ここでは、心理面接のおいて留意すべき点とその用語についてまとめます。
用語:積極的傾聴 / ラポール / 転移・逆転移 / 負の相補性 / 抵抗・疾病利得 / 行動化(アクティングイン・アクティングアウト) / カタルシス / 洞察 / 沈黙 / 面接記録(記載法・保存期間)
心理面接とは「クライエントと心理士が特定の目的をもって面会し、言語的・非言語的なやり取りを通して、その目的を達成するもの」です。
心理士は、クライエント中心療法のロジャースが唱えた「積極的傾聴(Active listening)」を行い、相手の言葉を聴き、積極的に事実や感情をつかみ、クライエントの理解に努めます。心理士の基本的な態度としては、「無条件の肯定的配慮・共感的理解・自己一致」が挙げられます。
心理面接における技法(マイクロカウンセリング技法)としては、次のようなものが挙げられます。
面接の最初の段階では、「かかわり行動」や「基本的傾聴技法」を通して、クライエントとのラポールを形成します。
技法の種別 | 技法の内容 |
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かかわり行動 | 視線の合わせ方、表情や姿勢、声の調子、言語的追跡 |
基本傾聴技法 | クライエントの観察、開かれた質問、閉ざされた質問、はげまし、いいかえ・要約、感情の反映 |
対決や意味の反映 | 対決(矛盾の指摘)、焦点化(新たな視点の促し)、意味の反映(語りのもつ意味の探究) |
積極技法 | 指示(行動の指示)、解釈、心理士の自己開示・フィードバック |
「ラポール」とは、心理士とクライエントの間に、相互を信頼し合い、安心して自由に振る舞ったり感情の交流を行える関係が成立している状態のことをさします。陽性感情(プラスの感情)に基づく信頼関係といえます。
メラビアンの法則に代表されるように、心理面接においては非言語的コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)も大変重要となります。
[*メラビアンの法則:言語・聴覚・視覚の各要素が矛盾したメッセージを発した時に、メッセージの伝達力は視覚55%、聴覚38%、言語7%とされる]
心理面接(治療面接)においては、クライエントに反応や変化が生じます。
代表的なものとして「転移・逆転移」「負の相補性」「抵抗」「行動化(アクティングイン/アクティングアウト)」「カタルシス」「洞察」をまとめます。
転移・逆転移 |
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「転移」は、フロイトによる概念であり、治療関係においてクライエントの幼少期から形成された対人相互作用のパターンである感情や態度がセラピストに向けられることを言います。クライエントが発達初期の未解決の情緒的体験をセラピストを相手に再演する行為ともされます。 一方、クライエントに対して引き起こされるカウンセラー側の感情反応を「逆転移」と呼びます。 ( 詳細:精神分析 ) | 負の相補性 |
「相補性」とは、社会的な関係の中で、自分に無い特徴や資質を他者に対して探す、求めるという原理とされます。また、一方の行動と他方の行動が補い合いながら、互いに“異なった行動”の型を形成することともされます。 「負の相補性」とは、敵意や支配といった否定的な部分をクライエントとセラピストが相互に探してしまうこととされます。相互が“同じように”否定的な行動を形成することと言えます。 負の相補性は、クライエントが持つ対人関係パターンでみられる典型的な反応を、セラピストがした時に生じるとされており、心理療法の失敗(変化が生じない)や中断に影響するとされます。 | 抵抗 |
「抵抗」とは、クライエントが治療の方法や進行に逆らおうとすることをさします。不自然な沈黙や、議論をする、話を避ける、遅刻や欠席をする(行動化)などがあります。 抵抗の要因の1つには「疾病利得」(シッペイリトク)があります。疾病利得とは、症状によってもたらされる満足や利益のことであり、症状が改善することで失われてしまうため、抵抗が生じると考えられます。 | 行動化(アクティングイン/アウト) |
「行動化」とは、防衛機制にも分類されますが、心理的葛藤などを言葉ではなく、行動で表現することをさします(葛藤の外在化)。心理面接においては、クライアントの面接のキャンセルや治療者への抱きつき・暴力などがあります。 治療室で起こる行動化を「アクティングイン(acting in)」、治療室外で起こる行動化を「アクティングアウト(acting out)」と呼びます。 | カタルシス |
「カタルシス」とは、フロイトが採用した言葉であり、「カタルシスは代償行為によって得られる満足」とされます。 心理面接を通して、抑圧された感情や葛藤を自由に表現することによって、カタルシスが得られ、心の安堵感・安定感をもたらす考えられます。芸術療法や遊戯療法では、創作や遊戯そのものがカタルシスの効果があるとされています。 | 洞察 |
「洞察」とは、クライエントが、自分自身や現実に気づき、理解しなおすことを指します(広義にはカウンセラーの気づきも含む)。洞察には、知的洞察と情緒的洞察があります。 ロジャースは、洞察の3つの要素として、「新しい関係やゲシュタルト(全体的関係の形態)の認知」、「自己の受容」、「創造的意志(より満足できるような目標の積極的選択)」を述べています。 | 沈黙 |
「沈黙」は、心理面接においてさまざまな意味を持ち、受け取り方は文化によって多様とされます。
クライエントの沈黙には「自身が内的探索をしている」「抵抗が生じている」「セラピストの反応等を待っている」「精神症状(思考障害)」等が考えられ、状況や関係性等によって意味合いが異なります。 セラピストが「沈黙」することで、クライエントへ共感的・受容的な態度を伝える事もできます。一方で、クライエントからの否定的な言動に対する沈黙は、クライエントの不快さを増大させることにもなり得ます。 |
心理面接をおこなった場合は、面接の記録を残します。記録を残す目的には、「面接を振り返り方針の見直しを行う」、「同僚や他職種と共有しチームアプローチを行う」、「クライエントに対する責任の保持」、「面接者の技能向上や訓練に役立てる」などが挙げられます。
医療機関においては、心理面接や心理検査の記録は少なくとも「5年間保存」しなければならないとされています(医師法では5年間、医療法では2年間と定められている)。
記録は、クライエントの発言だけなく、態度や感情状態、服装などについても記載します。客観的な事実と面接者の主観的な感想を分けておきます。医療関係者には、「SOAP形式」での記録が用いられています。
クライエントの前で記録を取るのは極力避けることが原則です。記録を取ることに集中せず、「今・ここ」に生じているクライエントの体験に焦点を当てます。