ここでは、日本独自の心理療法である「内観療法」と「動作法(臨床動作法)」をまとめます。
用語:
内観療法は、浄土真宗の「身調べ」という精神修養法をもとに、「吉本伊信(ヨシモト イシン)」が考案した心理療法です。
自分の身近な母親、父親、配偶者、子どもなどに対する過去のかかわりについて、内観3問と呼ばれる3つの点について繰り返し思い出します。それによって、自分や周囲の人たちへの理解が深まり、自己中心性からの脱却し肯定的な自他への認知を促します。
そして、他者への信頼を回復し、自己の責任を自覚し、意欲的な行動ができるようになるとされます。
アルコール・薬物依存症や神経症全般、不登校、非行少年など広範囲に適用されています。
自分の身近な母親、父親、配偶者、子どもなどに対する過去のかかわりについて、下記の3つの点を思い出します。
・「していただいたこと」
・「して返したこと」
・「迷惑をかけたこと」
「集中内観」は、1週間朝6時から夜9時まで実施する方法で、外部からの刺激を遮断した、狭く静かな屏風に囲まれたうす暗い空間で行います。
身近で大切な人々に対する内観3問について、具体的な事実を「過去から順に3年〜5年刻みで現在まで」回想します。
それを1、2時間ごとに訪れる指導者にまとめて報告します。指導者には徹底的に傾聴し(受容の精神)、内観者に学ぶ姿勢をとります。
「日常内観」は、集中内観を経験した後、日常生活の中で継続的に短時間づつ内観する方法であり、効果の持続をはかるものです。
動作法とは、「成瀬悟策(ナルセ ゴサク)」が考案した身体的アプローチの心理療法です。心の活動を身体運動という物理的、生理的現象として客観的に扱っていきます。
動作法は、意図した動作を実現する努力の体験を通して、精神的な状態への洞察や自己統制感を得ることで、活動全般に変化を促します。
動作法の始まりは、「脳性まひの子」の肢体不自由を改善するための動作訓練(意図通りの身体運動するための努力の仕方が身につくような援助・指導)でした。同じ方法が自閉や多動の子を落ち着かせ、コミュニケーションを行いやすくなったことから、その後、他の障害を持つ子ども(ダウン症など)や成人の問題にも展開されていきました。
動作とは、意図どうりに身体運動を実現しようと努力する主体者の能動的活動の過程とされます。つまり、意図した運動パターンと実現する身体運動パターンを一致させていく過程では、「意図 → 努力 → 身体運動」として図式化される自己制御活動が働いているとされます。
動作法では、下記のようにクライエントは援助から提供された課題の動作に取り組みます。動作を通した援助者とクライエントの相互作用の中で、「体験の共有化(コミュニケーション過程)」と「適切な動作制御の習得(動作制御過程)」が同時的に進行していきます。動作制御過程が変化すると、結果的にクライエントの体験の様式が変化していくとされます。