ここでは、災害発生時や、衝撃的な事件が起こった時などの援助である「危機介入、及び緊急支援」についてまとめます。
用語:サイコロジカル・ファーストエイド / デブリーフィング・デフュージング / 支援の留意点・二次受傷 / 被災者のケア(DMAT・DPAT・DHEAT・災害医療コーディネーター,災害拠点病院・EMIS) / 学校での緊急支援
「危機介入」とは、「危機理論(Lindemann,EとCaplan,G)」に基づき、問題発生状況を理解し、具体的な介入を行う方法です。
戦争神経症の治療、自我心理学の心理療法、自殺予防運動の電話相談活動の中で徐々に形成されてきたとされます。
「サイコロジカルファーストエイド(PFA:心理的応急措置)」もほぼ同様の意味合いをもつと考えらえます。
危機とは、習慣的に身につけている防衛機制や対処方法が全てうまくいかない困難な状態です。心理的・身体的に不均衡な状態となり、不安、混乱、睡眠障害、食欲不振、抑うつ的状態などの症状などがみられます。
危機の不安定な期間は、1〜6週間程度とされ、危機介入は「不均衡な状態をできるだけ早く元の状態に回復すること」を目的して行われます。
危機介入の方法をWHOのサイコロジカルファーストエイドのガイドラインに基づきまとめます。
災害支援や他の緊急支援における具体的な留意点をまとめます。
サイコロジカルファーストエイドのガイドラインにもあるように、ケアの押し付けをせずに、自然回復のための環境づくりに配慮します。
支援者自身が、凄惨な場面を目撃したり、高いストレス環境が続くことによる「二次受傷」(二次的外傷性ストレス)を受けて、心身の変調をきたすことがあります。症状としては下記のような特徴が挙げるとされます(引用 )。
支援者のストレス反応に対しては、以下のような予防・対策が考えられます。
災害救援者に対する心理的デブリーフィングは、有効な場合と悪化する場合があり、一貫した結果ではないことが報告されています( 松井ら, 2007 )。
被災者のこころのケアのためには、「地域コミュニティの維持回復・再構築」が非常に重要であるとされます。被災者のこころのケアのガイドラインの内容をまとめます(内閣府 )。
被災者のこころのケアは「一般被災者・見守り・疾患」という3段階のレベルに応じて適切なケアを行います。
被災者支援の活動原則や、被災者のケアにおける留意点については「緊急支援の留意点」と同様となります。
「一般の被災者レベル」のケア |
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| 「見守りレベル」のケア(こころのケア) |
| 「疾患レベル」のケア |
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都道府県は災害前に「こころのケアチーム」を整備し研修を行っておき、災害発生時には担当部局が他県を含めてこころのケアチームを派遣します。
こころのケアチームにおいては市町村災害対策本部が中心となり、毎日担当者間で情報共有会議を開催します。
都道府県、精神保健福祉センター、市町村等との情報共有のため「情報記録用紙標準書式」に記録をします。個人情報保護の観点から、被災者から情報共有の同意を取る事も求められます(例外事項に該当する事も考えられますが)。
DMATとDPATは災害時に派遣される医療チームです。
DHEATは自治体の指揮調整機能を支援するチームであり、災害医療コーディネーターは保健医療活動の総合調整を支援する者です。
「災害拠点病院」とは、災害発生時に医療を行う医療機関を「支援する病院」のことです。DMATがある、救命救急が可能、患者の多数発生時に対応可能なスペースを有すなどの要件を満たしている必要があります。また、災害拠点病院を指定するのは、都道府県となります。
「EMIS(広域災害救急医療情報システム)」とは、インターネット上で災害時の医療情報の共有を図るシステムです。災害時に1人でも多くの負傷者へ医療を提供するために開発され、病院の被災状況・稼働状況を把握する機能を有しています。
被災者が示す心理過程には「茫然自失期」「ハネムーン期(蜜月期)」「幻滅期」「再建期」の4段階があるとされます。どの段階にあるかを理解した緊急支援及び、その後の心理的援助が必要となります。
(詳細:▼ 災害後の心理的過程)
学校における緊急支援(事故や自殺等)においても、スクールカウンセラー(学校臨床心理士)は教職員との連携やコンサルテーションが重要です。
生徒・児童の自殺が生じたときは、学校だけでなく教育委員会の職員派遣や複数のスクールカウンセラーなどによる現地でサポートが不可欠です(参考 )。
デブリーフィングには、心理的介入や研究、組織活動おいて使用される用語です。それぞれの意味に注意が必要です。
ブリーフィングとは「簡単に報告する」という意味であり、デブリーフィングは「事後の報告」という意味合いをもっています。
デフュージングとは、災害救援者や支援者が活動終了後に、その日に体験したことを雑談に近い形で話し合い、感情の爆発を予防することです。災害救援者等の間で行われる一次ミーティングの位置づけられます。
ストレスへの効果は、実施内容の質や災害前の職場や隊の雰囲気によって効果が左右されるという報告があります(青木ら,2019)。