自身を他者と比較することによって、自身の意見や能力を評価し、自己を定義づけていくというものです。
例えば、人は自分より不幸な多数派と比較するという「下方比較」や、その逆の上方比較といった概念があります。
「自己評価維持モデル(SEM)」も、社会比較理論に含まれるとされます。
ジョハリの窓とは、自分と他者から見た、自己に関する理解を4つの領域に分けたものです。自己理解や自己開示を促進するためなどに利用されます。
自己認識に関する用語である「鏡映的自己」とは、他者の自分に対する言動や態度を手掛かりとして推論し作り上げた、他者に映る自分の姿の事です。
自己/他者 | 他者が知っている | 他者が知らない |
---|---|---|
自己が知っている | 開放の窓 | 秘密の窓 |
自己が知らない | 盲点の窓 | 未知の窓 |
透明性の錯覚(透明性錯誤)とは、「自分の内的状態が、実際以上に他者に対して明らかになっている(伝わっている)と過大評価する傾向」のことです。
うそや隠しごとなど他者に気づかれたくないという場面だけでなく、愛や懺悔の気持ちなど正確に相手に自分の内面を伝えたい、という場面でも生じているとされます。
”わかっているはずだ”という誤解が生まれる要因の一つと考えらます。
スポットライト効果とは「自分の装いや振る舞いが、実際よりも周囲の注目を集めていると推測すること」です。
例えば、会議で発言した参加者は、周囲が認識するよりも自分は印象に残る発言をしたと考えたり、会議の途中で退席した場合は、実際より自分は目立ってしまっていると推測することが報告されています。
説得とは、コミュニケーションによって受け手の理性や感情に働きかけ、相手の自発性を尊重しながら送り手の意図する方向に受け手の意見、態度、行動を変化させることを指します。
説得のうち、内容に基づく説得を「中心的ルート」といい、多くの議論や専門家の判断などといった議論の本質と関わりのない手掛かりに基づくものを「周辺ルート」といいます。
説得に関する効果や方法に関しては、下記のようなものが代表的です。
「スリーパー効果」とは、時間が経つと送り手の印象が薄れて説得効果が増大する現象を呼びます。説得の効果は、送り手の信憑性にも依存しますが、信憑性の低い送り手のメッセージでもスリーパー効果が生じます。これは信頼性への忘却の方が、情報内容の忘却より早いためとされます。
「ブーメラン効果」とは、説得への抵抗の表れであり、送り手の意図から離れる方へ受け手が意見や態度を変容させることをさします。
段階的要請法とは、数回にわたり段階的に他者に働きかけることで、相手の応諾を得やすくする方法です。foot in the door(フットインザドア)の英語から由来します。
譲歩的要請法とは、最初に拒否されるような大きな要請を出し、拒否させた後に本来の目的である小さな要請を出す方法です。受け手が、送り側から否定的な評価を受けたくないという自己呈示に基づきます。shut the door in the face(シャットザドア・インザフェイス)から由来します。
自分の主張だけでなく、それに反対する議論についても相手に伝えることです。対義語としては、一面的コミュニケーションがあります。