心理的支援には、「心理療法」や「精神保健(予防)」などがありますが、クライエントの問題には様々な要因が複合的に関連しており、心理士が専門分野に閉じて支援するだけでは十分ではありません。
クライエントに対して、包括的な援助を行うためには、多職種との連携が不可欠となります。
ここでは、多職種と連携して支援する「コラボレーション」や「コンサルテーション」についてまとめます。
用語: コラボレーション / 生物・心理・社会モデル / チーム医療( テクニカルスキル・ヒューマンスキル ) / リエゾン / コンサルテーション
コラボレーションとは、「異なる専門家が共通の目標に向けて、相互に利益をもたらすような新たな援助を生成していく協力行為、もしくはチームワークの形態」をさします。専門家同士は、対等な立場で対話しながら、「責任とリソースを共有」して共に活動を計画・実行します。
コラボレーションという概念は、「生物・心理・社会モデルといったシステム論の広がり」や、「利用者が主体の援助観の変化」、「援助内容の経済的効率性と質の保証の重視」といった背景から求められるようになったとされています。
利点 |
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課題 |
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「生物・心理・社会モデル」とは、個人の発達や身体的・精神的健康に影響する様々な要因を「生物・心理・社会」の3側面で総合的・包括的に理解し、効果的な支援を行うための枠組みです。
生物・心理・社会モデルには、下記の2つのモデルがあります
このモデルに対応した専門家としては、生物面は「医師や看護師など」、心理面は「公認心理師、臨床心理士など」、社会面は「社会福祉士、児童福祉司など」が挙げられます。
チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務分担しつつも
互いに連携・補完しあい、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と定義されます。(関連: 多職種連携)
「シェアード・ディシジョン・メイキング」の観点から、患者自身もチーム医療の意思決定に関わります。
チーム医療においては、対人援助役割の重複が認められ、職業集団の優劣を廃して、互いに業務の委譲を行います。
また、自身の職種の専門性だけにとらわれず、できることを連携して、「優れた専門職、かつ優れたチームプレーヤー」であることが要求されるため、「テクニカルスキル」に加えて「ヒューマンスキル」も重要となります。
補足#1: ▼ テクニカルスキルとヒューマンスキル
補足#2: ▼ 垂直型から水平型チームへの移行
コラボレーションやチーム医療に類似した概念として「リエゾン」があります。「リエゾン」とは、「連携・連絡」を意味します。
医療機関においては、リエゾン精神医学に基づき、「一般の身体疾患に伴う精神症状や心理的問題に対して、医師と精神科医、医療スタッフが共同してあたる治療やシステムのこと」をさします。
リエゾンはチーム医療に含まれますが、「精神症状に特化」しているといえると思われます。
コンサルテーションとは、「課題に直面している専門的職業人(コンサルティ)から相談を受けた、他領域の専門家(コンサルタント)が助言や方策を与え、その課題に対して間接的な援助を行うこと」をさします。
コンサルテーションは心理士の支援活動の1つとなります。下記にコンサルテーションの特徴をまとめます。
スーパービジョンの場合は、同じ専門領域の専門家間で行われ、上下関係(経験・技能差)がある、個人の技能的な問題も扱うという点などがコンサルテーションとは異なります。